2020/12/29

危機とデザイン、病気とデザイン – コロナ禍で考えたこと

年の瀬ですね。静かな年末年始を過ごしましょうとのことですが、例年、僕の年末年始って思い起こせばとても静かでして、まあいつも通りと言えばいつも通りなのかもなあとも思います。ただ、一年を振り返ればやはりいつも通りとはなかなかいかない一年だった、そう思わざるを得ません。コロナ禍は色々な価値観を変えたというようなことを、色々なニュース番組のキャスターが振り返りで言っていたけれど、改めて、僕の価値観に変化はあったのだろうか、ということを少し考えてみました。

実際は大きな価値観の変化というより、一つこの一年で興味関心が増したな、というのが改めて、「病気」ということでした。自分の話としては統合失調症のことや、そこから派生して成人病を予防しないといけないということ、身内にも認知症の話やら闘病の話やらあるし、やはり歳を重ねて来たこともあり仲間内でも体調を崩して療養する人はいるし、社会情勢的にはコロナです。精神疾患を中心とした病気に関する読書も増えましたし、公衆衛生とかPTSDとか社会と病気の関わりみたいなことを考える機会も増えました。健康を考えることと病気を考えることは表裏一体ですし、自分も療養期間のようなものがまだ続いていることもあり、日常的にお医者さんとの付き合いもありますし、気がつけば、病気、病人、病院、医療、福祉、介護、そんなことに興味が向いた時期だったように思います。

それに加えて2021年3月11日、東日本大震災から10年というのは、WHOが新型コロナウイルス感染症のパンデミックを宣言してから1年ということになるようです。思い起こせば、東日本大震災を皮切りに、僕個人の仕事や生活も随分様変わりしたと言えて、ユレッジやカナエールのような社会性の高いプロジェクトに関わる機会も増えました。これって大きな意味での危機対応的プロジェクトだと言えて、災害とか社会的養護とか、パブリックとかパーソナルな違いはあるけれど、危機に対してどうアプローチしていくか、それを設計して実践するようなプロジェクトであったように思います。

広義で言えば危機とデザイン、狭義で言えば病気とデザイン、そういうことに今関心が芽生えてきている気がして、コロナ禍は広義にも狭義にも適用できるわけだけれども、インクルージョンとかダイバーシティみたいなことだけでなく、クライシスとかインシデントとかいうものに対して、人や社会がどういう設計をしていくのか、ということへの関心が改めて自分の中心に来た、ということでしょうか。危機を起点とした、一つの帰結に精神疾患というのはあって、ただそれは終着点ではなく、社会復帰があり、病気とともに仕事と生活があり、人生を全うするところまでが目標で、After Coronaというけど、広義のAfter Crisis / Incidentの設計、みたいな興味なのかなという気がします。そういう意味では働き方のチューニングも、仕事と病気のデザインだし、暮らし方の充実は、生活と病気のデザインです。というところで考えると、しばらく自分の面倒きちんと見てれば良い気もしているのですが。なんか日々発見はあるので。

コロナ禍において、僕の働き方や生き方というのは社会において決してエッセンシャルなものではないなという気がして、だって大変な人たち、本当に大変そうじゃないですか。そういう意味では僕は安全圏にいて、制約はありつつも、比較的穏やかな時間の流れの中で仕事をして来たわけで、ただ、企画とか設計とか、デザインとかITとか、自分の仕事をやっていく上で携えるテーマみたいなものとして、危機とデザインとか、病気とデザインとか、少し言語化された状態で持っておいた方が良い気がしたんですよね。組織とデザインとか、プロジェクトとデザイン、みたいなことと同様に、危機とデザインとか、病気とデザインみたいなこともあるという。実際、社会的養護の分野にも病気に関係することはあるし、災害対応の分野にも病気に関係することはあって、今までそこにあったけれど、あまり強く目を向けて来なかった気もしていて、ただ自分が改めて精神疾患の患者として当事者化した時に、それを活かした視点というのも大事な気がしたんですよね。気付くことや抑えることも変わってくるだろうし。

他にも色々価値観は変わったのだと思っていて、幸せとか、愛とか、家族とか、お金とか、しかしこれは2000年代から2010年代にかけて「緩やかな衰退」みたいな言葉で予見されていた価値観の変化のような気もしていて、経済の浮沈に関わらず、社会に様々な制約や限界が生まれた時に、そういう価値観の変化は起こり得るのだな、という感じがしたし、ある意味での「グレート・リセット」なのかも知れないなという気もしています。そんな中で、もう一度、何に「興味」を持つのか、自分の今の興味が確認できたのは良いことなのかなあ。今後、仕事の中で関わっていくようなことも含めて、その辺、考えていきたいなという気がしています。

ある意味、これが僕の震災からコロナ禍に続く文脈なのかもなあ、という気もしています。

加藤 康祐 / 企画・設計

プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。Webデザインを入り口に、2005年よりフリーランスとしてのキャリアスタート。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート。ラグビーと料理、最近イラスト。

加藤康祐企画設計

是非、フォローしてください!
Twitter / Instagram

(2012-10-5)
売り上げランキング: 14,705
100円