2020/1/3

『ソフトウェア・ファースト あらゆるビジネスを一変させる最強戦略』 及川卓也

以前、外資系企業でプロダクトマネージャーとして働く友人に、茶飲み話で「なんか最近、日本の割とレガシーな事業会社もUXデザイナーの採用とか積極的にやってるみたいで、世の中変わってくるのかねえ」みたいな話をしたら「まあでも、そういうレガシーな会社の今の体質変わるまで、待ってられない感じもするよねえ」みたいな答えが帰って来ました。この辺、結構、DXに対する僕らの世代のリアルだったのかなあ、などとこの本を読み終えて、ふと数ヶ月前の会話を思い起こしました。

『ソフトウェア・ファースト』面白い本でした。僕がプロダクト開発に関わって勉強したようなことは全て書いてあるなあという感じがしたし、後半部分は僕がご一緒して来たプロダクト開発のエンジニア組織の人たちの仕事を反芻しながら読み進めました。読んでるうちに、20代の頃、梅田望夫さんの『ウェブ進化論』を読んだ時の感覚を思い出しました。あの時の高揚感というか、これからの世の中の変化への期待感というか、そこから時代が始まっていく感じというか、なんか展望が拓ける読書だった気がしていて、「巨人の肩の上に立つ」という言葉があるけれど、今の若い子たちは(まあ僕もまだようやく40歳というところだが)ここ(『ソフトウェア・ファースト』な世界)をスタート地点にできるのかあ、と思うと何だか羨ましい感じもしました。ということで、僕は新社会人にお薦めしたいな、ってまず思いました。『学問のすすめ』じゃないけれど、良質な啓蒙書だとも思う。

ここからは個人的に考えたことを少々。

ソフトウェア開発の内製化

色々、論点はあったのですが、まずは「手の内化」事業会社での「ソフトウェア開発の内製化」というトピックが気になりました。エンジニアリングだけじゃなくて、デザインでもWebデザイン会社はなくなる、という話は数年来あって、各企業が組織の中にエンジニアリング機能と同じようにデザイン機能を持って、アジャイルな開発やDevOpsを実現し事業を推進していく時代になるという。個人的にも完全な受託型の仕事のやり方よりは、伴走型、チームに組み込んでもらうやり方の方が将来性はあるだろう、また、そうしないと顧客の要求に応えていけなくなっていくだろう、という気はしています。ネットサービスを展開する会社では当たり前ですが、今後、これまで社内にそういう機能を持たなかった事業会社もそういうことを志向すると思うと、なかなか人材の争奪戦は厳しいのだろうなと感じます。いわゆる、デザインエンジニアみたいな人材って、UXデザインが出て来て数年経ちますが、需要と供給のバランスが取れてる感じはしないですね。本書にはエンジニア組織の作り方や採用方法についても解説がありますが、マネージャーの方々は並行してデザインについて考えてみても良いかも知れません。

デジタルとフィジカル、日本の可能性

その上で、ソフトウェアはあくまでもツール、ただし事業をただ効率化するだけのものじゃなく、強烈に事業を推進していくもの、とした上でですが、フィジカルとの組み合わせに日本の可能性があるような示唆も本書ではありました。去年、「ところで、2020年代はどうなるのか?」という記事を書いてて、2020年代重要になってくるの「社会保障とインフラじゃないか」みたいなことを思ったのだけど、やはり医療や車は本書でも例示されていたけれど、そういう意味では、及川さんが大企業を変革する、DXするのに未来の可能性を感じた、というのは納得がいく感じがしました。フィジカルの付帯品としてデジタルがあるのではなく、フィジカルとデジタル、双方を合わせてサービスとして再設計し開発し運用していく、ということなのかなあという気がします。

日本の中小企業に何ができるか?

さて、フォーカスということだと、僕の主なクライアントは中小企業で、必ずしも今回想定されている大企業じゃないよね、という時に何ができるかということですが。しかし、初めの一歩としてはやはり本書にヒントがあって、まずエンジニアリング組織を作れるようなエンジニアを1人採用する、とかはクライアントにとってもDXの入り口なのかなと思いました。僕が付き合ってきたような中小企業の多くはフィジカルな部分に強みを持って、大企業以上にITの専門分野は外注ということが多く、これまでは僕もそうしたアウトソーシングの委託先の一つとして仕事をして来たわけだけれども、クライアントのビジネスによっては、社内にそういった機能を包含する、DXを通じて、スピードを加速する、ということもあるのかな、という気がしました。

まとめ

他にもプロダクトマネージャーを軸にしたプロダクトの開発の話など、勉強になること多くて、面白かったです。決して、オプティミスティックな話だけでなくて、「おまえら、梅田さん読んだ後、15年何やってたの?」と若干叱られているような気持ちにもなるのですが、このタイミングに読めて良かったなとも思います。重ね重ねですが、その後のキャリア観のバックボーンになるような本でもありますので、これから社会人になるような若い世代にもお薦めです。

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加藤 康祐 / 企画・設計

1980年1月12日生まれ。1998年よりデザイン会社のパートタイムアシスタントとしてWeb制作を経験。2005年に独立、フリーランスとして、企業、個人、NPO、独立行政法人など、様々な領域でのITやデザインによるサポート業務に携わる。2018年、加藤康祐企画設計を開業。これまでの経験を活かし、より広い視野でクライアントの問題解決に取り組み、クライアントと一緒になって新しい価値創出をし、平静な社会の実現を目指す。

加藤康祐企画設計

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