2020/9/29

アフター・コロナとイノベーション – クライシス・レスポンスと廃れの補完

ふと昔のインタビューを思い出したのですが、以前、ユレッジで児玉龍彦さんにしたインタビューです。ここで、クライシス・レスポンスという話をしている。

【加藤】イノベーションって、先程の車などのお話も出ていましたけど、色々な捉え方あると思うのですが、一つの側面はクライシス・レスポンス(危機対応)というような、危機に直面した時に新しいものを生み出さなければいけないという話だと思います。

【児玉】今のクライシス・レスポンスという言葉には本質的な意味があると思っています。というのは、例えば自動車などを考えた時に、製品には色々な要素がある。それで、それらの要素のどれが本当に重要な要素かというのはよく見えない。価格とか、機能性とか、ブレーキが良いとか、色々あります。だけれど、ある程度、社会の中の存在としての自動車ということになると、環境への負荷が大きいか小さいかというのは、成長の限界になる。それがクライシス、四日市の大気汚染や東京の光科学スモッグなどの問題に直面した時に、日頃たくさんの物事があって、どれが本質かわかってない要素が見えてくる。お米の検査機の場合も、単純に検出感度を上げるという問題ではなく、福島へ持って行くと周辺の放射線量が高いわけですよね。そういうところに機械を持って行くと、感度が良すぎる機械ではノイズばかりになってしまいます。だから、シグナルを上げるよりノイズを減らす技術が、あの機械では鍵になっているのです。シグナルを取る技術というのは今いくらでもあるわけです。専門家がそれはできないよというのは、至るところに放射線がある環境で、細かなものを見たらバックグラウンドばかり拾っちゃうよねという心配。PETで1mmの人間の癌を探すように、米でもシグナルは十分取れます。けれども、今まで見えにくくて大事だったのは、ノイズを下げなければならないということで、そこに開発していた技術が役に立ったのです。だから、シグナルが取れれば良いとか、コストが安ければ良いとか、色々なポイントがあるけれど、ノイズを下げる技術が細かなシグナルを取る時には大事で、それができたために、周りが汚染されている環境でも検査できるようにまとめあげることができたことが一つの味噌であり、それがイノベーションなのです。

コロナ禍、というのは視点を変えれば、こうした危機対応のイノベーションがたくさん生まれている時節と言えそうです。対面で会えないからZoom、外食できないからデリバリー。もともと用意されていたプロダクトやサービスでありつつも、これらの利用頻度が飛躍的に増大したことで、社会の姿は変わりましたし、後継のビジネスも生まれていますし、UBER Eatsなんかは働き口に困った人の大事なライフラインにもなっていますね。

流行り廃れという言葉がありますが、言わばこうしたイノベーションは「廃れ」の補完であると言えます。廃れ、まさしく廃業と重なる言葉なわけだけれど、社会には守っていかないといけない価値や機能があって、廃れを補完するイノベーションというのが社会の後退を食い留める担保になっている。新しいプロダクトやサービスを生み出すことのキーワードは一昔前は「Disrupt」だったわけですけど、危機を受けて、気づかぬうちに「Resilient」にシフトして来ているのかも知れません。

この辺、色々ヒントがある気がしていて、アフター・コロナがどうなるか、という議論があるけれど、何となく今までになかったイシューだらけになるのかもな、とも思います。ペシミスティックな考え方だけれど、でも近い未来に表出してくる社会課題を予め想定して、解決策を設計するというアプローチは、こうした社会変化が大きい時代には案外有効な思考法かも知れません。「Disrupt」は「先の先」、だった感じがしますが、「Resilient」は「後の先」ということでしょうか。安心して未来に一度絶望すること、そこから始めるビジネスアイデアというのがあるかもな、とも思います。

SDGsという大きな目標もあるけれど、流行りを想定するでなく、廃れを想定して、そこから新しい流行りを作っていく、今回、コロナ禍で急ピッチで進められたことだけれど、中長期的な社会変化に対して考えても、そこにはイノベーションの種があるのかなあという気がします。経済も雇用も環境も福祉も、きっと1年後、2年後、これまでと違う状況に直面するでしょう。そこにはこれまでにないイシューがあって、それはある意味で社会の廃れなわけだけれども、それを事前に想定して解決するための方策を用意をしておけば、結果として社会は後退しないとも言えます。

「制約を受け入れるのがデザイン」、「イシューから始めよ」、そんな言葉を思い起こすと、ここからの数年間というのは、新しいイノベーションがたくさん生まれる、新しいイノベーションを生み出さなければいけない、そういう時節なのかも知れません。まあ、耐え忍ぶだけじゃ、なかなか次のアクションも始まらないですしね。そう考えると、この半年くらいで社会がコロナ禍で努力したこと、というのは、中長期的な社会のイノベーションの活性化に伸長できるのかも知れないなあ、などとも思うのですよね。

加藤 康祐 / 企画・設計

1980年1月12日生まれ。フリーランス歴15年。プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。学生時代にデザイン会社でWebデザインを経験。2005年よりフリーランスとしてキャリアスタート。これまでに個人から上場企業まで、100以上のクライアントとのプロジェクトを経験。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの編集・運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート等。趣味はラグビーと料理。Keep the head up, Bind tight & Stay low.

加藤康祐企画設計

是非、フォローしてください!
Twitter / Instagram

(2012-10-5)
売り上げランキング: 14,705
100円