2007/5/1

個人事業主の仕事は劇場型であるべき

一人芝居と言いますと真っ先に思い起こされるのがイッセー尾形氏の舞台です。ユーモアがあってウィットがあってほろ苦く物悲しいエッセンスもある、Woody Allen氏の映画のような、キャラメリゼのような世界観が魅力です。

さて、個人事業主の仕事というのは語感だけしてみれば一人芝居とは違い、経理上経営上の形態は一人でありつつも、その仕事の実はたくさんの人とのチームワークによって成り立ちます。至極当然のことですが、一人でできることは限られています。ですから個人事業=個人仕事ではないのです。

しかしながら、僕は個人事業主にあって、一人芝居をするイッセー尾形氏のような心持も必要だと思うのです。個人で仕事をしているからには常々評価の目に晒されます。クライアントからの評価は元より、一緒に仕事をしている人からだって、「この人と仕事を続けていて大丈夫だろうか」と常にチェックをもらいながら仕事を進めていくわけです。ですからクライアントのみならずプロジェクトチームのメンバーもその演技の聴衆であり観衆であり、自分は個として評価を下される立場にあることを自覚しておかなくてはならないと思います。

一期一会という言葉があります。個人事業主のワークスタイルここに集約されます。企業間の付き合いのように色々なしがらみがなく自由な付き合いができるという良い面を持つ一方で、いつでも「打ち切れる」という怖い側面を持っており、だから一つ一つの仕事で最善のパフォーマンスを発揮しなければならない、プロフェッショナリズムを持ち続けないといけないという、一期一会という言葉への執着が必要なのです。

ですから逆説的に考えれば個人事業主の仕事は閉鎖的であるより、自ら劇場型に開放された環境を演出するべきなのではないかと思います。劇場型というとすっかり「小泉元首相の政治」の代名詞として使われていますが、しかしながら、ああ言った劇場型の政治には周囲がより具体的に批評や評価を下しやすいという利点もあります。個人事業主は小泉元首相を目指せということではなく、ああいう演出をした上でも自分の仕事を遂行できるだけの気概を周囲に示せ、ということなのです。

個人事業主はそのバックボーンが特に事業開始時には希薄です。会社の看板で個人の信用が担保されるようなことはありませんから、あくまでも個人の看板が頼りになります。僕のような最初から大企業に属したことのない人間であればなおのこと。どこどこのOBという看板もありません。ですから周囲が自分のことを判断することができる材料は、できるだけ多く用意しておいた方が、人付き合いのスタンスとして親切だし丁寧だし、逆に個人事業主の仕事というのはそれをしなければ始まらないというところがあろうかと思います。

幸いにして今は様々なツールがあります。WEBサイト、メールマガジン、ブログ、SNSなどなど。そういった個人の仕事の有り様をインターネットというネットワークに乗せて、劇場型に演出してみることで、より仕事は楽しくもなるしエキサイティングにもなるし辛くもなるしシビアにもなります。ただそうした歓喜、悲哀に溢れていた方が貴方の舞台の観衆は、よりその演技に物語に引き込まれるものと思います。もっと静謐に、例えば小津安二郎氏の作品での笠智衆氏の演技のように厳かに、しかし真実を語るという演技もありでしょう。しかしやはりそれは多くの人に見られることを前提とした演技であり、それがゆえに一挙手一投足に細やかな気配りがなされるのです。

ですから、個人事業主の仕事は劇場型であるべきというのが僕の仮説なのです。

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