2007/12/26

僕はデザイナーとして機能しないと思う

短く自己紹介をしなければいけない時には、大概の場合、ブランディングという言葉は使わずに、「デザインの仕事をしています」という言い方をしています。ブランディングと言ってしまうと、人によってイメージする仕事の規模がまちまちで、ブランディングという言葉の定義が必要になってくるので、個人事業である僕の仕事は「デザインの仕事」と言ってしまった方がわかりやすいからです。

とは言え、いわゆるデザイナーかと言うと、なかなか難しい部分もあります。だから名刺にはプランナーとあやふやな書き方をしているわけですが、僕はいわゆるデザイナーとして機能しないと思うのです。昔はボスがいて、その下で与件を与えられてデザインの仕事をする時は、質の問題は別としてデザイナーという役回りをしていたこともあったと思います。ただ今の仕事の仕方をデザイナーって言ってしまうことは誤解を招く気もしています。

一番思うのは、僕はプロデューサーやディレクターの下で働くチームの一員としてのデザイナー、という立ち位置で機能しないだろうな、ということです。僕は極めてクライアントの視座に近いところで仕事をしようとします。デザイン作業の過程で何度もクライアントが打ち合わせの席で語っていた言葉を反芻しながら、それを自分の感覚に取り込んで、作業をします。これをデザイナーと言う立ち位置で考えると、主体性の欠如、クリエイティビティの欠如と言われかねませんが、実際僕のやっていることはそういうことなのです。

サイトの構造であるとか、ページ構成であることとかも、どうしてもコストパフォーマンスやクライアントの体力を計算して考えてしまいます。クリエイティブをクリエイティブ単体として求道できないのが、僕の弱みかも知れません。「最適」よりは「最高」を目指したいと思いますが、一方で僕より腕の良いデザイナーは星の数ほどいると思います。

逆に僕の強みは営業から企画、デザイン、制作、運用まで一貫して僕が行っていることです。果たしてクリエイティブの世界にトレーサビリティの考え方が必要なのかどうかは定かではありませんが、成果物の開発工程をシンプルにするという意味では、何か問題が発生してもその作業は基本的に完全に僕のコントロール化なわけですから、問題の発見もそれへの対処も、僕の中で解決ができる範囲におさまっているという言い方ができると思います。

最近ではデザインの仕事と言ってる割に、ライティングの仕事があったり、もう少しIT全般のコンサルティングの仕事があったりと、業務内容自体も多様化しています。それでも「デザインの仕事」って言ってしまって良いと思っているわけですが、一方で「WEBデザイナー、年収500万円、残業なし」みたいなバナーを見ても、「僕にはこれはつとまらないな」というのが正直な感想です。

ただ個人事業主として仕事をしている以上、そしてビジネスをクライアント本位で開拓していこうと思っている以上、今の方向性は間違っていないと思っています。クライアントに張り付いてユーティリティプレイヤーとして機能しながら、しっかり成果物はプロとして作っていくという立ち回り方は現状最も理に適った仕事との向き合い方で、Small Business, Good Sense, Great Attitudeを実践していく上でも、正しい方向性だというのは、これまでの3年間が培った確信でもあります。

「1人でやるには限界がある」、とは何度も耳にした言葉ですが、今のところ1人でやる限界にぶち当たってもいませんし。

「Your External Brain」というのは僕の言葉ではないですが、目指しているところはそういうところだと思います。頭脳じゃなくて全身でお応えしますが(手も動かしますし、足も動かします)。色々なクライアントの外部スタッフとして、掛け持ちで色々な経験をしながら成長できるのは、この仕事のダイナミズムだと思います。全く別の業界の経験でも、思わぬことで繋がって、僕の中で常々シナジーが起こっておるのです。

だから、「WEBデザイナー、年収500万円、残業なし」じゃなくてもいいんです。

加藤 康祐 / 企画・設計

プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。Webデザインを入り口に、2005年よりフリーランスとしてのキャリアスタート。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート。ラグビーと料理、最近イラスト。

加藤康祐企画設計

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