
社会起業家と当事者主体とソーシャル・インパクト
僕らの世代ってどういう世代かというと、失われた世代とか、ロスジェネとか言われますが、一方で社会起業家世代、ということもできるんじゃないかあなあと思います。同世代にもフロレーンスの駒崎さんとかカタリバの今村さんとかいます(お二人とも、一度、顔合わせたことあるくらいの面識しかないけど)。この10〜15年くらい、社会起業家とか、ソーシャルビジネスとか、ソーシャルデザインとかいうことが、割と広く知られるようになって来ました。スタートアップマインドを持った人が、ソーシャルセクターで活躍をするようになった。
さてこれから、ということを少し考えてみたいと思います。
困っている人を助ける、社会起業家
すごいわかりやすくいうと、「困っている人を助ける」ってことにこれまで主眼が置かれて回って来たんだろうと思うんですよね。支援。ビジネスのセンスや強いモチベーションがある人が、ファンディングしたり、サービスやプロジェクトの仕組みを設計したり、ボランティアを募ったり、それを運営する組織を作ったりして、活性化されて来た。特にNPOの領域はこの色が強くて、実際に助けられた、助かった人、たくさんいるのではないかと思います。駒崎さんの本のタイトルとかがわかりやすいですよね。
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気になり始めた、当事者主体
次に。本来、サポートされる側が主体を持って活動しているものも増えて来た気がします。例えば、LGBTの領域なんかは、社会活動家のような人が多かったり、団体も当事者主体で社会に対して訴えていくケースも多く見受けるように思います。また最近知った取り組みだと、soarに掲載されていたU2plusのような、実際の患者さんが起点になって立ち上がったようなサービスもあります。
うつ病患者が手を取り合ったら起業もできた。うつ病オンラインコミュニティ「U2plus」創業者 東藤泰宏さんの選んだ道
他にも色々なケースがあって、当事者主体で世の中が変わっていくようなことも少し進み始めた気がします。
その上での、ソーシャル・インパクト
その上で。少し当事者主体とソーシャル・インパクトみたいなことを考えても良いのかもなあと(あ、今更ですが、ここで言ってる当事者主体ってのは、当事者の気持ちに寄り添うとか、当事者のために、ということではないです、当事者が主体になって行動するということ)。こないだ新宿を歩いていたら、土偶の表紙のBig Issueをホームレスのおじさんが販売していて、土偶気になったので、購入することにしました。少しお話したのですが、天気良いので多めに仕入れたんで、って言ってて、ああ、なんかやらされてる感じじゃないんだな、これって気付き。ホームレスの方が路上でBig Issueを販売する、ってこと自体が強い社会へのメッセージになっていて、支援だけでなく当事者が主体を持って活動していることにもなっている。やっぱり良い仕組みなのだろうなと思いました。
ではこれ少し関わりのある社会的養護の領域でどうかというと。ちょっと考えちゃいますよね。相手が複雑な経験を抱えているだけでなく、子ども、ないし、若いから。これから社会人になろうとしている子たちの当事者活動って、これから仕事覚えなきゃで、頑張りどころという時に、ちょっと難しい感じがするし(メディアなどで意見を発信している若い世代の当事者もいる)、やり方は慎重に考えなければいけない。一方で、子どもだから、若いから、ということで、当事者が声を上げづらいという状況は、他の社会問題に比べて社会から隠れてしまいやすい、ということも言えそうです。ここ数年、子どもの貧困はキーワードになっているけど、当事者主体とソーシャル・インパクト、なかなか結びつきづらい。
じゃあどうするの?っていう時に、ここに工夫がいるんだと思うんですよね。そういう意味ではカナエールは良かったし、社会起業家、NPOのプロジェクトとして、当事者の声を届ける仕組みには、価値があったのかなあと。まだまだ工夫の余地があるから、この領域でもそういうことに有効な次なる手立てが生まれていくと良いなと思います。なんかこの辺の話って、最後にカナエールの東京・横浜の実行委員長だった植村が話したメッセージに近しい気がしています。当事者の声を受け取った人が動くという。
まとめ
ようは今回書きたかったのは、「社会起業家」✕「当事者主体」→「ソーシャル・インパクト」みたいなことがこれからやれていくと良いのではないかなということだったんですが、ピンと来るでしょうか。個別支援、対人支援の限界、特にNPOが独自にやる限界ってあって、どこかのタイミングで大きな仕組みや制度設計の中に取り込まれていかないといけないと思うのだけど、そのための変化に当事者の主体性は必要なんだろうと思うのですよね。
最近、そんなこと考えています。

加藤 康祐 / 企画・設計
プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。Webデザインを入り口に、2005年よりフリーランスとしてのキャリアスタート。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート。ラグビーと料理、最近イラスト。
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フリーランスとして働き始めるってどういうことだったのか?フリーランスとして働くってどういうことなのか?フリーランスが目指すことってなんなのか?5年間の自分の経験から書きました。(2010年執筆)