2016/3/21

『サイロ・エフェクト 高度専門化社会の罠』 Gillian Tett

それ諸悪の根源だよ、って思うタイトルの本を見かけたので、読んでみました。日本語では「タコツボ化」って言われる方がわかりやすいのか。高度な分業によって成り立つ世の中にあって、いかに縦割りや細分化がイノベーションやリスクの感知や組織の成長の妨げになるか、みたいなことが書いてあります。著者がファイナンシャル・タイムズの元編集長で、専攻が社会人類学だった、というのも面白い。組織の中に育ってしまったサイロを、部族と捉えるアプローチとか(本書の前段で人類学に関する講釈もあります)。

サイロ・エフェクト 高度専門化社会の罠 (文春e-book)
文藝春秋 (2016-02-24)
売り上げランキング: 237

ニューヨーク市、ソニー(ほんとこの手の話ではやり玉に挙げられてしまうけれど)やUBSなどサイロ化に直面してしまった組織のこと、逆にFacebookやクリーブランド・クリニックがサイロ化しない専門家集団としての組織として取り上げられています。

事例として面白かったのはニューヨーク市の話で、データの収集と検討に特化したチームが、様々な部門にヒアリングしながら、火災が起きやすい物件の抽出を、建築基準が強化される以前に建ったこと、貧困地区にあること、所有者が住宅ローンを滞納していること、過去に害獣・害虫の苦情が多く寄せられていること、という通常火災リスクを考えられる時に参照されないようなデータベースをピックアップして、その因果関係を示すことで状況を改善し火災リスクの削減を実現したという話。横串でもなくて、串で1つずつ、プチプチ穴開けてってった結果、って感じですよね。

あとソニーとFacebookの対比って決定的だと思うのだけど(Appleの話も出て来るのだけど)、やっぱり組織の中で職域侵害を犯さないように条約結ぶみたいな仕事の作り方ってよくないのだろうなあと思うのですよね。他部門で行われていることに想像力が働かなくなったり、自部門で捻出できるソリューションで完結させようとしたり。そういいうことって往々にして起こってしまうので、このサイロ化を防ぐ取り組みってのは行われ続けなければいけない。

でまあ、諸悪の根源、と書いた理由なのですが、フリーランスで仕事をする時に、だからアウトサイダーがインサイダーとして組織に関わるということで、奇しくも本書ではそれを人類学的アプローチとしてるので割と符合するのだけれど、サイロ化が進んでいる組織だと、窓口の人の話の及ぶ範囲で話が止まってしまって、重要なことが問題と認識されないことも多い。窓口の人と仕事はやるわけだが、本質的にはクライアントとETの取り引きの窓口がそこにあるというだけのことなので、企業間取引が最良の状態になるために、ボトムアップというか、現場から働きかけていかないといけないことはままあります。ただそういうことやっていかないと良い仕事にならないなと思うし、積極的に窓口の人に組織の中で動いてもらえるようにアイデアやツールを用意するというのも外部の人間の仕事だったりするわけで。

後は組織設計や意思決定の仕組みを作る時に、人類学的に言うと「分類を作る」ということになるわけだけど、その時に起こり得る現場の苛立ちとか機能不全とか萎縮とか協同性の欠落とかを、きちんと設計できているかという問題はありますよね。そういうことは当然起こり得るわけだから、組織がこうであるべき、だけでなくて、設計をボトムアップで見た時の想定をきちんと考えておかなければいけない。その辺り、これからの組織には大事なことなんじゃないかなあと思います。

これ多分、組織が持つ一番の問題で、でも多くの組織がこれをベースに成り立ってることであるような気もしていて、だからこそ外部から関わる時にはなるべく中立に、自由な状態を維持するってのが、結果的に木を見て森を見ずなプロジェクトを生まないことになるんではないかなあと思います。中小企業とかでも十分に考えるべきトピックだと思いますね、サイロ。

サイロ・エフェクト 高度専門化社会の罠 (文春e-book)
文藝春秋 (2016-02-24)
売り上げランキング: 237
ひとり仕事: フリーランスという働き方
(2012-10-5)
売り上げランキング: 14,705
100円