
『美術手帖 2015年6月 ポスト・インターネット デジタル・ネイティブ世代の新しい知覚』
自分の専門分野じゃないところつまみ食いシリーズ。美術手帖の特集が「ポスト・インターネット」とあって興味があったので、買ってあったのでした。
アートは基本的にあまり理解の及ばない世界で、特にインタラクティブ・アートはよくわからないなとトリエンナーレとか見てても思ったのだけど、今回の「ポスト・インターネット」という特集は、結構、解釈の問題としてわかりやすくて(話は難しかったけど)、リアルとネットの垣根がなくなった、その後、だから僕らがまさしく対面しているゴモゴモした世界観ないし社会観の表象としてのアート、という感じで、面白かったです。
やっぱり、Twitterとか、それにも増して視覚化された世界だとTumblrとかか、そういうものが確かにアートの知覚とも連動しているはずで、よくわからないなと思っていた2000年代よりもポスト・インターネットはむしろリアリティを感じ得るように思いました。
特に面白かったのは、ヒト・シュタイエルという人の「地球のスパムメールー表象からの撤退」という寄稿で、無限に生み出されるスパム画像によって覆われる地球を視覚的に捉えた時に(サマーウォーズでそんな感じのなかったっけか)、そのほぼ人目に触れずポケっと笑ってネットを漂うスパムメールのオペレーターのお姉さんという表象ってなんなのだろう、というのを、その他の表象しない多くの人々を語る上でアイコニックに引用してて、人目につくことから15分でも隠れたい欲求みたいな感覚は、一般人の生活感覚としてもわかるので、一つわかりやすい解釈だなあと思いました。
作品は実物見ないとなあ、という気もしたのですが、紹介されてる作品の中では、Instagramのセルフィーにコメントつけて作品としているリチャード・プリンスとオラファー・エリファーソンとアイ・ウェイウェイのプロジェクト「moon」はネットでもその様子が伺えます(moon見たら、blogopolis思い出したけど)。
そう言えば、最後の方の対談で、日本だと、ポスト・インターネットという文脈と、震災後という文脈がクロスオーバーしている、という指摘も興味深かったです。
まあだから、ある意味でのディストピア的な方に向かうこともあるのだろうし、一方で、ソーシャルエンゲージドアート的な方向に向かうこともあるのだろうし、アート難しいなとは相変わらず思いつつ、時代のウネリが否応なしに押し寄せているのと、それは言わば動機付けでもあるのだろうというのは、どこも同じなのかもなあと読んでいました。
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加藤 康祐 / 企画・設計
プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。Webデザインを入り口に、2005年よりフリーランスとしてのキャリアスタート。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート。ラグビーと料理、最近イラスト。
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フリーランスとして働き始めるってどういうことだったのか?フリーランスとして働くってどういうことなのか?フリーランスが目指すことってなんなのか?5年間の自分の経験から書きました。(2010年執筆)