2009/11/23

ノマドと思想、あるいは「生きやすさ」について

明日、SFCのORF(Open Research Forum)というのに遊びに行かせていただくことになりまして、夕刻、シャワー浴びながら久し振りにノマドについて思索を巡らせておりました。ノマドという言葉も佐々木俊尚氏の『仕事するのにオフィスはいらない』に取り上げられたりして、まだまだ市民権とはいかずとも、ちょっと話題にできるキーワードになって来た感じはします。

最近の問題意識としまして思うのは、ノマドということを語るのに「ハウツーはあるが、思想がないな」ということです。ともすれば、僕にとっては「仕事するのにオフィスはいらない」ということ自体は、ストレスの多寡はあるものの、基本的には10年前からそうでしたし、その頃、SOHO(Small Office, Home Office)とか、モバイラーとかいうキーワードで取り上げられたことと同じ意味合いになってしまうのであれば、つまらないなあと思うわけです。

で、ちょっと気付いたのですが、日本人て、暮らしやすさとか、働きやすさとか、住みやすさとか、生活しやすさとかは話題にしますけど、総じて「生きやすさ」って大上段過ぎて語らないものだなと。一つには、日本という国が宗教に頼らない人が多いという特異性によるものかとも思うのですが、社会情勢を見ていると生き辛さ、というか生き詰まり、というか、色々な意味で生きやすくない社会になって来ているのではないかとも感じます。実は「ノマド」って本来的には、この「生きやすさ」にフォーカスしたムーブメントだと思うのですよね。

つまり、「生き方がいかにコンフォタブルであるか」ということ。

別にデジタルデバイスを駆使して仕事ができるとか、事務所がなくても仕事ができるとか、そういうハウツー的なことではなくて、「生き方をいかにコンフォタブルにできるか」ということを念頭に、ワークライフバランスや人づき合いやマネープランや心身の健康などということのオプションを取捨選択し、より良い将来像に結び付けていけるかということがノマド的なこと、なのではないかなあと。

これに関連して「自由」という言葉がどうしても出てきますが、仲間内でよく話になるのは「自由になりたい」というモチベーションで、ノマドということを考えているわけではないなと。ただ、「生き方をいかにコンフォタブルにできるか」ということを考えた時に、しばしば既存の組織体では「選択の余地が限られてしまう」というのも現実で、「取捨選択のオプションをより多く持つため」に結果として、「自由な生き方」という風に外面が見えるのではないかと思うのです。

むしろノマドというのは「生きる大義」に対してはストイックな生き物で、というのも自分の人生の担保を組織の看板で取ってない、取り辛い、というところもあるわけですから、時間や資産が有り余っているという意味で「自由」かというとそうではない。ただ、変幻自在に自分自身を自分のイマジネーション通りにメタモルフォーゼできるという意味での「自由度」は高い。そういうことなのではないかと思います。

だからコンフォタブルという言葉を使うと「楽」なのかと思ってしまいますが、「たのしいけれどらくではないよ」というのが現実で、以前、「後輩に勧められない仕事をしています」という記事を書きましたが、それ相応の「覚悟」を以って望まないと、まず以って、「食えない」ですから。

「食える・食えない」ってことも大事ですけど、それはある意味前提条件として用意しなければならないスタート地点で、その上で、「生き方をいかにコンフォタブルにできるか」ということを求道できるのが「ノマド」ということなのかと今は思うようになりました。こういうある種ゆとりのない時代に「コンフォタブル」という言葉を持ってくるのは時代錯誤なのかも知れませんけど、社会のありとあらゆる仕組みが息詰まりを見せているこういう時代だからこそ、生き詰まらないための「生きる」ことに対する試行錯誤は必要で、そういう意味において「ノマド」というスタイルの提示は、意義があるものと思って、「ET Brand 10」にも含めています。

その上で、例えば接続環境のユビキタス化や、ソーシャルメディアや、デジタルデバイスの発達が、色々なシーンで僕らの生き方を「コンフォタブル」にしてくれる。「生き方がいかにコンフォタブルであるか」という前提に立って捉えてみると、そういうハウツーの恩恵を改めて享受できるのではないかとも思うわけです。

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加藤 康祐 / 企画・設計

1980年1月12日生まれ。1998年よりデザイン会社のパートタイムアシスタントとしてWeb制作を経験。2005年に独立、フリーランスとして、企業、個人、NPO、独立行政法人など、様々な領域でのITやデザインによるサポート業務に携わる。2018年、加藤康祐企画設計を開業。これまでの経験を活かし、より広い視野でクライアントの問題解決に取り組み、クライアントと一緒になって新しい価値創出をし、平静な社会の実現を目指す。

加藤康祐企画設計

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