2007/10/18

終わらせるために始める仕事

これは僕の見識ではなくて、学生時代の師匠から教わったことですが、ブランディングプランナーとの契約は、そのブランドにプランナーが関与することを終わらせるために始める契約なのだと。これって一体どういうことでしょう。

企業がブランドを守り育てていくには、そのブランド全体を上手にコントロールしてやる必要があります。ブランディングと聞いて思い浮かび易いのは、例えば、「ブランドアイデンティティ」であったり、「ブランドガイドライン」であったりすると思います。クリエイティブ施策に関するルール作りです。

ですが、それだけではサステイナブル(持続可能)な環境とは言えません。ただルールを決めて「破らないでくださいね」とお願いするだけでなく、本来的には時代や状況に合わせて最良の選択をしていくための環境を整備しなくてはなりません。ですから、例えば「ブランド室の立ち上げ」や「ブランド研修プログラムの開発」なんていうことも、ブランディングプランナーの仕事の一環として大いに有り得るわけです。

以前、Appleのサポートセンターに電話して驚いたことがあります。小粋なJazzが保留音で流れてるのもAppleらしいなと感じましたが、僕が驚いたのは口頭で英語の文字列のスペルを確認する時のこと。「AはAppleのA」、「MはMacintoshのM」とおっしゃる(「SはSteve JobsのS」と言うのでしょうか)。とてもとても些細なことですが、サポートセンターというのは顧客とのダイレクトな接点です。そこで「ユーザがAppleを愛しているのと同じように、サポートセンターの係員もAppleを愛しているのです」という静かな意思表示のように思えて、親近感が湧きました。

これは一例ですが、Appleのブランドに対する考え方が、いかに企業活動のすみずみまで浸透しているかという証明であるようにも思います。肝心なのはこうした施策を社内で持続的に創出できる体制を整えることです。ブランドを体現する人を育てることです。ですからブランディングプランナーの提案は提案であると同時に啓蒙活動でもあるわけです。

そして最終的にそのブランドが持続可能に発展し成長し、ブランドを守り育てられる環境が整えば、プランナーが関与せずとも、ブランドは一人歩きしていきます。「親の子離れ」ならぬ「プランナーのブランド離れ」の時節です。そういう意味で、ブランディングプランナーの仕事は終わらせるために始める仕事なのです。

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