2007/5/25

僕が本を読み続ける理由

割と親から毎日本は読んで聞かせて育てたと伝え聞いていますが、どうも僕の小学生時代の心理というのを薄っすらと思い出すに、何かこの本に深い衝撃を受けたという「思い出の一冊」があるわけではなく、どちらかというと読書カードを書くことが義務付けられていたので、読書カードがたまることの達成感みたいなので本を読んでいた、というような記憶があります。

同世代で「僕よりも本を読む人」というのは割と近くに何人もいましたし、中学、高校と時を経るにつれて好きな作家とちょこちょこ出会うことで少しずつ読書量は増えましたが、自分を読書量が尋常じゃないと感じたことはないですし、多分客観的に見てもそうだと思います。本当に本をたくさん読むようになったのは仕事を始めてから、なんですよね。

僕が仕事を始めたのは大学1年の途中からですから、10年程前になります。エスカレーター式の進学に胡坐を書き、小器用なだけで渡り歩いてきた僕は、割と社会というものに触れて自分の常識の無さや教養の無さや知性の無さを痛感したように思います。それからです、本当の意味で活字中毒になったのは。

雑誌はデザイン誌、ファッション誌、経済誌、カルチャー誌ありとあらゆるものを読んでましたし、実用書から哲学書、文学書まで、とにかく追いつけ追い越せで日々活字のシャワーを浴びているというような過ごし方をしました。大学の頃は教授の専門分野の話を聞くよりも、仕事を通じて命題発見をして、それを様々なリソースを使って解いてみて、人に話して失敗して、もっともっと興味を深めていくというスパイラルが気持ち良かった。ですから、よっぽどタイムリーにその時抱えている命題に関連するトピックじゃないと、大学の教授の話に興味を抱かなかったです。

当然、活字と言えばインターネットもありました。デザイン会社とは言えネットの仕事の比重が多く、僕は「なんちゃってリサーチャー」的な立ち回り方もしていましたから、ネットで情報を集めて、ってことも多かったです。ただインターネットで人に語るに足る体系的な知識を得るって、結構手間も時間もかかるものなんですよね。今は色々な情報がインターネットに出て、かつ整理されるようになってきて、少し状況は変わったかも知れませんが。当時はWikipediaもdel.icio.usもありませんでしたから。

とまあとにかく「情報命」な生活をしてましたが、独立して大分そういう志向がゆるやかになりました。相変わらず情報収集は僕の生命線の一つだという認識はあるのですが(とりあえずあいつに聞いてみようって印象を持ってもらうことは大事なことだと思います)、あまりがっつくことなく情報に接するようになったように思います。後は確実に「書籍」に費やす時間が増えました。

以前、「人に対する興味」が重要だと書きましたが、それに加えて「その人がその作品に費やした時間という労力」を想起することも大事かなあと思うのですよね。全ての書籍がそうであるとは言えない部分も大きいですが、僕の印象だと基本的にはネット<雑誌<書籍というように著者がその作品に費やした労力は大きくなると思います。そう考えると「密度」はやはり書籍の方が濃いよなあと感じるのです。

作者にもよりますし、書籍にもよりますし、ネットと雑誌と書籍では「性格」が違うというところもあるのですが、今の僕の気分は同じ時間を費やすならネットより雑誌より書籍を読みたいなあというのが、おそらく大学時代の危機感に迫られた情報摂取の反動として、緩やかに穏やかにあるのだと思います。

今日はミヒャエル・エンデ氏の『モモ』をAmazonで発注しました。もう概要も覚えてませんが、美術や音楽を鑑賞したりする時にあるような、作品の周りに漂う清廉な空気と凛とした緊張感というのがある読書を僕は児童文学にも求めていますし、名作に裏切られたことはあまりありません。作者が執筆にかけた労力と、読者が読み解いてきた労力の総和が、年を経た「名作」というラベルの意味ですから。そこに意味性が見出せないのは、面白いとかつまらない以前の問題で、その著作に僕がかけた労力が足らないんじゃないかと思うことにしています。

そして読書のスタイル自体も「問題解決型」の読書ではなく「問題啓発型」の読書に変わってきたように思います。だからこそ、ビジネス書も小説も同じスタンスで読めます。正直、問題解決に関してはかなりインターネットは十分な回答を用意してくれるようになったと思います。ただ問題啓発、自分の内から何かを芽生えさせることに関しては、即効性はないですが、長い時間軸で見た時に意味があると思って読書を続けています。

勿論、今でも即時性の高いメディアに触れている時間は長いのですが、ずっとコンビニのふにゃふにゃ食パンばかりほうばっていると、たまにどっしりとしたフランスパンにかじりつきたくなるような、そんな感覚が僕が本を読み続ける理由なのだと思います。

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加藤 康祐 / 企画・設計

1980年1月12日生まれ。フリーランス歴15年。プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。学生時代にデザイン会社でWebデザインを経験。2005年よりフリーランスとしてキャリアスタート。これまでに個人から上場企業まで、100以上のクライアントとのプロジェクトを経験。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの編集・運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート等。趣味はラグビーと料理。Keep the head up, Bind tight & Stay low.

加藤康祐企画設計

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