2007/9/10

美しい国は壮大なティザー広告だ

安倍総理が所信表明演説で「美しい国」と口にした回数が8回から1回に減ったとか。それはまあこういう状況ですから仕方がないことですが、どういう蜃気楼を見ていたのか甚だ疑問ですが、ついぞ言い出しっぺの安倍総理がどんな「美しい国」像を抱いていたのかわからずじまい。

世の中的に「ティザー広告」というのがありまして、わかりやすいのは映画やゲームの発表・発売前のチラ見せ的露出のことです。ティザーは英語の「Tease」で、日本語で言うところの「じらす」という言葉にあたるでしょうか。ここ数年は中でも「ティザーサイト」と言って事前に製品をイメージさせるようなプロモーションを打って、口コミを醸成したりする効果があるとされています。

ただこの手法はもしかすると過去のものなのかも知れません。例えばMicrosoftのZune、WillcomのW-ZERO3、最近ではSonyのRollyなどがありますが、いずれも一部のTechyな人々の間で話題にはなれど、それが成功しているかというと、必ずしもそうは言えないという印象があります。

理屈としては事前に少しずつ情報を露出し、ユーザの機運が高まったところで商品を本発表し、一気に話題性を加速して、発売時にスタートダッシュをかけるという構図だと思うのですが、最近はどうも「ティザーサイトになんか付き合ってるほど暇じゃないよ」というのが大筋の意見なのではないかと思います。

Appleが潔いなと思うのは、商品発売まで一切情報を表に出さないことです。時にSteve Jobs氏の思わせぶりな発言をブロガーが取り上げて次期製品に想像を巡らしたりすることはありますが、基本的には製品発表=製品発売で、知ったその時に買えるという爽快なフローがあります。

ネットショッピングで欲しいものが次の日に届くこのご時勢で、製品発表から製品発売まで2ヶ月もあるってのは非常に大きなハンディキャップで、著しく競争力に影響があると思います。またティザーを打つということはうまく行けばいいですが、マイナスイメージが醸成される期間も長くなるわけで、プロモーションが機能しないと発売される以前に「あれ全然駄目だよね」という評価に落ち着いてしまうこともあるわけです。

しかも最近のティザー広告はイメージ先行過ぎて、作り手側の自己満足というか、ともすれば「正体不明」、何とも受け取りようのないものであることも多いです。本質的な意味のない情報の「勿体振り」にWisdom Of Crowdsは往々にして冷徹な評価を下すものです。これが例えば映画何かだと「蓋を開くまでわからない」「前評判を覆して」などという部分が働いていたりもするのですが、電化製品だとスペックである程度のことは読めますから、難しいですよね。

安倍首相の話に戻りますと、「美しい国」は「正体不明のティザー広告」で、何だかそれは正体不明のまま開発打ち切りになっているような印象を受けます。でも最後に1回「美しい国」と言ったわけだから、打ち切りってわけでもないのでしょうが、煮え切らないですね。Appleに政治家が学ぶならば、まず何をするのか、自民党をぶっ壊すのか、郵政を民営化するのか、そこまでドラスティックじゃないにしても、何ヶ月も後に結果が、それも出るか出ないのかわからないような結果の広告のようなものぶら下げられても困るわけです。

これは何かと言うと近未来を描く力の欠如です。言い換えれば現実性への想像力の欠如です。経営にはVisionが大事、ブランディングにもVisionが大事、それは勿論そうですが、きちんと普段の業務が回っている上で、Visionというものは初めてその延長線上に描かれるべきで、何も回っていないのに何の裏づけもなくてVisionだけを打ち上げたって、夏の花火のように末路は散るのみです。一時は美しいかも知れませんが、それだけです。検索エンジンを作っているGoogleが世界中の情報を整理すると言っているのは辻褄があうわけです。別に世界征服するとか言っているわけではなく、ただただ彼らはひたすらに整理すると言っているわけで。

美しい国ってのは「付き合わされてがっかりするティザー広告の典型」だなあと思わされた夜でした。

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加藤 康祐 / 企画・設計

1980年1月12日生まれ。フリーランス歴15年。プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。学生時代にデザイン会社でWebデザインを経験。2005年よりフリーランスとしてキャリアスタート。これまでに個人から上場企業まで、100以上のクライアントとのプロジェクトを経験。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの編集・運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート等。趣味はラグビーと料理。Keep the head up, Bind tight & Stay low.

加藤康祐企画設計

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