
Fund RaisingからFan Raisingへ – Social GoodとPromotion
「この声がもっと大きければ」。僕が東日本大震災が発生した時、痛烈に実感していたことです。2011年3月11日、父は職場、母は横浜駅、弟は福岡におり、父方の祖母と2人実家にいた僕は、状況を鑑み「駅情報検索」というサイトを制作しました。交通麻痺による社会不安の増大から、APIを用いて指定した駅とその路線に関するTwitter投稿、及び、安否情報を表示するというサービスでした。着眼点は良かったと思うのですが、当時はおそらくそれほど使われず、ただこのサービス、その後、台風や大雪などの自然災害の際に「役に立ったよ」「助かった」という声を身内から多くもらうようになります。「備えあれば憂いなし」と言いますが、もしもの時に必要なのは「備え」であることを実感する出来事でした。
Social Impactという言葉をご存知でしょうか。社会的影響力というような意味です。2012年、僕は株式会社イーティーという会社を起ち上げます。この起業の裏テーマがSocial Impactの増大でした。九州の農業をサポートしたり、東北の被災地を訪れたり、また時代の空気としても「Social Design」という言葉が流布されていく中で、社会と相対したい、そんな想いが強くなります。
ETはプロジェクトに恵まれます。1つは国の研究機関、独立行政法人防災科学技術研究所のサポートを受けた、日本の「揺れやすさ」をテーマにしたサイト「ユレッジ」、もう一つは、進学率が低く中退率が高い児童養護施設の退所者のための奨学金支援プログラム「カナエール」でした。この両プロジェクトのETに課せられたミッションが「声を大きくする」でした。防災の意識を次のフェイズに進めること、親を頼れない子どもたちに支援を集めること。Social SectorにおけるETのレゾンデートルはこれらの「プロモーション」にあったという自負も生まれました。ビジネスサイドでのSNSマーケティングのリーディングカンパニー、アライドアーキテクツさんとの2年半に及ぶ業務委託契約とのシナジーも確実にあったことを付け加えておきます。ETは6年で役割を終えて解散する結論に至りましたが、この6年で身につけたものはとても大きい、そう思います。
これからのことですが。6年やってみて少し不安になることもありました。それは企業や団体の社会をより良くしようという声が、適切な人にきちんと届いていない、届けるためのリソースが適切に割かれていない、そういうことがあるのではないかなあということです。ユレッジやカナエールを経験して、声を大きくするための仕掛け、例えば広告運用やSNSマーケティングは、Social Impactの増大にとても有用だと感じました。ただ金集め、人集めをするのではなく、文化を創り、ファンを育て、賛同者のコミットメントを高めていく働きかけが必要です。さしずめ、Fund RaisingからFan Raisingへ。そういうシフトが必要な時節になって来ている、そう感じます。そのために、デザインやテクノロジーにはまだまだ果たすべき役割がある、そういうことじゃないかなって思うんですよね。
非営利団体のプロモーションのAdvisoryということを考えた時に、ETでの実績は糧になると思いますし、ETはNPOサポート自体を業務範囲にしていた営利企業です。僕が個人事業主に戻るという時に、その機能を切り出して法人化し、支援や場合によっては寄付を受けられる状態を作るというのは、オプションの1つとしてあり得るなと。そんな朧げなVisionを思い描いています。仲間とも共闘しやすくなる。
きっと楽しい仕事にできるんじゃないか、そんな風に考えています。

加藤 康祐 / 企画・設計
プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。Webデザインを入り口に、2005年よりフリーランスとしてのキャリアスタート。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート。ラグビーと料理、最近イラスト。
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フリーランスとして働き始めるってどういうことだったのか?フリーランスとして働くってどういうことなのか?フリーランスが目指すことってなんなのか?5年間の自分の経験から書きました。(2010年執筆)