2009/1/15

企業の体力

先日、『21世紀の国富論』という原丈人氏の著作を読みまして、感心することしきりでした。この本は今を基点に(2007年の本ですが)過去20年と未来20年くらいについて語られている、という把握の仕方もありなのではないかと思うのですが、特に重要だなあと思ったのは、かなり辛辣な過去20年の理解のパート。

アメリカ型コーポレートガバナンスは、株価や株主ばかりに目を向け、短期的な数値的な目標に固執するあまりに多くの企業や従業員の体力を疲弊させ、衰退させたというような話でして、2年前に読んだら僕も受け入れられたかどうか。リーマンショック後の今読むと、俄然説得力があるわけですが。

こういう世界同時恐慌という未曾有の事態に直面すると、対処療法を選ぶしかないのでしょうが、例えばトヨタのような企業が、大胆な人員削減策を打ち出してしまうと、もうそれは日本にリストラ旋風を吹き荒らしてしまうしかないわけで。

勿論、少しでも株価を維持するためには、具体的な施策を速やかに発表しなければいけなかったのだろうし、株主へ理解を求めるためには大胆な施策が必要だったのかも知れませんが、トヨタはいくら赤字が出ようとて、今日や明日に潰れる企業じゃないわけでしょう。

そういう企業がバッサリやってしまうと、あのトヨタがやってるんだから、という話になりかねないわけです。勿論、トヨタは国営企業なぞではないし、現にメーカーが強烈に円高の影響も受けているわけですが、とは言え、もう少し緩やかにとか、段階的にとか、いうやり方を選んでいれば、ここまで厳しい経済寒波にはならなかったかも知れない。

僕はトヨタの人間でもなんでもないので、他力本願で恐縮なのですが、とは言え、日本を代表する大企業ですから、もう少し「日本の防波堤になる」くらいの気概を見せて欲しかった。そうしたら、日本の他の企業も、もう少し日本的な対処療法を模索するという選択肢を選んでいたかも知れません。

原氏の指摘から一番今後心配になるのは、この不況を乗り切った後に、その後、成長路線を描いていけるだけの体力を、このような大胆な外科手術後の日本企業が持ち得るかということです。

「サバイバビリティよりサステナビリティ」ということをやっていかないと、企業の体力というのは著しく欠損してしまうのではないでしょうか。

今やっている対処療法は言わば筋持久力のない筋肉をつける作業なのではないかと思います。瞬発的に短期的に数値的に妥協点は見出せても、生き残る為には、もう少し他に取り得る施策があったのではないかと思います。

ただ、CEOも内閣総理大臣も、基本的に短命ですから、在任中に結果を残そうと思えば、そうせざるを得ないという構造的な問題もあります。これから40年、50年、働いていかなければいけない人々がたくさんいるにも拘わらず、今をどうにかしないと自分とその近辺の立場がまずままならないという状況。

緩やかなことはスピード重視の今の経済ではしばしば悪で、しかし、世界同時不況などということも瞬く間に世界中に伝播してしまうのがグローバリゼーションの中の日本ですから、この恐るべきスピードの中で、少しでもそれを緩やかに和らげるようなちょっと旧来の日本型の発想も、それだけでは駄目でしょうか、検討するべきなのではないのかと思っています。

加藤 康祐 / 企画・設計

プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。Webデザインを入り口に、2005年よりフリーランスとしてのキャリアスタート。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート。ラグビーと料理、最近イラスト。

加藤康祐企画設計

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