2015/11/28

『「少し先の未来」を予測する クックパッドのデータ分析力』 中村耕史

普段、ITとかデータとかと比較的距離があるような仕事仲間にも是非読んでもらいたい本だなあと思いました。無茶苦茶面白い。今まで読んだビッグデータとかデータ分析みたいなことを「体験的に理解」する上で、一番わかりやすい本でした。

「少し先の未来」を予測する クックパッドのデータ分析力
中村 耕史
日本実業出版社
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「体験的に理解」という書き方をしたのは、この本、クックパッドが企業としてどういうデータ分析を行っているか、という話ではなく(そんなものは出せないと思うが)、たべみる、という法人向けのクックパッドの膨大なレシピ検索データに基づく情報提供サービス、そのリニューアルプロジェクトを実際に旗振った人の体験記だからです。

僕はたべみるというサービス自体を知らなかったのだけど、コアユーザではないがクックパッドはたまに使っていて、使ったことのない食材を買う時にどんなレシピがあるか見て料理するイメージが湧いたら買うようにしてるんだけど(だからスーパーとかでスマホで使うことが多い)、そういう時の検索した情報がクックパッドに蓄積されていて、そういうものがリアルタイムに近い形で小売やメーカーにデータとして参照されて、「少し先の未来」を見据えて、PRやSP考えたり、特売や売場に反映したり、商品開発に活かしたり、みたいなことがもう行われてるんですね。

POSのデータとの違いも本書では出て来るんだけど、「買われた」データではないんですよね。わかりやすく言うと、テレビ番組で紹介された「甘酒」が、クックパッドで検索トラフィックが急増したことをリアルタイムに察知できれば、目立たないところに陳列しておいた甘酒を目立つところに置き換えることができる。そこで売上が伸びれば今度はPOSのデータとして、更に実績のあるデータになる。見てるタイミングが違う、だから「少し先の未来」なんですね。

企業内でプロジェクトが進んでいく様子の話としても面白いし、技術的に難しいことが書いてあるわけでもなく、極めて一般的に読める本だと思います。すごくビジネスのロジックとしても正論が書いてあるし、可能性の議論についてもシンプルに筋が通っていて、それだけに力強さのあるストーリーだなと思いました。

法人向けのサービスをどう位置づけるか、どこの予算が宛てがわれるか、どういう営業をするか、どうしたら使いやすいか、みたいなことも簡単にですが触れられていて、僕の仕事にも参考になること多い本だったなあと思いました。クックパッドの中で売上の多くを占めるサービスというわけではないそうなのですが、クックパッドを取り巻くエコシステム、食のプラットフォームという道程を考えると、プレイヤーとの大事なパイプラインという感じはしますね。

本当はカナエールとかでも児童養護とともに検索されてるキーワードのトレンドをウォッチしつつ、プロジェクトの中からそこにマッチした情報発信をしていく、みたいなことが本来的には広報啓蒙のためのプロモーションだったりするのだけど、企業も含めて、なかなか「少し先の未来」へのアプローチってまだまだコンテンツマーケティングの文脈でもできてない部分ではありますよね。流行りものを追おうということではなく、少し先の未来でのニーズマッチングというような。

こういうの静かに世の中変えていくサービスだなあ、と本当に思いました。

あっ晴れ、ということで締めたい。

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