2020/2/16

美しいもの

男が美しい、なんて言葉を使うと、なかなか歯に衣着せぬ感じもするのですが、商売柄なのか、趣味なのか、性格なのか、しばしば「美しい」ということを考えなければならないなあ、という気がします。そして、美しいという感覚とか、審美眼みたいなものとか、嗜好とかいうことも年々変化をして来ていて、20代のものとも、30代のものとも違う、40代のものに美しいものがなりつつあるな、そんな気もしています。

デザインは美しいの一つの象徴かも知れないけれど、勿論、アートだってそうだし、僕の好きな工芸や民藝にもあるし、システムにだってコードにだって美しさはあるし、文章とか言葉選びとか、立ち居振る舞いに至るまで、色々なところに美しさを考える機会があって、ただ、今、40代の入り口に感じる美しさ、みたいなものは一旦言語化しておいても良いのかなあと思いました。

時間を感じるもの

時間を美しいと感じると言うとなかなか詩的なのだけれど、経年変化とか、使い込んだ味とか、長く使えるとか、じっくり付き合えるとか、そういうことに美しさを感じることが多いです。それはだから、美術館に置いてあるものでも、100円ショップに並んでいるものでも良くて、それは両極だけれども、「所有」を通して味わえるもの、経過観察ができるもの、経年変化を楽しめるもの、を美しいと感じるのではないかと思います。

よく使うもの

世に機能美と装飾美という対比がありますが。僕は機能も好きだけど装飾も好きで、どちらを取るかという話自体がそもそもナンセンスだと思うのですが、最近感じるのは、よく使うものほど、美しく感じるな、という当たり前のことでした。例えばエコバッグ代わりに使っている布の袋とか、毎日背負ってるバックパックとか、寒い冬を助けてくれるブランケットとか、出掛ける時最低限持つ財布とかキーホルダーとか、勿論、何を選ぶかというセレクションは大事なのだけれど、それを「使う」ということこそ愛着を生んで、愛着がものの本来の美しさをよりビビッドにするというような、揺り戻しがあるようにも思います。

環境に優しいもの

最後に。これね、意外と最近気になってるんです、環境に優しいということ。物欲華やかかりし頃は、新しいものを買っては、次に新しいものを買って、ということで欲求を満たしていたところがあって、ただ、環境に優しいブランドのプロダクトを選ぶ、とかいうよりは、今あるものを「長持ち」させることに関心が移ったかな、という感じがしています。Allbirdsとかあるけど、家に既に十分にストックあるじゃん、という。気に入ったものをリペアして使うとか、今あるものの新しい使い方を発見したり、より良い使い方を見つけたり。ミニマムな暮らし、というわけでもなく、なんかモノを大事にしよう、みたいな感じになった。長い年月の使用に耐えるもの、というのが環境に優しいものだろうということと、長い年月をうまく使うこと、という使い手のスキルも、環境への優しさになってくる気がして、そういう風に使えることが美しい、という気がします。

まとめ

だから、美しいということの話というよりは、物欲の変化、というか、ものへの執着の変化の話、なのかなあという気もするのですが、ものとどう付き合うか、ということがなんか真っ当になってきたかなあ、という感覚があるのかな。美しいものがある、それを手に入れるという世界観から、ものを使う、使っていく、中で美しさを認めていく、みたいなことに変わってくるのかなあと。

物欲の話だけじゃなくて、仕事もそんな感じになっていくとええなあとも思いますね。

加藤 康祐 / 企画・設計

プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。Webデザインを入り口に、2005年よりフリーランスとしてのキャリアスタート。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート。ラグビーと料理、最近イラスト。

加藤康祐企画設計

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