2007/6/14

アイデアゴラ

Don Tapscott氏の近著『Wikinomics』はインターネットによって開かれた新たな世界を「Wiki+Economics=Wikinomics」という造語で表現しており、非常に刺激的な内容になっています。特に僕が気になったのは「Idea+Agora=Ideagora」の項で、ビジネスアイデアのマッチング市場が米国では機能し得ているということでした。

勿論、単純なビジネスアイデアを公募し、ユーザがそれに答えるということでは、なかなか機能し得ません。こういうことが有効的に機能しているのはやはりサイエンスやエンジニアリングの分野などで、専門性の高い企業が抱える問題に対して、社外の専門家やそれに近しい人が、具体的な回答を提起し、企業は有用な回答に報奨金を支払うという仕組みのようです。

InnoCentiveの事例が先述の『Wikinomics』には紹介されており、このInnoCentive、調べたところ日本向けサイトがありました。「Seeker(開発研究課題を持っている企業)」と「Solver(解決策を持っている科学者)」のマッチングを行うためのプラットフォームで、ベストソリューションに選ばれた科学者には、最高10万ドルの報奨金が与えられるというもの。

またP&Gでは研究開発に15億ドルを支出し、数多くの特許を誇るものの、実際に商品にその技術が使われているのは10%にも満たず、その特許のほとんどは社内に眠った状態だったそうです。CEOのAlan Lafley氏はこれを警鐘と捉え、自社が保有する特許を公開する方針を打ち出しました。取得後、5年が経過した特許や、3年以上P&G製品に使われた特許を、全て社外へのライセンス供与の対象としたのです。

こうしたP&Gの取り組みに利用されたアイデアゴラがYet2.comです。技術掲載企業のリストにはP&Gを始めとし、Samsung、Microsoft、Honeywellなど名だたる企業が並ぶ他、パナソニックや住友化学など日本企業の名前も見受けられます。

企業が企業内に自らのビジネスに必要な人材を全て囲い込むという時代ではないのです。むしろ、優秀な人材、アイデア、ノウハウは社外にこそあると考え、アイデアゴラと呼ばれる「知の市場」を活用し、コスト削減ではない、高品質のためのアウトソーシングを実現し始めています。

また企業の所有する人材、アイデア、ノウハウも包み隠しブラックボックスにするのではなく、むしろそれを商材と捉えオープンにし、アイデアゴラに乗せることで、組織の新陳代謝を活発にすると共に、より知財を有効に活用せしめようとする努力が見て取れます。

特に日本では今「団塊の世代」に注目が高まっています。日本経済を牽引し、様々なネットワークを抱え、独自の専門性を持つ団塊の世代が、知財を提供することで正当な報償を得られるアイデアゴラが知のプラットフォームとして日本でも一般化すれば、団塊の世代にもう一踏ん張りしてもらい、彼らの知を社会に還元するための、一つの解決策と成り得るのではないでしょうか。

企業にとっても優秀な人材を獲得するためのコスト、不確実性を鑑みれば、人材に投資するより解決策一つ一つへの投資ができるこうした仕組みは、コスト面でも品質面でもパフォーマンスに優れた仕組みとも考えられそうです。

そのためには日本の企業のオープン化は必須です。知らないうちに日本の優秀な人材が持つ革新的なアイデアが海外の企業に渡ってしまい、日本企業が競争力で海外のオープンな企業に負けてしまうということも近い将来起きかねません。

PCの使い方への質問などではこういう仕組みは普及していますが、もっと専門性が高くビジネスに密接で企業が欲している知が流通する仕組み、「アイデアゴラ」が日本でも一般化すればもっとエキサイティングな世の中になるような気がしています。

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