2011/8/1

プラットフォームへの執着とその偏執と破綻と

リクルートという会社は情報を媒介とした革新的に先鋭的なビジネスモデルを作り上げた会社で、企業とユーザをマッチングするプラットフォームをライフステージごとに用意して実に見事に機能させて時代を作って来た、先進的な企業だと思います。よくよく考えると、情報の重要性というのは、インターネットやソーシャルメディアが登場する現在より、それ以前の方がむしろ相対的に高かったのかも知れなくて、それは個人が情報にリーチするために利用する手段、すなわち「メディア」が限られていたがゆえに、一つ一つの情報の貴重性が高かったと言えましょう。これは他のテレビ、ラジオ、雑誌などのメディアにも言えることですが、とりわけリクルートのメディアはそこに商行為を紐付けて、情報とユーザのマッチングにコンバージョンを産み、築いたメディアを現代風に言うなら「プラットフォーム」として機能せしめていたがゆえに、ビジネスとして先駆的だったと言えます。

しかし、メディアを取り巻く状況は決して平坦ではありません。これまで情報を渇望し、飢餓感に満ち満ちていたユーザが、インターネットの登場をターニングポイントとして、いつしか情報の取得に苦労しなくなり、情報過多の時代と言われ、社会における情報の総量はとうに飽和点を突破してしまった。とは言え、リクナビやホットペッパーやゼクシィなどリクルートのメディアはインターネット化に成功し、「検索」というネットの行動の基点をトリガーとして、自社のメディアをネットメディア化してきました。一方で、元々参入障壁の低かった情報メディアの世界において、よりニッチなターゲットを狙ってクイックローンチで低コストで事業を局地戦で展開する競合も現れ始めました。そしてリクルートのテリトリーが少しずつ侵食されていくことになります。

そして、登場したのがソーシャルメディア。僕自身、ソーシャルメディアが登場してきた頃には、これがビジネスのプラットフォームへ変容するとはイメージが湧いていませんでした。Twitterはパーソナルコミュニケーションのツールだと思っていたし、Facebookはアメリカのエリート学生のSNSだと思っていた。それが一昨年くらいから日本でもソーシャルメディアとして最初にTwitterが、そしてFacebookが、注目を集め始めます。最初に言っておきますが、ビジネスの舞台としての完成度、プラットフォームとしての完成度は、今でもソーシャルメディアで展開されているもろもろより、リクルートのWEBサービスの方が何十倍も研ぎ澄まされていると思っています。情報の網羅性やマッチングの精度、コンバージョンへの持って行き方のバリエーションや運用可能性など。

ソーシャルメディアの即時性、伝播性、インタラクティビティに関しては言われているとおりです。日本だとMixiがSNSとして対抗馬に挙げられることもあります。ただ、SNSと言ったサービスの種類としてでなく、ビジネスのスキームとして、Facebookと本質的にカニバるのって実はリクルートだったんじゃないかと思うんです。日本の元祖、情報プラットフォーマーですから。そこに来て、HotPepperの件がありました。

Facebookクーポンを巡るリクルートと利用店舗の溝–「可能性を自ら潰している」

ですから、ここまで書いてきた辺りが問題の本質なんじゃないかと思うんですよね。

加藤 康祐 / 企画・設計

プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。Webデザインを入り口に、2005年よりフリーランスとしてのキャリアスタート。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート。ラグビーと料理、最近イラスト。

加藤康祐企画設計

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