2020/11/28

120%の力を出すこと – あるいは、戸愚呂弟と僕

昔の話を蒸し返してもあまり意味がないことなのだが、新しい知識は過去の経験を整理するのに役に立つ、ということがあって、ふと思い出したことがあります。最近は割とあけっぴろげに統合失調症という病気の話をしていて、まあもう2回目体調崩した時は仕事も回ってたしSNSもあったし隠しようもないことだよなというのもあるんだけれど、そもそも最初に体調を崩した22歳の時に、僕は統合失調症という病気の存在を知らなかったように思います。名前くらいは聞いたことがあったかも知れないし、もしかしたら違う名前で認識していたかも知れないけれど、そういうことに構えていたりすることは一切なかったと記憶しています。

今、思うと、僕が明確に症状を認識できたのは(振り返ってのことだけれど)、就職活動の最終面接の時のことでした。最終的に志望先が3社くらいになり、一番行きたい志望先の最終面接、僕は少し涙を浮かべながら、これから仕事をする会社への思いを語ったのを覚えています。その面接を以て、晴れて内定先が決まり、長い就職活動に終止符を打てました。しかし、その日の僕は志望先に向かう道すがら、周囲の人がほとんど全員泣いているように見えていました(そんなに多くの人に話しているエピソードではない気もするが、これ)。道ゆく人が、自分の噂話をしているように聞こえていた。おかしいでしょう。内定が決まったその日、僕は本当は入院しないといけなかったのかも知れない。今思うと、そんな風にも思えます。

何度も書いているが学生時代はすごく仕事をしていて、徹夜もしょっちゅうで健康にも気を遣わず、ほぼそのままの流れで就職活動に突入しました。それは緊張の連続で、ただ結果はついて来ていて、段階を進むごとに興奮は高まり、うーんだから、内定が決まる頃には高まり過ぎちゃったんですね。僕の場合はよく聞くような、面接官にプレッシャーかけられたとか、内定先が決まらず不安に苛まれるということはなく、ただ、どんどん短期間で自分を戦闘モードに作り込んでいって、鉛筆の芯を研ぐような、極度の緊張状態に自分を自分で追い込んでいったのを覚えています。

実は前回体調崩した時にも似たようなことがあって、新しいプロジェクトの立ち上げにかなり熱中して、段階的に集中力や緊張を高めていった、ということがありました。今、思えば、就職活動で面接を重ねる経験に似ていた。その過程の中で幻聴や妄想と言った横槍が入って来て、20代の時も、30代の時も、症状が出た後は急性期の混沌があり、さんざん混乱した挙げ句、疲弊し切った状態で、入院、ということになっています。急性期の間には、本当に色々なことが物理的にも精神的にもあって起こって、それを整理するのはそれはそれで大変なことなのだけれど、起点にあったのは、これまで以上にパフォーマンスを発揮して、是が非でも結果を出そうという、強い熱量だったように思います。

つまり幽遊白書で言うところの(古い)戸愚呂弟。。。120%を出そうとして、120%がともすれば出せていて、ただ、自分が持たなかったという。まあ色々な物語にある、アイコニックなエピソードだよなあ(使い古されたエピソードとも言える)。

これ、自分が持たなくなって、なんか朽ち果てるだけなんだったらまだ良いのだが、実際は徐々に急性期に向かって人に攻撃的になったり、妄想が先走ったり、幻聴に苛まれたりするので、冷静に考えると迷惑だし、実際そうなんだけど、危険ですよね。何かに情熱を傾けたり、熱量を注いだり、というのはとても大事なことだし、やり切ることは尊いのだが、その過程で詰めすぎた結果、これまで大きな失敗をしている。ただ、30代もユレッジやったりカナエールのチケット販売やったり、かなり詰めていた時期はあって、結果の達成までうまくいったケースもあると。この辺はなかなか難しい問題だと思いますよね。

なんか使命感みたいなものを背負い過ぎたケース、なんだよなあ。

まあただ、そういう状態に自分を詰めるのを避けなければいけない、というのは何となく、この2つの失敗でわかります。のんべんだらりのらりくらりと日々のことをこなせていれば一番それで良い気もするのだけれど、そういう負けられない局面みたいなのはあって、ただ、病気になっちゃうっていうのは、勝ちに行ったようで大負けしているので、よくよく気をつけないといけない。

そういう意味では「極度の緊張状態に神経が耐え切れなくなった」みたいな、昔から言ってる話が正解なのだろうと思うのだけれども、もう良い年だし、120%のパフォーマンスを発揮して達成するのでなく、80%くらいのパフォーマンスをコンスタントに発揮しながら、時間をかけたり、アプローチを変えたり、工夫をしたり、みたいなことで、目的を達成できるみたいなことを目指さないといけないよなあ、みたいなことは言えそうです。

そう考えると落ち着くところは一般論なんですけどね。戸愚呂弟、好きなんだけど、反面教師にしなくてはw。

加藤 康祐 / 企画・設計

プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。Webデザインを入り口に、2005年よりフリーランスとしてのキャリアスタート。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート。ラグビーと料理、最近イラスト。

加藤康祐企画設計

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