2006/8/19

ゲームというインタラクティブコンテンツの先端

日本人のITリテラシーの底上げということにあっては、パソコン導入期以前にTVゲームというものに慣れ親しんでいたということが、実は大きく影響しているのではないかと思っています。ゲームをするということは言わば情報処理の訓練であり、インタラクティブなデジタルコンテンツに初めて触れたのは、インターネットではなく、TVゲームという人が多いのではないでしょうか。

インターネットを仕事としている自分にとって、表現力豊かなWEBサイトを見て回ることはとても有意義ですし刺激的なことです。けれども、果たして現在のTVゲームのクオリティに勝るWEBサイトがあるでしょうか。ゲーム業界というのは、インタラクティブコンテンツ創造の先端であると認識しています。ゲームという語感が、「競い合う」とか「遊び楽しむ」とか、言わば「娯楽」として扱われていますが、むしろインタラクティブコンテンツにユーザが触れるための一番フレンドリーな形態が、ゲームという娯楽性を孕んだエンターテインメントのスタイルを創出したわけで、逆に言うとTVゲームというものが出現してきたからこそ、一般の人々がデジタルなインタラクティブコンテンツに意味性を見出すことができたのだと思うのです。

僕が初めてゲームに触れたのは「ゲームウォッチ」というやつです。今のNitendo DSやPSPに近い携帯型のもので、ただ「ソフトを差し替える」という発想はまだありませんでした。ほどなく、任天堂のファミリーコンピューターが出てきて、カートリッジでソフトを差し替えられるようになります。例外に漏れず、『スーパーマリオ』や『グラディウス』、『ドラゴンクエスト』や『熱血硬派くにお君』なんかにはまりました。

スーパーファミコンが登場した時はそのグラフィックスが革命的でした。また、ハードのスペックが上がれば、より美しく楽しいゲームを味わうことができるということを知りました。その後、PlayStationやセガサターン、Dreamcast、PlayStation 2なんかをやりましたが、ゲームは「こんなことまでできるんだ」という驚きを常日頃感じさせてくれて、それはクリエイションへの憧れを醸成する一つの要因になっていたかも知れません。

DreamCastは中でも僕にとっては興味深くて、それはインターネットにモデムを使って接続できるということでした。とは言っても今のネットワークゲームに類するようなものではなく、簡単な通信機能や(『シーマン』とか)情報サイトへのアクセス、ソフトの購入サイトへのアクセスなど、非常に限られた用途だったように思います。

それが今やゲームのネットワーク対応は当たり前、XBOX360、PlayStaion3、Wiiと言った新世代のゲーム機ではかなり高度なネットワークゲームが楽しめるようです。僕らがゲームを覚えた頃は、TV画面とコントローラによるゲームソフト対ユーザのインタラクティビティでしたが、今ではゲーム自体が日々ネットワーク越しにアップデートされ、ユーザ間でのコミュニケーションがゲームの進行と並行して行われている、あらゆる意味でのインタラクティビティを発揮しています。このことはWEBよりもずっと早い、ゲームというデジタルコンテンツに起こった2.0的な変化だったのではないかと僕は考えています。

こうしたハードのスペックの向上とは裏腹に、『脳を鍛える大人のDSトレーニング』など原点回帰的なシンプルなソフトがユーザに受け入れられているという現状もあります。僕らが初めて『テトリス』に出会った頃に抱いたシンプルな喜びと似たようなものが受けているのではないでしょうか。逆に言うとコンピュータとしてのゲーム機ハードのスペックというのは今問われておらず、むしろ重要なのはソフトの持つ「ゲーム性」の部分なのではないかと思います。

ファミリーコンピュータの時代、スーパーファミコンの時代というのは優秀なソフトウェアハウスがたくさんあり、業界自体が玉石混交のような状態でした。数え切れない数のゲーム会社があり、少人数で短期間で次々に新しいソフトが生み出され、ある種、日本のゲーム業界が最も輝かしかった頃のように思います。しかし、現在にあっては、高度なプログラムや美麗なCGを用意するための開発環境、人員、予算は年々拡大の一途を辿っており、ゲーム業界の企業統合も進んでいて、ごくごく一部の企業が過去の遺産を継承しつつマスプロダクションをしているという状況があります。その過程で「多様性」、「先見性」、「独自性」は徐々に失われ、結果、「ゲーム性」というものが衰退してきているのではないかという危惧はあります。

勿論、これは他の業界でも当てはまることで、インターネット勃興期には多種多様だったWEBサービスも統廃合が進み巨大化した一部のプレイヤーが多くのユーザを囲い込んで、結果業界時代が均質化してくるという現象はあります。しかしながら、肝心なのはゲーム業界において、スペック重視に推し進めてきた業界の推進力が、かえってユーザのゲーム離れを招き、コンテンツの面白みを小難しい方向に持っていってしまった可能性があるということです。

市場の発展によって商品価値が衰退した、ということではないかと思うのです。

優秀なクリエイターとエンジニアの集合体という意味で、今後もゲーム業界はインタラクティブコンテンツの牽引役であり続けると思います。ただインタラクティブということは言い換えれば、どんな経験をユーザにアフォードするかということであって、どうやって新たな「ゲーム性」を提案していくのかということは、とても興味深いところです。

加藤 康祐 / 企画・設計

プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。Webデザインを入り口に、2005年よりフリーランスとしてのキャリアスタート。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート。ラグビーと料理、最近イラスト。

加藤康祐企画設計

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