2006/7/24

ブログスフィア、透明性の企業ブランディング

ディスクロージャーやCSR、相次ぐ企業の不祥事に、ありきたりなプレスリリース。日本ならずとも全世界的に今企業に求められているのはどうやら「透明性」であるようです。そして、企業のブランド価値を守るのは、広告代理店によるCM戦略でもなく、PR会社によるメディア対策でもなく、もっと人間臭さのある手触りのある企業と顧客との親密な接点の開拓というのが、一般的な認識になってきているのではないでしょうか。ブログは今やそのための最も画期的で有効でチープだけどバリアブルなツールになってきています。

日本で一時流行ったのが社長ブログでした。ちょうど第二のIT社長ブームだったこともあり、まだあまり著名人がブログに触手を伸ばしてなかった時期ということもあり、多くのユーザを獲得しました。たださすがに、大手上場企業で社長がブログをやっているようなケースは皆無に等しいですし、そのことがマスコミの報道からも群を抜いて、社会的に影響力を持ったということは、あまりなかったように見受けられます。

一方で、「アルファブロガー」という人達が出てきました。彼らは社長という脚光を浴びるポジションにいるわけではなく、しかしインターネットにおける「論壇」に名を連ねる「論客」で、インターネット上のトレンドがしばしば彼らの発言によって作られ、アルファブロガーを取り巻くコメントやトラックバックによるコミュニケーションが議論を牽引してきました。

こうしたブログを軸にしたコミュニティ、議論の場を指す言葉としてブログスフィアという言葉があります。ブログを取り巻く環境というような意味合いでしょうか。日本語ではブログ界などと言われています。ブログ界というと、実際の社会とブログが隔絶してしまっている印象を受ける言い回しですが、欧米で使われているブログスフィアとはブログを中心としたコミュニケーションとそれが持つパワーとインパクトを指して使われているように思います。

Microsoftは長らくソフトウェア業界における「悪の枢軸」でした。Microsoftの製品を「仕方なく」使っている人はあまりに多く、Microsoftという対立軸があったからこそ、Geekな人々の間でオープンソース、LinuxやFireFoxやOpenOfficeなどの無料で誰でも開発に寄与できるソフトウェアが力を持ってきたように感じます。

しかし、Microsoftも昨今では企業イメージが大分変容してきたと言われています。その大きな要因がブログだと言われています。Microsoftはある一社員、Robert Scobleが着手したブロギングを皮切りに、ブログというものに全社的に取り組みました。Microsoftのブログ、Channel 9では様々な社員が情報を発信し、情報をシェアし、社員が社員にインタビューされ、Microsoftブランドの顧客エヴァンジェリスト(伝道者)を育てるのに影響を与えています。

Channel 9という名前の由来は、元々United Airlinesで機内ラジオの9チャンネルで聞くことができる、パイロット席の生の会話とのことで、ある種命運を共にする、わが身を身を委ねる人達の取り組みを、リアルタイムに顧客が聞くことができるという仕組みは、United Airlinesのフライトのブランド価値を高めるのに一役買っています。

ビジネスツールを選ぶということもまた、ビジネスにおいて命運を共にする、わが身を委ねるパートナーを選ぶということに代わりはなく、そういった意味でMicrosoftが顧客からの信頼を勝ち得るために取り組んでいるブログを使った社内の透明化は、顧客との親密な関係を築くことを助け、更にはMicrosoftという企業体からの離職率を下げるという内部モチベーション・システムとしても成功を収めています。

日本ではこういったブログを使った企業の透明化と、それに伴う顧客との緊密な接点の開拓、結果としての企業ブランド価値の向上という図式はなかなか成立してないように思います。一番尤もな原因は、コメントやトラックバックなどの「自由な議論」が、逆に企業のブランド価値を傷付けることになるのではないかという「恐れ」だと思います。コントロールできない、管理できない、そのブログの無防備さを感受できないと言うことです。しかし、顧客をコントロールできる、管理できる、という考え方は既に企業マーケティングの欺瞞でしかありません。企業がせいぜいできるのは旗振り役で、その後ろに隊列が続くか、ロイヤリティ(忠誠心)を持つか、ということは企業が決めることでもなく、神のみぞ知るところでもなく、顧客一人一人が決めるところです。

アメリカが議論の国であり、日本が馴れ合いの国である、というと言い過ぎだと思いますが、アメリカ人が幼少の頃から議論を活発に行う教育を受けてきていることも、一つの原因になっているように思います。ブログがもたらす、オープンな議論と自由なコミュニケーションというもの自体が多分に欧米的であり、日本の風土に馴染まない可能性もあります。

それはそれで良いと思います。日本は日本人なりの節度を以ってインターネットを楽しんでいますし、ブログやSNS、YouTubeなどのCGM的コンテンツに対する日本のユーザの参加度積極度を見れば、日本人はWeb 2.0的インターネット上の行動において、進歩的であるようにも思えます。しかしながら、企業は必ずしもそうとは言えません。口コミへの「期待」と口コミへの「恐怖」では口コミへの「恐怖」が口コミへの「期待」に勝っているということが言えそうです。

TVCMの効果が減退しインターネット広告が伸びていることからも窺い知れますが、今後ますますブロードキャスト型のマーケティングは力を弱め、しかし、One to Oneということもなかなか実現し辛いでしょうから、企業を取り巻くコミュニケーションの環境、特にブログやSNSなどWEB 2.0的コンテンツ、即ちブログスフィアが企業ブランドそのものに与える影響はますます強くなってくると考えられます。ジャーナリズムの公正さという都合より、ブロガー達による情熱を孕んだブログスフィアの方がより企業ブランドにとっても価値があるサポーティングパラグラフになる可能性があります。

kenjimori.com ≫ Archives ≫ Blogging humanizes product and services

Robert Scoble once humanized Microsoft. Jason Calacanis now humanizes AOL / NetScape. Then, Dell one2one is now trying to humanize Dell, which for once had commoditized and, thereby, de-humanized the entired PC market. I think it is a really big challenge.

企業にかかる鬱蒼とした闇のベールみたいなものが透明になると、ようやく顧客はその企業の顔を直に見つめる機会に恵まれるのかも知れません。

加藤 康祐 / 企画・設計

プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。Webデザインを入り口に、2005年よりフリーランスとしてのキャリアスタート。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート。ラグビーと料理、最近イラスト。

加藤康祐企画設計

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