
描きながら考えるを取り戻す – 或いは、ああでもないこうでもないを取り戻す – Prototypingの話
以前、こんなニュースを読みました。レオナルド・ダ・ヴィンチのノートが公開されたというニュース。なんだかそれはすごいことなんじゃないか、と僕も興奮しながら覗きました。
「レオナルド・ダ・ヴィンチ」のノート、大英図書館がネット上で公開
Turning the Pages
「万能人」なんて言われますが、ありとあらゆることを考え抜いた、レオナルド・ダ・ヴィンチの時代、にはパソコンなかったですよね。今日はそういう話をしようと思います。
僕、実は絵を描くの苦手で、UXデザイナーということで仕事させていただいていますが、美術大学や専門学校を出ておらず、デッサンの訓練も受けてなければ、美術の勉強もしていません。義務教育レベル。昔からアートとかデザインは関心高かったですが、絵を描くことに関しては才能ないなあと思っています。ただ、やっぱりプランナーとか、UXデザイナー、みたいな仕事をしようと思うと絵を描けることってとても大事だと思うんですよね。「描く」ことが仕事だから。
さて。
今日、自分の今年のノートを見返していて、こんなスケッチを見かけました。
何描いてあるかよくわかんない感じではありますが。これデジタル化した時に、こうなっています。
解説記事はこちら。
子どもたちと三角形 – 社会の見え方の話 : kosukekato.com : the idea espresso
ここ数年、僕はアナログ回帰していて、iPadでも代用できなくはないかも知れないですが、やはり紙のノートに落ち着いています。ミーティングのメモは大抵紙のノートに取りますし、モニタの前にいても、ノートとペンで考えてる時間多いです。
若い頃教わったことで、2つ覚えていることがあります。
1つ目はできるだけ大きな紙に描くこと。
2つ目は描いた線は消さないこと。
この2つ、シンプルですが、とても大事なんじゃないかなあと思います。アナログで描くことは、特に思考という意味で自由度が高いのと、線を引きながら、図形を描きながら、それがどういう意味を持つか考える、手を動かしながら考えることができて、これはパワーポイントやキーノートで図形を選んで配置するのとは隔絶の感がある。そこに働く思考のボリュームが全然違う。
描きながら考える、ってプランニングやUXデザインにおいてクリティカルな道具だと思うんですよね。これを放棄してはいけないと思うのです。ああでもないこうでもない、という試行錯誤、そのプロセスが残るのは、ファイルのバージョン管理というより、そこに引かれた線の軌跡の方が生々しいというか。そこで反芻できるものも多いです。
そう言えば先日、小熊千佳子さんというお知り合いのデザイナーが、僕が以前ネットにアップした図を原案に、ご自身が教鞭を取られるロゴデザインの講義でリファインして使ってくださいました(事前にご相談をいただいて、丁寧に使ってくださいました、ありがとうございます!)。
これの原案になってるUXのファネルという図があります。
解説記事はこちら。
デザインとファネル – コラボレーションの中のデザイン : kosukekato.com : the idea espresso
これのスケッチが見つかれば一番良かったんですが、明らかにこれも描く試みをしていて、だから、順を追って動かせる絵になってるんですよね。動くのがこちら。
最近、やはり絵で考える、絵を描く、描いて生み出す、描きながら育てる、みたいなことがすごい重要で、そのためには、ああでもないこうでもない、つまりScrap & Buildが大事だよなあって思うんです。綺麗に絵を描ける、精緻化できるには絵を描く技術が要るんだけど、僕がやってるのは絵を描きながら考える、つまり、Prototypingなんですね。これやっぱりデジタルに向かないと思うんです。
レオナルド・ダ・ヴィンチに戻ると、ああいう叡智って言うのは、人間が考えることに最大限工数をかけてその能力が増幅された結果、みたいなことなんじゃないかなあという気がしていて、もうすごい描いてますよね。描き溜められることによって、どんどんそれが積み重なっていく。なんかそういうことが改めて必要なんじゃないかなあと最近感じています。
なので、描きながら考えるを取り戻す、或いは、ああでもないこうでもないを取り戻す、みたいなことって大事なんじゃないかなあと思います。
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フリーランスとして働き始めるってどういうことだったのか?フリーランスとして働くってどういうことなのか?フリーランスが目指すことってなんなのか?5年間の自分の経験から書きました。(2010年執筆)