2020/7/16

点と線から面の検査へ – クラスターとエピセンター

最近あまりコロナの話題書いてなかったですが、今日たまたまテレビをバチバチやっていたら、国会中継がやっており見覚えのあるお顔が。東大の児玉龍彦さんが参考人として質疑に答えておられました。僕は以前、児玉先生にユレッジで取材させていただいたことがあるのですが、物腰穏やかに整然とお話される方です。けれども、今日お話する様子は、しばしば語気を強め、危機を訴えておられるように感じました。

今日の資料はWebに掲載されていたのですが、「エピセンター」という聞き慣れない言葉がありました。日本語では「震源地」というような意味合いになるようです。これまでは人から人へ感染する、ないし人から集団へ感染する「クラスター」という言葉が使われて来たわけだけれど、特定のエリアで感染が顕著に流行しているような状態、これをエピセンターとして、大規模PCR検査によって面での制圧を図る、そのためには民間の総力も結集して検査体制を整える必要がある、というお話がありました(先述の資料にはそのための「見積もり」もあります)。

ざっくり、コロナウイルスの感染がある点で「発生している」という状態から、地域的に「流行している」というような変化だと言えて、クラスター対策は点、そこから繋がる線に着目していたわけだけれど、エピセンター対策は感染が流行した面を捉える考え方なのかなと思いました。それであるがゆえにこれまで以上に大規模なPCR検査を実施可能にする必要があって、それを以てローラー作戦的にエリアを検査し、結果を受けて、隔離・治療などの対応を行っていくということでしょう。

エピセンターの中には様々なものを包含し得て、生活している人もいれば、仕事している人もいるだろうし、ただ検査をするというだけでなく、政治的にもどのような対応をしていくべきか、検討される必要がありそうです。点が面になってしまうというのは、時系列で感染の察知と対応が、感染の流行と伝播に追いつかなくなっていて、だから、面で見ないということなのかな、と理解しました。残念ながら東京の感染者数は増えていて、それをエリアで捉えても新宿を中心に周辺に広がっており、クラスターを追っていくのも限界があるのだろうという感じがします。

今ちょうど、点の繋がりの調査から、面の調査に切り替えるかどうか、という方針のジャッジをしなければならない、という提示、ということでしょうか。

東京で地域的流行が発生しているとした時に、地方では地域的流行までそれが育たないようにする、だから地方にエピセンターを作らないようにする(クラスターで潰す)、っていうのが次の課題なのかなという気もします。そうするとやはり東京はフェイズ一歩進んでるということでしょう。この委員会のあとGoToトラベルキャンペーンの検討が行われたわけだけれども、限定的な実施に留まるのは、適切な判断と感じます。

最初はエピセンターという言葉も耳慣れず、どういうことかなと思ったのだけれど、点と線を追跡していく調査から、地域的流行が起こっているエリアを面で調査して、流行地域と非流行地域を区分けしていくようなやり方が本当に必要なのだとすると、もしかしたらこれまで学習して来た考え方を、僕らもちょっと切り替えないといけないタイミングに来ているのかも知れません。

正直、児玉先生がおっしゃってたことが正しいのか正しくないのか、今、方法論を切り替えることが妥当なのか妥当でないのか、というのは専門的な知見がないので確かなことはとても言えないのですが、一部地域で集中的に感染者数が増えていたり陽性率が高まっているのは事実ですし、地域的に、ないし、環境的に、感染の拡がりを捉えていかないと、クラスターの追跡だけでは限界があるフェイズに来てしまっている、そういう警鐘が専門家によって鳴らされた、ということは事実なのではないでしょうか。

一方で、一部業種を除いては自主申告ベースに近かった検査が、面での検査に切り替わることで、倫理的にというか、生理的にというか、今まで感じなかったことを感じる人も出てくるかも知れず、考え方が正しく理解されることも必要でしょう。

重症者数がまだ低く留まっている一方、これから重症者数が自ずと増えてくると見込む専門家の声も聞こえて来ます。より大きな波に対応できる、対応した考え方であるようにも思えて、第二波が医療を逼迫させるような状況に備えて、ここが大事な判断の分水嶺になってくるのかも知れない、そんな風にも感じました。

ここを日本はアップデートできるのか、どうなのか。

加藤 康祐 / 企画・設計

プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。Webデザインを入り口に、2005年よりフリーランスとしてのキャリアスタート。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート。ラグビーと料理、最近イラスト。

加藤康祐企画設計

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