2006/7/22

Web 2.0時代の収益モデルについて

Web 2.0の収益モデルへの一般的な理解は「広告」となっているのではないでしょうか。Google AdsenseOvertureなどが有名です。続いて楽天Yahoo! などの「物販」が続いてくるように思います。ただ、「広告」も「物販」も極めて広義の言葉で、実際は「広告」も「物販」もそれぞれ多様化複雑化していますし、更には「広告」と「物販」の組み合わせたサービスも出てきており、「広告」か「物販」でしかWebは儲けられないんだよなあ、と一概に括ってしまう考え方は勿体ないような気がしています。

例えばアフィリエイトというのは「紹介」によるユーザと販売店を結びつける仕組みで、考え方によっては「広告」と「物販」の組み合わせですが、むしろ「人材斡旋サービス」のビジネスモデルに近いような気がします。Aという個人とBという企業をCという企業のシステムを使ってマッチングさせ、CはBから斡旋マージンの収益を得るという仕組みから考えると、インターネットにおけるアフィリエイトと、人材斡旋サービスのビジネスモデルは酷似していることがわかります。

ドロップシッピングというサービスも出てきています。Tシャツショップを例に挙げるとわかりやすいと思います。Aという個人はBという企業のシステム上にTシャツのデザインとそれを売るためのショップをBのシステムを使って構築します。すると受発注管理、製造、在庫管理、顧客対応、配送などをBという企業が全て代行してくれ、Aは自分でTシャツの単価を設定することができ、Tシャツの売上から代行費用を差し引いた分を自分の収益として受け取ることができるという仕組みです。楽天やYahoo!などではシステムの利用料を代行業者にに支払い、物販におけるコストとリスク、つまり受発注管理、製造、在庫管理、顧客対応、配送などを自ら行わなければなりませんでしたが、Tシャツのドロップシッピングでは、Tシャツのデザインとそれを売るためのショップ構築さえすればよいので、労力という意味ではともかく、基本的にコストとリスクをほとんど抱えず、物販という事業をインターネット上で個人が行えることになります。

こういったアフィリエイトやドロップシッピングは個人が企業の売上に寄与するという意味でCGM(Consumer Generated Media)的手法と言えると思うのですが、一方でYouTubeMixiなど、膨大なユーザ数を抱えるサービスが、どういった形で収益をあげることが可能かどうかということが問題になっています。いやさ、YouTubeやMixiなどはユーザ数が圧倒的であるが故に、シンプルな「広告」や「物販」によって利益を上げられる可能性がありますが、まだ小さなしかし良質なWeb 2.0的サービスがどうやって利益をあげればよいのかというところが気になります。ここで僕が一つのポイントになってくると考えるのは、サービスがどこまでインターネット上でビジネスを完結しないで、リアルのマーケットへ影響を及ぼし、インターネット上のサービスを社会的にビジネスとして価値のあるものにできるかということです。

これはビジネスモデルの話というより現象の話になってしまいますが、Amazonを例にとって考えます。最近Web 2.0的な言葉として「ロングテール」が注目されています。

ロングテール – Wikipedia

ロングテールはオンライン小売店の一つであるAmazon.comを例に用いるとわかりやすい。一般的に、ある特定の分野における売り上げは、上位の20%が全体の80%を占めるというべき乗の法則(あるいは、20と80に限ってはいないが パレートの法則)に従っているとされている。今までのオフライン小売店では、在庫の制限などで、この上位20%に当たる商品を多く揃えなければならず、その他(80%)は軽視されることが多かった。しかし、Amazon.comなどのオンライン小売店は在庫や物流にかかるコストが従来の小売店と比べて遥かに少ないので、今まで見過ごされてきたこの80%をビジネス上に組み込むことが可能になり、そこからの売り上げを集積することにより、新たなビジネスモデルを生み出した。そのことを説明する時に使われるのがロングテールである。

このことにより息を吹き返した中小出版社、インディーズレーベルなどもあると聞きます。Amazonのサービスによりリアルのビジネスのニーズが掘り起こされたことになります。同じことが楽天などのショッピングサイトでも起こっていると考えることができるでしょう。また、こうしたネットショッピングが及ぼした別の影響もあります。それは個人宅配の増加です。お中元やお歳暮などの慣習が減っている時代にあって、ネットショッピングによる個人宅配の増加というのは隠れた特需かも知れません。

では話を戻して小さなWeb 2.0系企業はどうすれば良いのでしょうか。僕はAmazonの例で挙げた、「リアルのビジネスのニーズを掘り起こす」というところが新たな収益モデルのヒントになるのではないかと考えています。

例えば、フィットネスのサイトを作るとします。仮に「EmpowerYou.com」としましょう。自分の運動量や摂取したカロリーなどを記録しつつ、その情報を共有したりコメントをつけたりできるサービスです。「広告」として考えれば、そこにはフィットネスクラブやヨガ、場合によってはLOHASレストランや健康グッズなどの情報が掲載されるのではないかと思います。ただ、せっかくEmpowerYou.comにユーザ数を集められても、そう言った「広告」を掲載するだけでは旨みが少ないような気がします。

そこで考えられるのが、そのシステムをリアルのビジネスに対して営業するということです。通常、メンバー向けのサービスのシステムは企業がユーザ会員により高い利便性を提供し、結果ユーザ会員を囲い込むことに利用されるため、内部のシステムとして開発されるのが一般的だと思います。EmpowerYou.comのシステムに、エクササイズのプログラムやイベントがシームレスに連携する形にしないと、囲い込んだユーザが逃げちゃいますよ、という状況を作れたら、それはEmpowerYou.comのようなWeb 2.0系のサービスを開発をする企業にとって収益を上げる仕組みになるのではないかと思うのです。Web 2.0と言ってもやっていることは基本的にシステム開発だと思うので(梅田望夫氏の『ウェブ進化論』も技術畑の人が書いた本という印象がありますし)、そう言ったリアルで収益をあげてるビジネスの仕組み自体をネット上のWeb 2.0系サービスに一部として取り込んでしまうという考え方は面白いのではないかと考えています。

人が集まるということ=ビジネスチャンスですから、「意図した落としどころ」が見つかれば、まだまだ既存のビジネスの枠組みに縛られず、新しい収益モデルは考えられるのではないかと思っています。

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加藤 康祐 / 企画・設計

1980年1月12日生まれ。フリーランス歴15年。プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。学生時代にデザイン会社でWebデザインを経験。2005年よりフリーランスとしてキャリアスタート。これまでに個人から上場企業まで、100以上のクライアントとのプロジェクトを経験。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの編集・運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート等。趣味はラグビーと料理。Keep the head up, Bind tight & Stay low.

加藤康祐企画設計

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