2009/8/1

金を2倍出すから、知恵を2倍出せ、と言われたら

田坂広志氏がテレビでそんなことをおっしゃってました。田坂氏は一度お話を聴いたことがあって、『プロフェッショナル進化論』の出版記念の講演会だったのですが、「これからの自由な働き方」に示唆的な考え方を持っておられるという印象で、随分当時お話の内容に励まされた記憶があります。

金を2倍出すから、知恵を2倍出せ、と言われたら、困りますよね。経営サイドが知恵を2倍社員に出してもらおうと思ったら、給料を2倍にする、ということは解決策にならないんですよね。勿論、それは自明の理で、だから色々な会社が社員の知恵を発揮させるために、様々な工夫をして、2倍と言わず、3倍、4倍にしようと取り組んでいるんだけれども、「金を2倍出すから、知恵を2倍出せ」と言葉にしてみると、改めて報酬の意味を考えさせられます。

田坂氏は「機械論的な捉え方から、生命論的な捉え方へ」というような言い方もされていて、そう言えば前にNHKでも「マネー資本主義」なんて特集をシリーズで組んでましたけど、「これからの資本主義」に求められるのは、スゴク大きく言うと「社会に対する正当性」みたいなことなのかなあと思います。『21世紀の国富論』の著者の原丈人氏も先述のNHKの番組で取材されてましたが、「株主より社会貢献が第一義にある企業像」を本来のあるべき姿とおっしゃっていて、田坂氏も原氏も共通していたのは、それこそ本来日本企業が大事にしてきた企業の在り様だったはずだ、ということですね。

合理化、スリム化、情報化、必要なところは欧米企業にも倣いつつ、ただこれからの知的生産社会にあって、折しもソーシャルビジネスと言われるものが日本でも注目を集めて来た昨今ですから、改めて対社会の役割を既存の企業も再認識して、あるべき姿を取り戻さないと、企業も社員も「もたない」と考えている有識者の人も多いと最近感じます。

ちょっと話しが変わりますが、「金を2倍出すから、知恵を2倍出せ」って企業における社員について話を進めましたが、自分に置き換えて考えるとちょっと話しが変わってくるなと思いました。僕は「金を2倍出す」って言われたら「知恵を2倍出さないといけない」という「立場」にあるんだろうなと気付きました。

逆に言うと、「知恵を2倍出さずして」、例えば実績や経験年数だけでは、「金を2倍ください」とは言えない。その辺り、フリーランサーってシビアなのかなと思います。よく一度決めた値段を改定するのはフリーランサーは特になかなか難しいよね、という話はしますが、妥当性のない値上げは当然承諾されるものではない。

でもこういう言い方もできるのかなと思いました。「コミットメントを2倍にすればいい」。今出せる知恵を明日から急に2倍にすることは難しいですが、クライアントのビジネスに対するコミットメントを2倍にするということは工夫次第でできるかも知れない。

その上で別に「金を2倍ください」としなくても、それは先ほど企業を例に考えた報酬の形で良くて、「遣り甲斐」とか「自己成長」とか「社会貢献」とかでもいいわけで、ただ「金を2倍出すから、知恵を2倍出せ、と言われたら」という問いかけは、思ったより色々考えられるなあと思いました。

なかなか面白い設問です。

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