改めて「食」について考える – 文化と規制
「食」についてはこれまでもkosukekato.comをスタートさせて以来、「食の自由」、「天然と養殖、大人にとっての「食育」とは」、「日々、食べている」、「トレーサビリティ – 流通から考える農業」などで取り上げてきました。
また、最近では、えと菜園の小島希世子さんにET Luv.Lab.でインタビューしたり、桃太郎のイラストを描いた桃野よしふみさんのWEBを拝見したりして、ああ、そろそろ僕ももう一度頭使ってみないとなと思った次第。
さて、いきなり話変えますが、都の青少年育成条例って問題になったじゃないですか。そのものについては後日書くかも知れませんが、そのことに考えておりまして、個人的には、表現の自由の抑圧だ、とか、業界全体の衰退に繋がる、とか、あんまりよくわからないのですが、「政治が文化を規制する」という対処法、には興味があるなあと。有害なものは排除するというやつですね。まあ、啓蒙と規制が両輪で回っていかないと政策は機能しないみたいな理屈はわかるのですが、有効打にならない規制をするくらいだったら、もっと教育者(先生や親)が教育しやすい仕組み作りのほうが大事だと思うんですけどね。ちょっと綺麗事ですけど。
でこのトピックにおいて何が言いたいかというと、「政治が文化を規制する」という意味で、一番早く、一番強く、一番深く、政治による規制が行われてきたのって、どうやら「食文化だな」ということに気づいてしまったのです。考えてみれば当たり前ですよね、心身の健康は人間に取って最も大事なことですし、安心・安全を第一に掲げる国としては、食文化こそ規制し保護し守っていかなければいけないわけで。
という規制が、「本当にこれで良かったのか?」って問題になって如実に露呈している最たるところも、実は「食文化」じゃないですかね。ここでちょっと面白い海外事例を例示します。
デンマークにおける農業教育制度の特徴は、第1に全国の農業専門学校(すべて私立)での授業と農場での実習が合わさった教育が行われ、過程終了に相応した資格が与えられることである。第2に、農業教育は農業教育法によって国の重要な位置付けが行われていることである。第3に、そのため授業料は無料であるばかりか、給与の支払いが行われるほか、学校運営や寮運営に対して国から補助金が支給される(約90%)。第4に、農業教育課程を終了したグリーン証取得者に、30ha以上の農地を購入する資格が与えられる
北欧は国土も狭いし人口もそんなに増えない。けれど農業大国であるデンマークは、早くから農業を世襲ではなく資格制度に切り替えたんですね。慣習から制度に切り替えた。そのための規制を行った。これは実に創造的な破壊であるし、建設的な改革であると言えると思います。だって、親が農業やってても、子供が農業を続ける保証はないわけです。だから国土や人口がほとんど変わらなかったら、基本的に先細りでしかない、ということに気付いてしまったわけです。就職する、公務員になる、という同じテンションで農業にトライできる。
実際、日本では農地を借りるのも大変ですし、農作物を販売する資格を得るのも大変です。どう考えても新しい人が農業に入って来るムードになってない。むしろ外から入って来るものを排除する規制が行われている。なぜならば、日本の農業が「いかに現状維持をするか」ということを基本に設計されているからです。それで日本の農業は何となく息も絶え絶え続いてきたわけです。
だから、農業も教育も同じだと思うんです。現状が既に大いなる問題を抱えているのに、現状を維持するための規制しかできない。でも本当は現状を創造的に破壊して建設的に改革する政策が必要なんじゃないかと思います。上のデンマークとか非常に良い例だと思います。社会構造を組み替えて、次世代の育成に活路を見いだしている。少なくとも未来を切り拓こうとするポジティブな意思を感じる。
農業も教育も強烈に人間が生きること、即ち文化と紐づいている。文化ってそんなに簡単にはぶっ壊れないし、粘り強さとうっちゃり力を持ってると思いますから、延命治療をすごすご続けるより、文化の持つ生命力を信じて政策立案すればいいんです。
どうも日本は規制は頑張るけど、啓蒙はバラマキ、という印象が強いです。数値目標とかも大事ですけど、まずはそういう旧態然の文化に対する政治的アプローチを見直さないといかんのではないですかね。

加藤 康祐 / 企画・設計
プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。Webデザインを入り口に、2005年よりフリーランスとしてのキャリアスタート。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート。ラグビーと料理、最近イラスト。
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フリーランスとして働き始めるってどういうことだったのか?フリーランスとして働くってどういうことなのか?フリーランスが目指すことってなんなのか?5年間の自分の経験から書きました。(2010年執筆)