2010/9/30

位置情報サービスの隆盛から考えるチェックイン文化

今、もう亡くなってしまった 伊藤計劃氏の『虐殺器官』という本がかなりエキサイティングで、でもオリジナルの長編著作は2本とのことなので大事に読んでるんですが、9.11以降、対テロ戦争の時代を描いていて、IDタグを体に埋め込んだ、超ノンプライバシー社会なんですね。常にどこで誰がどのようにしているか、把握していることで成り立つ安全な世界(でお話的にはその安全は虚構、というわけなのですが)。

そう言えば、 @taromatsumura と初めて会った時に、これからは位置情報サービスという話を熱心にしてくれたのを覚えています。あれから5年ほど経ちますが、最初はナビゲーションアプリで現在位置を確認するのが主だったと思いますが、ソーシャルメディアの隆盛と相まって、「ユーザがチェックインする」という「行為」が、徐々に広まりつつあるように感じられます。

確か、5年くらい前に世の中的に議論されていた話は、携帯電話などで位置情報にマッチしたコンテンツや広告が流れこんでくるというような話だったと思うのですが、今ちょっと違う方向で伸長しているなと思うのは、ユーザの位置情報がある意味コンテンツであり、もしかしたら広告として、機能するような、そんなチェックイン文化ですね。

今日、TLを眺めていたら、米国のfoursquareではテレビにもチェックインできるということを聞いて驚きました。なるほど番組というのはある意味、位置情報的ではあるし、一方で時間情報的ではあるし、それは合わさると空間情報的でもあるなと。というか、気付いたのは、「位置情報サービス」という業態より、大事なのは「チェックイン」というユーザの行為にあるのじゃないかと。テレビにチェックインが成立したのであれば、本にチェックインしてもいいし、映画にチェックインしてもいいし、ゲームにチェックインしてもいいし、音楽にチェックインしてもいいし、イベントにチェックインしてもいいと。しかも部分的でよくて、映画のシーンでもいいし、ゲームのステージでもいいし、音楽のサビでもいいし、講演者の一言でもいいし、そうすると、iBooksで線を引くとか、Pingで音楽をファボる、とかもチェックインですよね。

と考えると今のところ「チェックイン文化」というのはしばしば位置情報を晒すという文脈で語られるわけだけれども、それは同時に時間情報でもあり、社会という空間におけるID情報であると。今ですら、foursquareのID情報だって、TwitterアカウントやFacebookアカウントや個人メディアと紐づいているわけで、それはチェックインということが「自分の社会における空間座標を表現する」ということになるまいかと。

勿論、それって今のところ民間主導のある種のエンターテインメントで、今後以前に語られていたような、広告、クーポン、或いは流行りのフラッシュマーケティング的なことなど、なまじユーザが能動的にチェックインしてくれるがゆえに、サービスプロバイダーからの能動的なアクションも考え易くなってくるのではないかと思いますが、一方で『虐殺器官』の世界観に、少しずつ近づいていくことでもあるわけで。

先日、ET Luv.Lab.で三橋ゆか里さんに取材した時も、インセンティブとユースケースが必要ではあるものの、「日本人はWEBに日記なんか書かないよ」という中でブログが浸透していったように、位置情報も浸透していくのではあるまいかという議論になったのだけれど、数日置いて思うのは、位置情報って簡単に言うけど、これいよいよサイバーパンクの世界への扉を開けてしまったのに等しいのかもなあと思ったりしました。

とは言えもう既に始まっている話ですから、サービス事業者としては、自分のサービスにユーザが「チェックイン」することによって、どういう便益を提供できるのか、どういう恩恵を享受することができるのか、一度整理してみたほうがいいように思います。ソーシャルメディアは今まで見えなかった多くのコミュニケーションを可視化しましたが、チェックインはそれに優るとも劣らないフロンティアで、かつビジネス的にもハンドルしやすい題材のように見受けられます。

そう考えると、「チェックイン文化」というものが世の中に根ざすのか、どうなのか、というのは、ソーシャルということがある種一段落したと感じていた自分にとっては、次のかなり気になるトピックになりそうです。

加藤 康祐 / 企画・設計

プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。Webデザインを入り口に、2005年よりフリーランスとしてのキャリアスタート。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート。ラグビーと料理、最近イラスト。

加藤康祐企画設計

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