2021/4/28

オリンピックに思うこと

雑文である。最近、祖母が戦後第一回目の国体に陸上100mと走り幅跳びで福井から出場した記録というのを目にしました。91歳を迎えた祖母はオリンピックを観たら心躍るだろうか、そんなことを少し考えます。いわゆる認知症というのが少し進んでいるので、会話がほとんど成り立たず、世の変化のどこからどこまでを認識できているかも正直わからないところがあるのですが、それでも記憶を呼び覚ましたり、古い身体感覚を思い出したり、よしんば少し認知が回復したり、そんなことがあるかなあ、などと思っていました。

パンデミックが起こって1年以上が経過します。災害のフェイズを例えば「前兆期、急性期、休息期、回復期」みたいに分けて考えることができるけれども、状況的には今もなお急性期という感じがしていて、極めて「遅効性の災害」だと感じています。現在は第四波と言われているけれど、変異ウイルスが流行し、GWで越境移動は自粛要請が出ているものの、感染が今後全国に拡散されるおそれがあることを考えると、より広域の緊急事態宣言も想定されるし、状況は楽観視できないところにあるように思います。ワクチンはスケジュールの遅延やオペレーションの不備などありつつも供給される予定だけれど、ワクチンが感染予防というよりは、ウイルスが蔓延したい状態で発症を極力抑え込む確率論の話、と思うと、引き続きあまり気持ちの良い状態とは言えないように思います。

とは言え、例えば、池江璃花子さんの復帰には、疾病からの社会復帰にこの3年ほど取り組んで来た僕としては感動したと言えるし、緊急事態宣言のたびにラグビーができなくなって悔しい思いをするのも、生活や暮らしにスポーツが必要ということを実感します。ジョギングとかトレーニングやヨガとかじゃ駄目かと問われると、良いんだけど、やっぱり駄目なんですよね。競技、を勝利を目的としてする、というところの魅力というのは、やはりあって、ただ、我慢というか、1ヶ月待てないか、2ヶ月待てないか、と問われれば、状況が状況ですし、まだ10年20年ラグビーも続けようと思えば続けられると思いますから、長い時間軸で見ると、41歳の1ヶ月は今しかないんだ、みたいな気持ちにはならないかなとは思いますね。

オリンピックを例えば世界で同時多発的に、開催地を分散して行うのはどうだろうか。World Olympicという感じで、各国が抱えるリスクやコストを分散させる形で。オリンピックの限界みたいなものはあまり感じてないのだけれど、ホスト国持ち回り制のオリンピック開催には少し限界も感じていて、よくよく考えるとオリンピックのホスト国になれるような国ってやっぱり限られていて大国だし、政治や利権の話もあるし、インターネットやVRも発達したし、他の世界大会と変わらなくなってしまうじゃないかという懸案もあるけれど、短期間でギュギュッとオリンピックという冠で、あらゆる競技が世界中でトップを決める大会を開けば、それはそれでエキサイティングですよね。みたいなことに、例えば1年前に舵を切れなかっただろうか。できなかったろうな。

日本では、オリンピックが善悪の問題になってしまった感じがしていて、「オリンピック」というイベントに子どもの頃、こんなに排他的な感情を抱くことはなかったし、日本の選手が、しばしばマンガのヒーロー・ヒロインがオリンピックを舞台に活躍するのに心躍らせて、まあなんか純朴に輝かしい舞台として見て育てたなあという気がして、別にオリンピックを目指していたわけじゃないけれど、自分もスポーツに打ち込めた気がします。一方で、この数年で日本人はオリンピックを善悪の対象にしてしまったなあ、という気がしていて、パンデミックがなければとも思うけれども、改めて振り返ると、オリンピックのショービジネス化みたいな問題はあるかも知れないけれど、世界最高峰の競技会ということ自体は変わってないことを考えると、どうやら悪いのはオリンピックではなく日本人、という気もしますね。開催すればそれが払拭される、という類のものでもない気がするし。

オリンピックには色々論点あって、政治とか、ジェンダーとか、お金とか、建築とか、枚挙に暇がないけれど、そんなに全般的に感心があるわけじゃなくて、何となくイメージとして、日本人、オリンピック悪者にしちゃったんじゃないかなあ、みたいな気がして、なんか雰囲気の話を書きました。開催されるなら実家のテレビで祖母と100mと走り幅跳び観たいですけどね、やっぱり。

加藤 康祐 / 企画・設計

プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。Webデザインを入り口に、2005年よりフリーランスとしてのキャリアスタート。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート。ラグビーと料理、最近イラスト。

加藤康祐企画設計

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