
デザイン思考とその適用 – 「もう一つの”かぞく”のかたち〜社会的養育や里親について考えよう」に行って来た
soarのイベント「もう一つの”かぞく”のかたち〜社会的養育や里親について考えよう」に行って来ました。soarのイベントに参加するのは初めてのこと。会場は5年前にWebサイト構築の仕事で関わらせていただいたSHIBAURA HOUSE。社会的養育がテーマということで、カナエールやB4Sの仲間の顔もチラホラ見かけ。とても勉強になるイベントでした。
僕の感想はTogetterにまとめました。
#soar_event 「もう一つの”かぞく”のかたち〜社会的養育や里親について考えようゲスト:sos子どもの村japan、よしおかゆうみさん」に行った感想 – Togetterまとめ
ブログに何書こうかなと思ったんですけど、特にデザイン、という僕の専門領域に近いところで少し詰めて書いてみるのが面白いのではないかと思いました。気になったのは田北雅裕さん。SOS子どもの村JAPANのコミュニケーション部ディレクターとのことで、本業は九州大学の先生なんだそうです。イベント後、少しお話させていただいたら、福岡の共通のお知り合いもチラホラ。
祝・SOS子どもの村JAPANの広報誌『かぞく』創刊! 編集長の田北雅裕さんに聞く「子どもと家族の問題を解決するために、デザインができること」 | greenz.jp | ほしい未来は、つくろう。
漢字の「家族」ではなく、平仮名の「かぞく」。血縁に依る家族の難しさに対して、もう少し緩やかな関係性としての「かぞく」。ここの広報誌のコンセプト・メイキングとても良いなと思いました。他にもクラウドファンディングで資金を募りリニューアルした「福岡市こども相談センター えがお館」のお話が興味深かった。
福岡から「児童相談所」のイメージを一新する試みを進めたい! 九州大学の田北雅裕さんがクラウドファンディングを経て、行政にデザインを寄付するまで | greenz.jp | ほしい未来は、つくろう。
特にお話をうかがっていてIA(Information Architecture)というか、困っている人たちに本当に必要な情報をきちんと用意しておいて、それを適切に受け渡す、頼みを受け付けられるようにするみたいなことをちゃんとやってる方だな、という印象があって、こういうのはなかなか福祉の分野に必要だけどできてなかったことなのではないかなあと思います。この辺りは事例として3keysのMexというサービスのアプローチに近しいのかなと。
モノを作る以外にも、会議にプロジェクターを導入したり、現場での情報入力にWebサービスを導入したり(サイボウズのkintoneの話をされてました)、「デザインをインストールしていく」という言い方をされていたけど、この辺はデザイン思考の実践だなって感じました。凝り固まったものを、揉みほぐして、円滑になるように交通整理して血流を良くする、みたいなことはデザイン、ないし、設計の重要な役割で、行政とか福祉とか、そういう分野で取り組まれてることすごいなと。以前、UXデザイナーが、ITの世界だけじゃなく、例えば、イベントとか、プロダクトとか、政策とか、そういうところに入っていけると面白いんじゃないかなと思ったりしてたのですが、そんな感じじゃないかなあと。
もう一つ。僕がすごいなと思ったのが何をコンバージョンに置いているかということだったのです。「里親を増やすためにやっている」ということを明示的におっしゃっていて。色々な施策がそこに向かっている。よくカナエールのプロモーションで、自分の時間を割いて、5,000円を支払って、会場に来場してもらい、社会的養護下にある子どもたちの声を実際に聞いてもらい、子どもたちのことを知ってもらう、ってすごくハードルの高いことだ、ということを言っていたけれども、「里親を増やす」って、もっと大変そうですよね。それすごいな、と思ったんですね、とてもシンプルに。多分、「今月は何人、里親が増えた」とかそういうことやってるんじゃないかな(憶測だけども)。これ勿論、すごいなって思ったということは優劣の話ではなくて、カナエールというプロジェクト全体で見ると突き詰めれば「進学率を増やし、中退率を減らす」ということだったと思っていて、スピーチコンテストが終わっても、奨学金の給付と見守り支援は今も続いています。
里親への移行の是非とか、国の方針のこととか、里親家庭がそれぞれ孤立すると新しい問題も色々起こり得るという指摘もあるはずなのだけど、だから、SOS子どもの村JAPANという「モデル」があって、そこで作ったきちんとしたやり方を以って、社会を説得していく、そんなやり方なんじゃないかなあと思いました。増やせばいいってものではない、ってよくよくわかりながら、増やそうとしてるんじゃないかな、そんな感じがしました。
デザインが果たせることで、課題感として残るのは、特に先に挙げた事例のようなものはしばしば「引きのデザイン」なんだろうと思います。困っている人たちに対してきちんと準備しておくことは重要、一方で、「すいません、ちょっと話聞いてもらえませんか?」から始まる「押しのデザイン」の工夫ってソーシャルアクションが大きく広がっていくには必要で、そこには多分、メディアとか、広告とか、プロモーションみたいなことも必要なんじゃないかなと感じました。なので、今回のsoarさんとのイベントとか、連載のシリーズとか良いのではないかなとも感じ。
親と暮らせないこの子たちに、安心できる家庭をつくってあげたい。里親の田原正則さんと子どもたちが「子どもの村福岡」で過ごす日々 | soar(ソア)
色々考えさせられるイベントでした。こういった分野でのデザインの可能性も改めて感じた、そんな学びもあったように思います。

加藤 康祐 / 企画・設計
プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。Webデザインを入り口に、2005年よりフリーランスとしてのキャリアスタート。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート。ラグビーと料理、最近イラスト。
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フリーランスとして働き始めるってどういうことだったのか?フリーランスとして働くってどういうことなのか?フリーランスが目指すことってなんなのか?5年間の自分の経験から書きました。(2010年執筆)