2009/3/25

面白きこともなき世を面白く、そればかりにて生きるは難し

ちょっと前からアンサーソングというのが流行っているみたいですね。僕の知っている限りですと、三木道三氏の『Lifetime Respect』のアンサーソングとか。実は僕もここ数ヶ月、アンサーソングというのを考えておりまして、何に対してかと申しますと幕末は長州の維新志士、高杉晋作の辞世の句へのアンサーソングです。

高杉晋作という人は、司馬遼太郎氏の『世に棲む日々』を読んでいただくと話が早いのですが、吉田松陰の教えを受け継ぎ、身分の良い家柄ながらも、藩を憂い、国を憂い、病と闘いながら、短い生涯で日本に大きなうねりをもたらす立役者の一人となった人物です。それはまさにあの時代に起こり得た最大のグランズウェルだったのでしょう。

その高杉晋作の生涯、僕はこう生きれないなあと思いつつも、憧れる部分は男子として多々あり、放蕩息子な癖に意外と親に従順だったりするところも可愛げがあり、そういう人間臭さも含めて非業の人なれど尊敬しています(司馬遼太郎氏の娯楽小説から入っているので、史実とは違う認識をしているのかも知れませんが)。

その高杉晋作の辞世の句の上の句が「面白きこともなき世を面白く」なんですね。

日本人って「面白い」ってことを至上命題にすることって実はそんなに多くないんじゃないかと思うのです。僕の記憶の範囲では、フジテレビが「面白くなくちゃテレビじゃない」って言ってたのと、ご存知、面白法人カヤックくらいしか思いつきません。

幕末、あれだけ暴れ周り、日本の歴史に名を刻んだ人物の、辞世の句。そこには強烈な生きることへのモチベーションの定義がありそうですが、そこにあるのが「面白きこともなき世を面白く」というのは何とも酔狂で粋じゃないですか。

一方で今の時代にそういうことを受けて、どう考えるかというところ、僕にとってこれを連歌としたときの下の句は何になるのかということを『世に棲む日々』を読んでから、何となく考えていたのです。

で出てきたのが、「そればかりにて生きるは難し」です。

これだと二通りの解釈ができるように思うのです。面白いだけじゃ生きるって苦行は乗り越えられないよ、ということと、面白いだけじゃ生きるのは難しいけどそうありたい、ということ。でまあ、両側面が今の時代にあっては真実なのではないかと、個人的には思うのです。

以前、「面白い」という記事を書きました。面白いということに魅力を感じる僕なりの定義はこれなのだけども、その上で「あいつが世を面白くした」と思われるならそれはカッコいいと思いますし、一方でふと「自分の人生」ということに冷静に目を向けると、それだけじゃ立ち行かない色々な思惑が出てきてしまいます。

そういうアンビバレントじゃないけれど、しばしば反目する「世」と「己」という構造が「面白きこともなき世を面白く、そればかりにて生きるは難し」とやるとすとんと世界になるように思います。

本当はこんなの解説するもんじゃなくて、読んだ瞬間にそう伝わらなければいけないのでしょうが、そもそも別に僕は俳句が好きとかいうことではなく、あまりにも印象的な「上の句」を見つけたので、どうしても自分なりの「下の句」をピタリとはめたいというところだったわけでして。

これでこの句、僕的にようやく消化できたように思います。

しかし、来年の年賀状に、これこのままキャッチコピーで使ってそうですね、僕。

加藤 康祐 / 企画・設計

プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。Webデザインを入り口に、2005年よりフリーランスとしてのキャリアスタート。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート。ラグビーと料理、最近イラスト。

加藤康祐企画設計

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