2007/4/20

京都の約束

とあるメーリングリストで「京都の約束プロジェクト」という活動を知りました。Albert Gore氏の『不都合な真実』で再び環境問題はクローズアップされている気運がありますが、それでもやっぱり知らないことは多いです。

京都の約束プロジェクトとはこういうプロジェクトだそうです。

「京都の約束プロジェクトは、地球温暖化を止めたい、そのための国内対策の制度をつくって欲しいというあなたの “お願い” を国会に届けるプロジェクトです」

確かに実行力のある法整備がなされないと、環境問題も結局机上の論議に終わってしまいます。とは言え、具体的に世の中がどうなるか僕はイメージもできていませんでした。そんな中、京都の約束プロジェクトに携わっている方が、メーリングリストにとてもよくまとめられたコメントを投げて下さいました。今回、その著者に掲載許可を取り、コメントをここで全文掲載させていただくことにしました。

温暖化によって、一番問題視されているのは、気候変動が激しくなることです。具体的には、洪水や干ばつが多発し、かつ、それぞれの規模が非常に大きなものとなる、ということです。英語では、地球温暖化問題はGlobal WarmingというよりClimate Change(気候変動)と言われることのほうが多くなっています。今でも、地域によって雨の多い地域、少ない地域というのはありますが、その差がますます激しくなって、飢餓人口が大きく広がり、また、衛生状態の悪化から、感染症(マラリアなど)も広がりやすくなるのです。
もちろん、海面上昇も大きな問題です。グリーンランドや南極の氷が解けることで海面が上昇すれば、多くの都市は海岸沿いにありますから、何の対策も施されなければ、かなりの面積が海面下に沈みます。また、沈まないにしても、台風やハリケーンなどによる高潮の影響を受けやすくなります。堤防を強化する、移住する、といった対策コストも莫大なものになります。
また、紛争の多発も懸念されています。イギリスでは、気候安全保障(Climate Security)が国家の重要課題として取り上げられています。異常気象による影響は、生活基盤が脆弱で収入の多くを農業・漁業等に頼っている貧困層にでますから、間違いなく貧困の拡大につながります。水資源の枯渇も深刻です。日本では、水の問題はせいぜい夏の水不足程度ですから分かりにくいのですが、アフリカなど多くの地域では、水資源の取り合いで紛争が多発しています。気候変動は水資源の安定性に大きく影響しますから、さらに紛争が頻発する、といわれていますし、実際、そうなり始めています。また、バングラディシュ(人口:1億3千万人)のように国民の多くが海面ぎりぎりの地域に住んでいる地域では、必然的に移住を余儀なくされますが、1億人規模の人口が近隣のインドやミャンマーに移住をすることを想像してみてください。各国、宗教も民族も異なりますから、紛争の大きな火種になりかねません。他にもそういう地域は多々あります。
このような問題は、一見、日本とは関係ないようにも見えますが、紛争が多発すれば、テロのリスクも大きくなるといわれています。また、ODAの必要性も増しますから、財政的な負担も深刻です。気候変動によって、将来の世界のGDPに与える影響は5%~20%程度となるという有名なスターンレポートも出ていますから、経済・景気にも大きな影響を与えます。第二次世界大戦と世界恐慌をあわせたものよりも、大きなものとなりうる、といわれています。
農業や漁業に与える影響も重要です。日本は食糧自給率が非常に低いですから、食料の枯渇が進んだとき、これだけの人口を支えるための食料をどう確保するか、問題となります。また、日本の農家や漁業関係者は、作物の入れ替えを余儀なくされるかもしれません。しかし、そんなに簡単に、耕作物の変更はできません。土の問題、インフラの問題など、多々あります。対応できないのです。また、生態系の破壊は、生物多様性の破壊につながります。
そして、一番怖いのは、あるポイントを超えると、予想もつかないような気候システムの破壊が起こるのでは?ということです。Point of no Return、もう戻ることができないポイントがある、という考え方です。
地球というのは、太陽からの距離や地軸、CO2濃度も含めた大気のバランス等、さまざまな条件が微妙なバランスで組み合わさって、奇跡的に生命が誕生・存続できる状況となっています。逆に言えば、そのバランスが崩れてしまったとき、生命が存続できる星ではなくなりかねないとも言えます。大気中のCO2濃度は、地球の長い歴史の中で、ある一定水準に収束してきたのですが、産業革命以降、化石燃料を燃やし続けてきたことで、一気にその濃度が上昇しています。温暖化によって、北極の氷が解けて海面による太陽光の吸収が進んだり、シベリアの永久凍土が解けてメタンガスが発散される、またCO2の重要な吸収源であったサンゴが死滅する、といった形で、温暖化が加速する、という予測もありますし、実際にそうなっているという研究報告もあります。世界の気候システムを安定的に保っている海洋大循環が停止すると予測する報告もたくさんあります。
もちろん、ある程度の温暖化によって、高緯度地域では耕作可能域が広がるといったプラス面の影響もあります。しかし、温暖化による影響をトータルで見れば、マイナス面の影響のほうが圧倒的に大きいという点については、国際的にほぼ合意されています。将来の影響が非常に大きなものになることはほぼ間違いない、その影響の大きさについては不確実性があるが、それだけの不確実性を許容することはできない、という考え方もEU中心に広がりつつあります。
日本の政府や経済界には、個々としては、温暖化問題への危機意識については、広がりつつあります。しかし、そのためのアクションはどうかというと、まったくといっていいほどに、遅れています。その原因は、産業構造の転換へ向けた抵抗など、いろいろあるのですが、結局は政治的判断ができていないことが一番の問題です。しかし、もう政治的判断をしなければいけないタイミングに来ているのです。来年から京都議定書の削減目標期間が始まります。欧米はさまざまな制度を打ち出し始めています。このままだと、完全に乗り遅れます。温暖化対策≒経済システムを変えることですから、日本経済に不利なルールになることも十分にありえます。

加藤 康祐 / 企画・設計

プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。Webデザインを入り口に、2005年よりフリーランスとしてのキャリアスタート。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート。ラグビーと料理、最近イラスト。

加藤康祐企画設計

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