「どっぷり」という有料化へのフック
商売柄と言いますか、割とWEBサービスは利用している方だと思います。特にGoogleにはかなりお世話になっていて、メールもカレンダーもアクセス解析もRSSリーダーも広告管理もGoogleで、毎度のことながら便利だなあと思わされます。Googleによる「無料」のインパクトは凄いものがあります。厳密に言うと、他の部分で(広告とか)きちんとマネタイズしているので、無償ということではないのだと思いますが、とは言え利用料は無料ですからスゴイです。
コンテンツ業界とか、メディア業界とか、そういうところではこの10年来、「無料」に苛まれてきた感があります。まだ無料でコンテンツがネットにあるくらいまでなら良かったのかも知れませんが、実際に広告費がネットにシフトしてきてしまうと、今まで別世界の話と処理できたものもここ数年で「何とかしてどうにかしないといけない大きな問題」になってきたんじゃないでしょうか。
ところでネットで利益が出るところと言いますと、大きく広告と物販になっているのではないかと思います。特に最近は物販も広告に負けじの勢いがあるようです。ネットでなら誰でも物が売れるわけでは到底ありませんが、ネットを介した物販のパイが、全体的に上がって来ているようです。
さて、そんな中で利用料というモデルはどうでしょうか。先述の通り、僕もいくつかWEBサービスは使っていて、特に気に入っているものに関しては、利用料を払ってヘビーユーザになっています。それらにはどうやら共通項があるようです。
- Dropbox…オンラインストレージサービス
- Flickr…オンライン写真共有サービス
- Evernote…オンラインメモクリッピングサービス
全て海外のサービスなのが残念な感じですが、これらに共通するのは、通常のサービスは無料で使えて、データの通信量、あるいは容量を多く使いたい人は、有料ユーザになってください、という仕組みだということです。実はGoogleのGmailも容量がデフォルトでたくさんありますから、あまり気になりませんが、一定容量以上を使用する場合は、追加で容量を買う仕組みになっています。
大抵の場合、無料ユーザでも機能的な制約は多くなくて、無料の範囲で存分にそのサービスの機能を使い込めるようになっていて、その上で「どっぷり」な人は、通信量や容量と言った物理的にコストが増えていってしまう部分に関しては、あなたも有料ユーザとして幾許かを負担してくださいね、ということなのであろうと思います。
これって実は面白くて、「よりよい機能を使うため」に有料なのではなくて、「どっぷりサービスを使うため」に有料だってことなのですね。つまりとりあえず、多くのユーザにフル機能を使ってもらって、そのうちの数%の「どっぷり」な人達とは、お金のことを含めてきちんとエンゲージメントして、継続利用を促していくという仕組みになっているということだと思います。まあそこそこ使うよという人とは、ポテンシャルユーザとしてゆるゆる繋がっていれば、今後の可能性は期待できると。
そう考えるとWEBサービスの利用料における無料と有料の垣根って言うのは、10ある機能のうちどこまで使えるか、というような尺度ではなくて、サービスを「どっぷり」使いたい人をフィルタリングした上で、いかにリーズナブルな(お値ごろ感のある)次のステージを提案できるか、ということになってくるのではないかと感じました。「ちょっとだけよ」という釣り方だけでは、なかなかこれから難しそうです。
個人的には次の「どっぷり」はまりたくなるサービスの登場が楽しみです。

加藤 康祐 / 企画・設計
プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。Webデザインを入り口に、2005年よりフリーランスとしてのキャリアスタート。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート。ラグビーと料理、最近イラスト。
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フリーランスとして働き始めるってどういうことだったのか?フリーランスとして働くってどういうことなのか?フリーランスが目指すことってなんなのか?5年間の自分の経験から書きました。(2010年執筆)