2015/12/29

メディアとアドテクとUX – その先にあるコンバージョン

最近、特に思うのだけど、コンバージョンってとても大事だなあと思っています。どうしてもコンテキストの先にコンバージョンが置けないと、ふわっとした話になってしまう感じがしていて、例えば物販とか採用とか集客とか、コンバージョンが明確になると一本筋が通ってが色々考えやすくなるなという感じがしています。

下半期、少し時間をとって考えていたのだけれど、寄附ってコンバージョンは、なかなか興味深いと思っています。「寄附のUX」という言い方をしていたのだけれども。

寄附って皆さんご存知の通り、差し迫った機能的要請ってほとんどの人にとってあまりないわけです。洗剤が必要とか、夕食何食べようというような。ただ寄附ということのハードルは年々下がっていて、それはツールの発達によるところも大きいのだけれど、じゃあ何が大事かというと「動機付け」ということになります。動機付けって何かと言えば、コンバージョンに至るためのコンテキストですよね。文脈。

こないだ編集やってる知人にも話していたのだけれど、この情報が無料で手に入れられる時代にあって、そのコンテキストの真価って「ユーザに何らかの負担を強いる」ことがないと問われないと思うのですよね。ただ、じゃあ物販ですねって単純な話でもなくて、例えばエシカル消費的なこととか、DIY的なこととか、アップサイクルとか、社会的な意義を物販のコンバージョンに置けるような対象も世の中に出て来ているわけで、お金とモノの交換があって(イベントとかでも良いけど)、そこに社会的な意味性が含蓄されるみたいなことは、逆説的だけどコンテキストの重要さを拡張しているのではないかと思っています。

メディア

まずはわかりやすいところでメディアから。メディアに取り上げられるということは、プロジェクトを知ってもらう上で、理解しやすい方法論だと思います。ただ、メディアに取り上げられると言っても、それが統計的な問題の取り上げなのか、具体的なアクションについてなのか、はたまたドキュメンタリーの形を取っているのかなど様々ですし、テレビ、ラジオ、雑誌、Webメディアなど様々です。例えばテレビだと放送がCMに入った時にスマホからのWebサイトへのアクセスがリアルタイムに増える、なんてことが起こります。一方でスムーズな導線が引きやすいのはWebメディア。ただ、どのメディア、どの時間帯、どの番組の影響力が大きい、ということより、コンテキストに拠るなという感じがホントしています(勿論、そもそもの母数の違いはあるにせよ)。以前、防災のサイト、ユレッジで「身に詰まされる経験」の話を鈴木さんにしていただいているけれど、「人は正しいデータを見せたとしても合理的に動くとは限らない」ように、そこには行動を促す喚起のコンテキストが必要で、メディアのコンテキストがいかに適切な喚起をして、コンバージョンに有効に道筋を提示できるか、ということは方法論が時代によって移り変わっても重要です。物語の質、ということ。

アドテク

次にちょっとわかりづらくなるのだけど、アドテク。ここもコンバージョンを考えていく上での重要なポイントだと思います。例えば、Facebookではカスタムオーディエンスとか類似オーディエンスという機能があります。別に秘密に行われることではなくて、ちゃんとFacebookのWebサイトに掲載されているもので、すごいざっくり言うと、自分が持っている顧客リストとか、その顧客リストと類似性の高いユーザ群に対して、Facebookの広告の仕組みを使ってリーチできるということ。仮に社会問題に関心が高く、寄付を通じた問題解決への関与に意欲的な人達のデータがあれば、その人たちの特性に近い人たちにリーチできる可能性があることになります。これはテクノロジーによるコンテキストと言えると考えていて、今、寄付に関して活用されているかということはわからないのだけれど、将来的に取り入れられてもおかしくないことかなと思っています。

UX

最後にUX。ここまで寄付のUXについて、寄付ボタンの配置とか、ランディングのA/Bテストとかじゃないことを書いて来たと思うのだけど(そういうことはたくさん世の中に出ていると思うし)、UXデザインの視点で考えると、寄付って色々考えるべき事柄があるなと思っています。どのタイミングで、どういう人から、どういう風にアプローチされて、どういうインターフェイスで、どういう風に実際に寄付するところまで繋がるのか。オンラインだけでなく、オフラインでも、どこにコンタクトポイントがあって、どれくらいの離脱率がどのプロセスで発生していて、恣意的に用意できるコンテキストと、場が持っている偶発的なコンテキストなどもあったりして、交通整理しようと思うと、考えないといけないことが多くある。これだから、寄付のUXデザインって相当考えることがたくさんあって、そういう現場にUXのロジックどれくらい持ち込めるかってのは、これから興味深いポイントではないかと思っています。色々な人が挑戦して良いトピックだと思う。UXデザイナーがプロボノやるなら、その辺りが一番やり甲斐あるところじゃないですかね。

まとめ

というわけで、寄付ということを仮のコンバージョンのトピックと置いた時に、メディア、アドテク、UX、それぞれが一体どんな感じになるか、ということをざっくりですが、書き進めて来ました。勿論、ビジネスドメインでもこの3つの掛け合わせは今後重要になって来るのではないかなと思っていて、個人的にも興味深いトピックだと思っています。

冒頭にも書きましたが、

コンテキストの真価って「ユーザに何らかの負担を強いる」ことがないと問われない

という風には思っていて、逆に言うと、ユーザに何らかの負担を強いるためには、コンテキストの真価が必要、ってことでもあるのだけれど、誰もが情報を自由に扱えるに親しい(実際は違うにしても)現在にあって、まだフロンティアであるというか、伸びしろがあるというか、工夫の余地がある世界観なのではないかと思っています。

この辺って実は統合して「マーケティング」って言われてた領域のような気もするのだけれど、かなりそれぞれの特性がこの数年、インターネットやそれを取り巻くテクノロジーとともに様変わりしていて、それぞれの灰汁が強いものになっているので、具体的なコンバージョンへのアプローチのためのツールキットとして、この3つを並べて持っていると、色々見えて来るものがあるんじゃないかと思うんですよね。

加藤 康祐 / 企画・設計

プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。Webデザインを入り口に、2005年よりフリーランスとしてのキャリアスタート。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート。ラグビーと料理、最近イラスト。

加藤康祐企画設計

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