2009/6/8

電気自動車とそれに伴う世界の変化について考える

村沢義久氏の『日本経済の勝ち方 太陽エネルギー革命』を読んでから、すっかりその筋の話が面白くてならないのですが、本日NHKのクローズアップ現代で「電気自動車が社会を変える」が放映されており、Twitterで村沢氏が出演することも知っていたので、晩飯前に観てみました。

僕の興味からすると、地球温暖化を防ぐためにはCO2ゼロの電気自動車を!、という観点よりは(それも勿論大事)、電気自動車ということそのものが化石燃料社会からの脱皮(三菱自動車の益子修社長がこの「脱皮」という言い方をしていた)のスタートであるというところに興味があり、自動車を中心とした産業構造をガラリと一変させる可能性を秘めている、というようなことを感じさせるサポーティングパラグラフになるような話がたくさん紹介されていました。

特に興味深かったのは、今のガソリン自動車が30,000点の部品によって構成されるのに対して、電気自動車は何と3,000点まで部品数が減ってしまうんだそうです。これがベンチャーが参入しやすい産業に自動車業界が生まれ変わる可能性があるという所以で、村沢氏のキャッチコピーは「ビッグ3からスモールハンドレッドへ」なんだそうです。確かに市場への参加障壁が低くなってプレイヤーが増えることはいいことです。

一方で、僕が痛切に思うのは30,000点-3,000点の部品=27,000点分の仕事が自動車業界からなくなるということ。これはなかなか厳しい状態ではないかと思います。今の自動車業界はこういう不況の中でかなり厳しい状況にあるわけですが、これからさて車の需要がこれまでに近い水準に引きあがったとしても、これからの車にあなたたちの部品は必要ない、と言われてしまえばそれは厳しい。村沢氏は厳しいことは踏まえた上で、部品メーカーが電気自動車そのものを作るという選択肢もあるということを示唆していましたが、多くの会社が取り得る選択肢でもないように思います。

ただ単純に考えて3,000点の部品による製品ですから、コスト削減にも結びつくはずです。電気自動車の一番コストがかかる部分はバッテリなのだそうですが、バッテリをカセット型にして1分くらいの所要時間で簡単に交換できるシステムを提供するBetter Place Japanという会社も紹介されていました。こういう考え方だと一番お金のかかる部分をイニシャルコストゼロ、ランニングコスト従量課金というリースのような形にできるのであれば、三菱自動車のi-MiEVで459万円という価格も、意外と早く圧縮できるようになるのではないかと思ったりしました。

法人向けに販売する、というニュースは色々なところで目にしてきましたが、具体的にどういうプロジェクトが動いているのかということ、例えば、先ほどのBetter Place Japanは都内のタクシー会社の幹部を招いて説明会を行ったようですし、三菱自動車は京都で走るレンタカーの電気自動車化と、それに伴う観光名所での充電設備=インフラの確保を進めているそうです。

個人的には電気自動車への流れというのは最早止められないもので、不可避で、ハイブリッドが景気が良いようですが、中国なぞは国策として電気自動車に取り組んでいると言いますし、シリコンバレーのベンチャーなども今後参入してくるのではないかと村沢氏もおっしゃってましたが、ヨーロッパも環境への関心は高いですし、日本だけ電気自動車に本格参入しない、というわけにもいかないのではないかと思います。

その上で、村沢氏の『日本経済の勝ち方 太陽エネルギー革命』ではソーラー発電社会へのシフトを示唆しており、風力発電のデンマークや、太陽光発電のドイツやスペインなどもあり、太陽エネルギーによる電力が循環する社会は確かに魅力的なのですが、ここはなかなか難しいと思う。

今の景気、コスト水準、所得水準を考えた時に、なかなかそれに耐え得る態勢を日本は確保し得ていないという気がします。ソーラー発電社会が景気低迷に喘ぐ日本社会の次なるフロンティア、というのは勇ましいですが、一方で、それだけの膂力があるのか、リスクを抱えるだけならまだしも途中で腰砕けないのか、だったら積極的にはやらないと考える人はいないのか、というあたりが気になります。とは言え、今の状態で電気自動車で日本が乗り遅れると、携帯電話で散々言われたように、日本の自動車業界すら「ガラパゴス化」してしまう危険性すらあるのかも知れません(日本の自動車業界は海外への強力な営業力を持っていると感じるので、そういう心配は要らぬかも知れませんが)。

だからこそ、「ソーラー発電によるエネルギーエコシステムについて考える」でも書いたとおり、電気自動車がソーラー発電社会への試金石になると感じています。

アニメの話で恐縮ですが、つい先日までやっていた『ガンダム00』という作品で、「太陽光発電システム」というのが出てきました。宇宙に大きなソーラーパネルを設置して地表までエレベータで電力を供給するという壮大な計画なのですが、これあながち荒唐無稽な話ではなくて、三菱電機の「SOLARBIRD」なんて計画もあるみたいですし、村沢氏も『日本経済の勝ち方 太陽エネルギー革命』によると、1970年代の「Solar Power Satellite」という計画にArthur D. Little時代に関わっていたんだそうです。

で、なんで、ガンダム話になったかと言いますと、この『ガンダム00』の世界で人類が化石燃料から「脱皮」することによって、貧困と内戦に喘ぐ中東、というのが描かれているのですね。これもリアリティがない話、というわけではないと思っていて、Thomas Friedman氏の『グリーン革命』でまさにテロ撲滅(中東弱体化)のためにも、アメリカは化石燃料社会からの脱却を国策にするべきというような話が述べられてもいます。

そんなところで、この20年余にインターネットが僕らの社会に大きな影響を及ぼしたように、次の20年は電気自動車に始まり、化石燃料社会からの脱却なるか、太陽光発電社会来たるか、というような時代になるのではないかと感じ始めています。

20年前は、Last 1 Mileとか言って、家庭に光ファイバが、なんて夢のまた夢のような話でしたが、今じゃ誰も驚かない、どころか、あまり大した問題でもないというような感覚になっている。

電気自動車やソーラー発電社会の話も昨日今日始まった話ではないはずですが、ここに来て色々な意味でリアリティを持ち始めたという印象です。そういう意味でしっかりこれからもフォローしなければと思うトピックです。

ひとり仕事: フリーランスという働き方
(2012-10-5)
売り上げランキング: 14,705
100円

加藤 康祐 / 企画・設計

1980年1月12日生まれ。フリーランス歴15年。プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。学生時代にデザイン会社でWebデザインを経験。2005年よりフリーランスとしてキャリアスタート。これまでに個人から上場企業まで、100以上のクライアントとのプロジェクトを経験。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの編集・運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート等。趣味はラグビーと料理。Keep the head up, Bind tight & Stay low.

加藤康祐企画設計

是非、フォローしてください!
Twitter / Instagram