2010/3/12

聴く人

書くことについてはこれまでも当ブログでたびたび言及してきました。書くことは大事で大好きなのですが、書いているだけの人と思われるのも問題です。コミュニケーションの基本は面等向かって話すことである以上、喋ることと、聴くことも大事なわけで。でまあお恥ずかしい話なのですが、僕結構喋るの苦手でして。

1対1でとか、酒飲んで、とかだと大丈夫なのですが、人前でとか、初対面の人と、とかだと三十路にしてまだ若干の苦手意識があります。特にとうとうと人前で自分が講演している姿など想像だにできません。以前にトークセッションをUstreamで聴いていた後輩も、「あのトピックなら一家言二家言あるはずなのに、全然喋って無かったじゃないですか!」と叱られまして。

思い起こせば小学校の運動会で壇上に上がって喋る時にも、頭真っ白になってとりあえず「元気ハツラツ」と口走り失笑を買ってましたし、学生時代、初めてのプレゼンの時も、何度予行演習しても噛むので、まあ時効だと思いますが、先輩にウォッカのショット一杯煽れと渡され、それでも緊張して喋れず、開始3分で先輩が喋ることになってしまった、という苦い経験があります。今でも会議室で一人で20~30分喋り続けるようなプレゼンはままあるのですが、なかなか慣れないですね。

それでもまあコミュニケーションの仕事をやっているわけで、じゃあどうやって仕事を成立させているのかと言うと、僕基本的には聴く人間なんですね。聴くって別に誰でもできるでしょうとも思うわけですが、まあ最小限の発言で最大限の発言を引き出すみたいなことには、多分僕は能力的なものが少なからずあると思うんですよね。

就職活動のことを思い出すと、まあよく人の話を聴いてたなと思います。自分が喋った話より、グループ面接とかで他の人が喋った話や、面接官の話の設定の仕方とかをよく覚えているんですよね。基本的に就職活動って別に何か新しいことを話さなきゃいけないわけではなくて、自分のことをひたすら語ればいいわけですよ。それはすごい簡単。ただ肝心なのは、前後の文脈を踏まえているかということだと思うのですよね。面接官の話の振り方はどうだったかとか、それを受けて隣の人がどう話したかとか、そういうことをきちんと理解して適切に適正に自分の話をする。そういうのは実は喋る力より聴く力によるところが大きい。

だから天童荒太氏の『悼む人』に近いかも知れませんね、ある意味。

仕事の打ち合わせに行くと、クライアントの半分か3分の1くらいしか僕は喋っていません。基本的にクライアントから聴き出す仕事なんです。勿論、僕が提起したり提案したり押さないといけないこととかもありますけど、それをクライアントがどう思うかという話を聴き出しながら整理して行くことの方が大事。逆に言うと、喋りやすいように交通整理しながら聴く必要があります。それは最小限の発言で最大限の発言を引き出すということで。

ET Luv.Lab.はいつも録音をテープ起こししているのですが、もう笑っちゃうくらい僕喋ってないです。「あー」とか「なるほど」とか「へー」とか。たまあに、「こういうことですかね」、とか、「こんなこともありますね」、みたいな話もしますが、それも多分140文字以内の発言がほとんど。ただ、そうやって、喋りやすい流れを作っていくっていうのは、話を引き出して行くためには大事だと思うんです。別に先導するわけじゃないし、導きたい結論があるわけでもないのだけれど、ただすごく近い次の展開とそれに必要な橋渡しっていうのは経験で見えてくるものがあるんですね。

それはもう何か技術とか能力とかいうのもおこがましいのですが、ただ分類的に自分は「聴く人」なのだあと。喋るの好きですし、実際、よく喋りますけど、より良い面白い話を聴き出すために喋っているんであって。僕のできる話なんて大抵身の上話ですから。

まとめるとおまえ省エネだろ、ということにもなりかねませんが、まあ、そういう役回りですね色々と。

加藤 康祐 / 企画・設計

プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。Webデザインを入り口に、2005年よりフリーランスとしてのキャリアスタート。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート。ラグビーと料理、最近イラスト。

加藤康祐企画設計

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