2015/8/2

そこには山がないから登れない – ブログ400万字への道程

いやあ、そもそも山登りあんまりしないんですけども(足首があまり良くないので、どうも長時間の登山は迷惑をかけそうで)。「なぜあなたはエベレストに登りたいのでしょうか」「そこにエベレストがあるから」というのが1923年3月18日付のNew York Timesに掲載された記事でのジョージ・マロリーの答えだったんだそうです。Wikipediaには「マロリーの意図は、誰も登頂していない世界最高峰を目指すことは挑戦的であり、全世界を征服しようとする人間の本性的な欲望である」とあり、冒険家の人はすごいなと思い知らされます。「全世界を征服しようとする人間の本性的な欲望」あるだろうか。

さて、このブログどうやら遂に4,000,000字に到達しました。ゼロの数を数えるのが面倒な人用に書いておくと、400万字です。原稿用紙100万枚分。

そうした時にブログを書くコツ、みたいなことを考えるのだけど、先ほどの「なぜあなたはエベレストに登りたいのでしょうか」という問いに対して、「そこにエベレストがあるから」と答えたマロリーは素晴らしいですけど、ブログを書くという時に、「そこにエベレストはない」。だから、「そこには山がないから登れない」。

じゃあ何をやっていたかというと、どちらかというと、「賽の河原に石を積む」的なことだと思うんですよね。河原に石があるから積んでいる。しばしば鬼がやって来て崩す。でもまた積む。本質的にはあまり意味がない。ただ積み続ける。

つまり、ゴールがあって、そこに何らかの目的があって、それに到達するための行程を踏んでいる、ということではなく、ただただ、書き続ける、という状態を維持する、ということだろうと思うんですよね。こういう目的において、ブログという更新の仕組みはとても良かった。3ヶ月先に何か目的があってとか、1年先に違う目的があってとか、だったらまた話違うかもしれないけど、そういうやり方だと10年は続かない、おそらく。

以前、セカンドライフというVRの走りのサービスが世に出て来た時に、色々な人が大騒ぎして、あっという間に話題にならなくなったわけですが、当時、友人が言っていたのは、「目的がないから続かない」ということでした。ゲームというのはクエストを攻略しながらゲームクリアを目指すもので、問題解決型のエンターテインメント、と言えます。

翻って、ブログ。こないだ「良い書き手を目指す」という言わばこの記事の前段を書いたけれども、書くこと自体を楽しめないと、賽の河原に石を積み続けるのはなかなか難しい。言葉を選ぶとか、文脈を作るとか、エンターテインメントとしてはおそらく「刺激の少ない」こと、それを楽しめないと続かない。

勿論、しばしばブログに記事を書くということが問題解決に寄与することはあって、友達が僕の紹介記事を自分の取り組みの話をする時によく見せていた、なんて声もあったし、ブログがきっかけで連絡をもらって付き合うようになった友人もいる。他で知り合ってブログ読んだことありました、そう言えば、という人もいれば、ETがプロジェクトに取り組むにあたって、サポーティングパラグラフを作るためのプラットフォームでもあります。

まあただ、そういうことはある意味、とても副次的なことな気がしていて、基本的には目的がない。

賽の河原に石を積む。無駄な努力をするということ。

ブログを書くことに大きな期待を持たずに黙々と無駄な資産を作る。ただそれが何かの時に何かのきっかけで使える道具になる。「ブログやるの人に薦めますか?」という質問がある時に、でもその人が原稿用紙100万枚分これから書くイメージ持てるか、っていうと、もうなんかほとんどのケースないだろうと思うので、職能的にその人にブログ書くことがとても有利に働くことを除いては、逆に薦めにくいかも知れませんね。

ただ、コンテンツ・マーケティングという言葉が流布されたように、トピックをコンバージョンに結びつけるための、ストーリー、それを書く力、ということの重要性は今年カナエールのチケット販売でも大いに感じたということと、人を動かすのには、宣伝文句を並べたり、綺麗に着飾ったり、するだけでは本質的にはクリアできない、経験価値の共有みたいなのがあると実感しました。言葉で人は動かない、けれども言葉でしか人に説明できず、受け取った人もそれを言葉でしか考えられない、という時にそこには巧緻な方法論と精緻な言葉が必要。マーケティングという言葉で括るには大分デリケートな質感を持つ。そんな感じがしました。

石を積むどころか、コロコロ転がして終える日もありますが、今日までブログ続けて来たのは、そこに続けるという意図なかったにしても、良かったなあと思っています。

自分がブログをやめるイメージがない。続けるって、案外それだけのことかも知れないですね。

加藤 康祐 / 企画・設計

プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。Webデザインを入り口に、2005年よりフリーランスとしてのキャリアスタート。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート。ラグビーと料理、最近イラスト。

加藤康祐企画設計

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