2008/11/14

クラウドソーシングに必要なのは、旗印の魅力

昨今、IT業界のトレンドワードに「クラウドソーシング」というのがあります。クラウドソーシングの定義については、Wikipediaを参照することで割愛させてください。

従来、アウトソーシングという形で企業などが、外部に専門性の高い業務を外注するというトレンドがあった。しかし、昨今では、インターネットの普及により「不特定多数」の人にそのような業務を外注するというケースが増えている。それらを総称し、クラウドソーシングと呼ばれている。たとえば、P&Gは商品開発に、ボーイングは機体組み立てにそのような手法を取り入れている。

この辺りの話は以前取り上げたDon Tapscott氏の『Wikinomics』で既にかなりの部分取り上げられており、ただクラウドソーシングという言葉自体が浮上してきたのは最近のことという認識です。

さて、このクラウドソーシングですが、サービスとしてやろうとするとなかなか難しい。というのもプラットフォームを作っただけだと、しばしば「マイクロビジネスのマッチング」のためのプラットフォームに変容してしまうと思うのです。別にマイクロビジネスのマッチングだけでも意味のあることですが、これまでもそういった分野は仲介業者、斡旋業者がエンジニアやクリエイターの登録サイトを作って行って来ました。有名なところだと楽天ビジネスとかLoftworkなんかがありますね。ただこういうのって実はアウトソーシングのプラットフォームがネット化しただけで、厳密に言うとクラウドソーシングではないように思います。

それらと、Wikipediaとかオープンソースのソフトウェア開発プロジェクト、P&Gやボーイングの取り組みなんかを比べると、関わる人の数が違う。可能性のある範囲から見積もりとポートフォリオを集めて選別して発注するというアウトソーシングのスタイルとは違って、1つの大きな旗の下、色々な人が部分的に関わって大きな世の潮流と成り得るプロジェクトが動く。というのがクラウドソーシングの大きな魅力なのではないかと思います。

そう言えばその名も『クラウドソーシング』という本が出版されているのですが、この本自体がWiki的にクラウドによって編集され、出版された本だそうで、そういうことなんですよね。

そう考えると、これからのクラウドソーシングを考えるに、「マイクロビジネスのマッチング」ということの差別化というのは、大いに注意を払われるべき部分ではないかと思いました。そういう意味では、その旗振り役と成り得る体力の持ち主という意味では、大企業のコミットメントも重要なのかも知れません。こういうことは経済力、お金だけじゃないですけどね。

また、例えば先述のボーイング787、Dream Linerは”あたかも”クラウドソーシングの成功事例のように語られていますが、実はこの787、ボーイング社始まって以来の大幅な開発遅延に悩まされているプロジェクトなのだそうです。勿論、遅延の理由には様々な要因があるわけですが、さりとてこの「新しい取り組み」の影響がないとも言えず、クラウドソーシングによるプロジェクトのマネージメントがいかに難しいか、ということを物語っている一例とも言えそうです。

当然、中央管制室型のマネージメントはクラウドソーシングの世界では機能しないのでしょうが、さりとて、ビジネスとして走らせるにはタイムマネージメント、コストマネージメント、クオリティマネージメントが必須です。所謂、「知財」以外の資産を必要とするプロジェクトで、これらをきっちりとマネージメントしながらプロジェクトを運営していくということは、かなり高度で高度過ぎる世界のような気もします。

とは言え、クラウドソーシングには「夢」があります。ワクワクするプロジェクトに、様々な所属の人が関われる「希望」があります。そういうものを満たすには、まずもって、プラットフォームの仕組みより、むしろプロジェクト自体の旗印の魅力に、クラウドソーシングという形態の魅力が担保されるということになりませんかね。

加藤 康祐 / 企画・設計

プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。Webデザインを入り口に、2005年よりフリーランスとしてのキャリアスタート。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート。ラグビーと料理、最近イラスト。

加藤康祐企画設計

是非、フォローしてください!
Twitter / Instagram

(2012-10-5)
売り上げランキング: 14,705
100円