2009/4/6

Sonyに見る「○○らしさ」の考察

先日、後輩が面白い記事を書いていました。「「○○らしさ」と「モノづくり」は危険な思考停止ワード」という記事でして、「メーカーを「○○らしさが足りない」と言って批判するのは全く意味がない」」と「企画の段階で「モノづくり」を掲げるのはとても危険」という2つのトピックを取り上げており、商売柄両方のトピックに興味があります。

確かに「Sonyらしさが足りない」という批評はそこかしこで目にします。今のSonyの問題点はそこだと。ただ栄光の時代を鑑みて懐古趣味的に論を発しても、あまりに建設的ではない印象を受けます。さりとて、「Sonyらしさが足りない」という指摘をそのまま見当違いだと切って捨てていいかというと、そうではない。日本人1億3千万人全てが「Sonyらしさが足りない」と思っているわけではないでしょうが、そういう印象が少なからずあるというのは、「○○らしい」というブランディングモデルが立ち行かなくなっているという以前の問題として、Sonyというブランドイメージの「負の要素」として認知されており、何らかの形で払拭をしなくては、現状打破にはならないと思うからです。

日本の多くのメーカーは、特にSonyという会社はプロダクト・ドリブンで、そのブランド・イメージを確固たるものにしてきたように思います。僕の世代にも身近で、よく語られるのは、ウォークマンやVAIO、プレーステーション、AIBOなどですね。そう言ったまさに時代の最先端を行くプロダクトが切り開いたブランドイメージが逆に下支えして、他のSonyブランドの商品群への購入欲を喚起してきた経緯があるように思います。実際、「Sonyで揃えたい」という友人も周囲に結構いましたし、僕が学生だった2000年頃はSonyの製品で揃えることのメリットを大いに訴求していたように思います。世に言う囲い込みというやつです。

しかしながら、多くの家電製品はコモディティ化して来ました。Sonyのプロダクトは新しい市場の開拓や古い市場の再定義で人々に一歩進んだライフスタイルを提案してきたように思いますが、現状、どんぐりの背比べになってしまっている分野も多い。コストダウンが顕著な液晶テレビなどは、技術がある一定の水準を超えた辺りから、現在の世界的な経済状況も併せ見て、SamsungやLG電子などの企業群が国際競争力を発揮しています。

Appleや任天堂と比較されるとSonyも辛いのだと思いますが、それぞれヒットプロダクトで市場を再定義し、新たな需要を喚起している企業も少なからずあるにはあります。基本的には今の時代は「消費社会の行き詰まり」だと思っていて、これは村沢義久氏の『日本経済の勝ち方 太陽エネルギー革命』やThomas Friedman氏の『Hot, Flat and Crowded』(この本の邦訳は『グリーン革命』となっていますが、原著の意味をきちんと汲めてないと思います)でも指摘されていたことだと思います。

ちょうど僕は10年ほど前に就職活動をしていて、その頃からブランディングには興味があったのですが、当時僕が注目していたプロジェクトに「My Sony」というのがありました。内部の人間ではないのでよくわからないのですが、何となくその当時の方向性というのはSonyブランドが育んできたファンを囲い込んで、更なるSonyファンを醸成し、ブランドの価値を高めようということだった気がします。

音楽も映像も金融もゲームもそして家電も、言わばコングロマリット化したSonyというブランドの持っている資産を有効に活用しようと思えば、これは当然の施策であるようにも思えます。

ただこうしたことがSonyという企業の、ことに収益ではなくブランドイメージということに関しては、拡張のスピードを鈍化させたのではないかという印象を個人的には思っています。

AppleはiPodとiPhoneで「世界最大のデジタルコンテンツ販売プラットフォーム」を構築しましたし、任天堂はゲームを「ゲーマーのためだけではないゲーム」として再定義しました。これは勿論稀有な例で、今世紀初頭におけるコンシューマー向けメーカーの二大サクセスストリーと言ってもよく、そうそうにそんな種が落ちているわけではありません。

しかし、これらの企業は「コモディティ化されてない商品をヒットさせて、コモディティを売る」という昔Sonyが行っていたことを、プロダクトメーカーとコンテンツプロバイダーというレイヤーに切り分けて見事にやり遂げている例だとも言えるのではないかと思います。

そういう他社にはできない入口と、多社が参入可能な出口を作って稼ぐモデルってのが、今の時代のサクセスモデルで、実はSonyは必要以上の資産を、その体に蓄積してしまったのかも知れません。

そう考えると、実は「Sonyらしさ」とか「モノ作り」とかいう言葉はやはりSonyにとって肝で、しかしその定義の方向性が、何かこの十数年間、時代と違う方向に向きつつあるということなのかも知れません。

とは言え、Sonyという会社は、根強いファンと広範なネットワークと優秀な人的資産を持つ、日本を代表する企業ブランドであることには変わりないと思います。メーカーにとっては厳しい状況が続くのだと思いますが、大いなる躍進に期待します。

ところで先日、某友人が「Sonyが電気自動車作ったらヒットするんじゃないかと思うんですよね」と言っていました。僕、Sony製品ほぼ持ってませんが、Sonyが電気自動車を作ったら、とか考えると考えちゃいますよね。

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加藤 康祐 / 企画・設計

1980年1月12日生まれ。フリーランス歴15年。プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。学生時代にデザイン会社でWebデザインを経験。2005年よりフリーランスとしてキャリアスタート。これまでに個人から上場企業まで、100以上のクライアントとのプロジェクトを経験。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの編集・運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート等。趣味はラグビーと料理。Keep the head up, Bind tight & Stay low.

加藤康祐企画設計

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