2020/5/3

Resilience New Deal – 『経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策』 David Stuckler / Sanjay Basu

少し前にこんな記事を書きました。

雇用を守る、は正しいのか? | Life is Prototyping

結局、レジリエンス、という話にはなって来るのだが、現状を維持することだけでなく、不況の結果、起きてくるであろうことに対して、考えていく必要はあって、「景気は大丈夫?」の先には「雇用は大丈夫?」があって、「雇用は大丈夫?」の先には「社会復帰は大丈夫?」があって、雇用を守るという一枚岩を堅持するだけでなく、社会が恒常性を取り戻すための連環を支えていく、みたいな考え方が必要なのかなという気がします。一方で、人一人が仕事を失って、また、仕事を得る、ってとてもパワーが要ることだから、なるべく景気対策で食い止める、ということもわかる。なので、金融経済政策と社会福祉政策セットで見ていく必要がある気がしていて、商品券とか、休業手当とか、そういうレベル感ではない話が今後必要になって来る気もしますよね。

そんな折にTwitterで話題になってるのを見かけ、興味を持って手に取ったのがこの本です。「経済政策で人は死ぬか?」、現在の新型コロナウイルスの流行を踏まえても、このGWも続く自粛のことなどを鑑みつつ、生命か経済か、病気で命を失う人もいれば、倒産や失業で命を失う人もいる、というような問いかけを見かけることも多いですが、この本は公衆衛生学の観点から、こうしたことに筋道をつけたり、交通整理をしてくれるものだなと感じました。

1920年の世界恐慌に始まり、旧ソ連の崩壊、サブプライム危機、ギリシア、アジア、アイスランドなどなど、様々な国々での危機や不況に対して、経済政策を緊縮策と刺激策に分け、その時々で選択された経済政策が、その後、死亡率や自殺率、感染症の流行など、公衆衛生、人々の健康にどのように影響を与えたのか、また経済の復興にどのように影響を与えたのか、ということが述べられています。結論としては刺激策、社会保護(保障)政策に注力したケースが、アルコール中毒、自殺、精神疾患などの増加を防ぎ、景気の回復にも寄与している、という立場で、不況を受けたコストカットの動きが、社会に悪影響を及ぼすことを示唆する内容でした。福祉寄り、とも言えるのか。

考え方的にも、例えば、一般的に不況があると失業が増え自殺率は高まる、ということが言われており、これは概ね事実であろうとも思うのですが、統計的に見ると、不況を受けても社会の死亡率が下がっているケースがあり、自殺率は高まっているのだが、不況を受けて交通事故による死亡者数が減り、全体の死亡率を下げた(更には臓器移植者の不足を生んだ)なんてエピソードがあって、統計的に公衆衛生を見ていく視点がこれまであまりなかったなと気付かされました。勿論、結果的に全体の死亡率が低くなるなら、自殺率が高まっていいという話ではないですし、スウェーデンなどではALMPという失業者の再就職支援の仕組みが充実しているため、大きな不況を経験しても自殺率が低く抑えられた実績なども紹介されています。

この本はサブプライム以降、コロナ以前に書かれた、2014年の本ですが、現在の日本に当てはめてみると、公衆衛生上の課題=感染症の流行がまずあって、自粛などに伴うグローバルな経済危機、不況が到来していて、それを受けて、公衆衛生上の更なる課題(死亡率や自殺率の増加、病気や精神疾患や依存症、医療制度や保険制度の混乱、新しい感染症の流行など)が発生してくる可能性がある、というようなステータスかなあと思います。今、政府も現金給付などの施策を検討しているけれども、これは消極的政策と言われるもので、今後、積極的政策が図られていく必要性はやはりあるのではないか、という気がします。医療制度や保険制度の拡充、再就職支援の仕組みの充実などですね。最近ではしばしばベーシック・インカムなども話題になります。特に日本は失業率が高い状態に慣れている国ではないですし、自然災害など、その他の厄災も多い国で、レジリエンスという言葉に立ち返るけれども、社会の危機に対する強靭さ、というのを再考していかなければならない気がしています。

まとめ

というわけで、あまり具体的な経済政策の話まで切り込めてないのですが、平成から令和にかけて、自然災害や感染症に悩まされて来た経緯を踏まえつつ、不況における経済政策の選択によって、大きく公衆衛生「Public Health」は損なわれる、と考えると、なんか日本もResilience New Dealというか、国家の危機対応力や回復力や自己治癒力みたいなものに注力した政策や投資に、本気で取り組んでいった方が良い気もしています。とは言え、僕自身、日本の今のレベル感すら正確に把握できてないのだよな、とも思うのだけれど、本書は過去の様々な危機を統計的に分析し、そこで行われた政策決定が、その後どのように社会に影響を及ぼしたかということに示唆的で、日本も今そういう判断の分水嶺に立たされているのは確かなのだろうという気がします。今、読むべき本、とか言うと、押し付けがましいですが、僕はとても参考になったし、是非お薦めしたい本でした。

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加藤 康祐 / 企画・設計

1980年1月12日生まれ。フリーランス歴15年。プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。学生時代にデザイン会社でWebデザインを経験。2005年よりフリーランスとしてキャリアスタート。これまでに個人から上場企業まで、100以上のクライアントとのプロジェクトを経験。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの編集・運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート等。趣味はラグビーと料理。Keep the head up, Bind tight & Stay low.

加藤康祐企画設計

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