2015/8/1

伝えること – 可能性への想像力について

先日の新国立競技場に続き、オリンピックのシンボルマークのデザインの類似性の指摘の話は、何か違和感を覚えるものでした。インターネットでの言説を見ると「やっちまったな」みたいなものが多くて、なんかしかし、最近、デザインについて取り沙汰されることがなまじ多いだけに、少し気になっていました。

この動画を見ると、よくわかるのだけど、今回のシンボルマークは、いわゆるシンボルである以上に一つのシステムとして提案されています。このことに関してはFacebookでも少しお知り合いと議論をしたのだけれど、この動画見て、ポスターどういうバリエーションになるのかとか、ピンバッチをどんな感じで皆着けるのかなーとか、紙パンフどんな雰囲気でアレンジされるのか、みたいな楽しみが本来的に生まれる可能性があって、そういうワクワク感があるはずで、今回の件について記事書いてる人が、そこまでの想像力を働かせて、でもそれ関係ないよね、大衆向けのシンボルデザインには、という風にはなってない感じがするんですよね。

想像力働かせないうちから書いてしまっている感じがある。結局、僕がちょっとは軸足デザインにあるからかもですけど。デザインの文脈、のような難しい話としてではなくとも、可能性への想像力を働かせた上での否定なのかどうか?と思います。一般の人が働かないなら、伝える人はむしろ働かせられるべきかなあとか。

UX、UXって言ってるけど、まさしくUXへの想像力、そういうものが伝える側にも要求されると思うんですよね、今回のケースは。だから類似性の指摘には、こうした動画が併記されていれば、また受け入れられ方も随分違ったんじゃないかなあ、と思います。

少し土俵を移すとWebサイトのデザインでも同じことが言えて、類似性の議論じゃなくても、パッと見の印象としてだけで議論がなされると、本来的にそのシステムがどういうUXを生むか、というところまで想像力が踏み込めなくなる。少なからず、そういう上辺が全てを決める時代は終わったんじゃないかなあと思って、僕は今、仕事をしています。

今回の佐野研二郎さんの仕事は、オリンピックがかっこ良くなるためのデザインに関わってるということなんだろうな、と思えて、シンボルマークのデザインが実際の業務の定義なのかわからないですけど、その仕事の可能性を伸長する努力を色々されたんだろうな、というのは見て取れる感じがしました。

その上で、ロゴの類似性なんですけど、この動画を見た後では、とても部分的な話だな、という気付きが見た僕にはあって、だからやっぱりパクリ疑惑みたいなものがある時に、そういう全体観や拡張された時のUXを提示できるのが良い伝え手なんじゃないかな、と思いますよね。

最終的には好みだなと思いますし、そもそもこの問題見た時に、シンボルという意味では五輪とロゴタイプだけでいいじゃんとも思ったんだけど、動画観て、ガツンと来た感じしますよね。つまり「実際に利用されるシーンへの想像力がリッチかどうか」という意味では、リテラシーの問題の気がします。僕も今の段階で想像が及びません。

ただ、一流の作り手には、自分の想像力の及ばない何かを本来的には求めているはずで(イチローの打席みたいなものですよね)、今回は、ダメ出しの快楽が先行してる人の方が多そうだな、という気がするのと、逆にダメだったとしても、どうなって、ダメかってことが想像つかないくらいには、このシステムは可能性を提示していると思います。

最近のこの手の話題で思うことは、新国立競技場、東京オリンピック、そこのデザインの最終案に残る人、というのは本当に力がある人なのだと思います。世渡り上手は二流にしかなり得ない。一流の仕事には、圧倒的な力があって、その力の故を、僕らはきちんと咀嚼する必要があると思います。そういう審美眼を養うことは、楽しいことを楽しむためには必要なことだと思います。見かけて5分でよくわからなかったら、1時間調べてみれば良い、1日考えてみれば良い。そこで気付くことは「楽しみの豊かさ」なのだろうと思います。それだけの「力」がそこには在る。例外が置かれてることの方が珍しいのではないか。

当事者のメッセージの意図をちゃんと組むと、つまんない話として伝わって来ても、結構、面白い話じゃないか、ってことが多いなって、最近思っています。自分がそういうことをきちんと咀嚼できるようになってた方が、楽しめるんだろうなあとも。

ジャーナリストに限らず、伝えること、コミュニケーションに関わる仕事についてる人間として、なまじ題材がデザインにかかることだっただけに、きちんと可能性への想像力を働かせた上で、それに対する「批評」ということを考えていかなければいけないなと思います。最近のゴタゴタは、そういうことを考えなおす、良い機会にもなっていると感じています。

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加藤 康祐 / 企画・設計

1980年1月12日生まれ。フリーランス歴15年。プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。学生時代にデザイン会社でWebデザインを経験。2005年よりフリーランスとしてキャリアスタート。これまでに個人から上場企業まで、100以上のクライアントとのプロジェクトを経験。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの編集・運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート等。趣味はラグビーと料理。Keep the head up, Bind tight & Stay low.

加藤康祐企画設計

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