2015/3/9

『企業の研究者をめざす皆さんへ』 丸山 宏 – Research That Matters

※ユレッジで丸山宏さんにインタビューしました。
「インタビュー : システムズ・レジリエンス」 丸山 宏 / 統計数理研究所副所長・教授

およそ研究という言葉からは距離が遠い人間で、企業内研究なんて元より、大学でも研究会に所属していなかった割りには、どうやらアカデミックなバックグラウンドを色濃く持つ人や、今も熱心な研究者である人とやり取りすることがままあって、読んでおきたかった本です。著者の丸山宏さんがIBM基礎研究所の所長時代に書いた研究員へのニュースレターをピックアップしながら、研究、研究員、研究所の在り方、について順を追って書かれています。大きくインターネットとか、Webの業界、ということで考えると、言わば大先達です。

企業の研究者をめざす皆さんへ―Research That Matters
丸山 宏
近代科学社
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「Research That Matters」というのは本書のサブタイトルでもあるのだけど、「マターする」、つまりその研究で「人が動く」「世の中が変わる」。そういう「マターする研究」について、平易な言葉でわかりやすく丁寧に記されています。あと今現在、ビジネスの世界で言われている大事なことは、この時点でこの本に結構書かれている。

とは言え、研究者としての実体験がないものだから、これと言って突っ込んだ感想を言えないのだけど、僕なりに面白いと思ったポイントを。

では、どうやったら良い問題を選ぶセンスを身に着けることができるでしょう?夜の食事の席でこの質問をしたら、「うーん」としばらく考えて「研究が成功したときにどういうデモをするつもりか」を考えてみたらと言われました。金出先生のおっしゃるには、研究の成果をデモとして見せたとき、「これはどのように動いているのですか」と聞かれるようではまだまだで、見せたとたんに「これはいくらですか」と聞かれることが、デモの成功した証拠なのだそうです。つまり、デモを見た人が、すぐに「この技術はこの問題に使えそうだ」「あの問題にも使えそうだ」と目を輝かせる、そういうデモが良いデモなのでしょう。デモを見せる目的は、その技術が世の中にどういうインパクトを与えるかを理解させることにある、と言えそうです。逆に言えば、その技術にどのような斬新なアルゴリズムが使われているか、どこに苦労したか、などはデモの目的としては二の次だ、ということです。

仕事仲間というか友人の @akhkkdm 君は、会うと必ず何か新しいものを目をランランとさせながらデモしてくれるのだけど、そういうことなんですよね、多分。デモして見せた時に、どういう仕組みか、ということよりも、そこにどういうインパクトがあるかの方が意味がある。あれ、つまり、こういうことなんだなあと思ったりしました。あと、この話を受けて、

「研究にはシナリオがなければいけない」ということを繰り返しおっしゃっていましたが、それもきっと同じことを言ってるのですね。

とあって、この本読んでて思うのが、これはテキストの形だけれど、研究のUX Journey Mapなのだよなと思いました。Reseach Journey Mapというか。そういう時間軸で研究って成し遂げられるものだとする時に、そのプロセスを今よりもっとクリエイティブにマッピングする手法としてUXの方法論とか動員されると面白いんじゃないかな、などと思いながら読んでました。後は自分の畑の話だからなんだけど。

もう一つ、相手を理解するために私が心がけていることは、特に初対面の相手からは「自分を過小評価してもらう」ことです。お客様から「こいつは何も知らないな」と思っていただければ相手は警戒心を解いて色々教えてくださるでしょう。無邪気に質問をして、できるだけ多くを相手から引き出すことが大事だと思うのです。もちろん、これは両刃の剣で、過小評価されすぎて「こいつに話しても無駄だ」と思われたら駄目なのですが。。。知的な会話をしつつ、できるだけ相手を理解できる情報を引き出す、これがコミュニケーションの秘訣なのではないかと私は思っています。

これ僕にあっては営業の極意だと思います。自分の話はそんなしなくていい。質問が勘所を捉えていて、その答えの意味を理解できてる、って感触だけを残せれば良い。そうなんだよなあ、と思いながら読みました。

まとめ

学生さんにもわかりやすいと思うし、少し古い本ですが、普遍的というか、すごく基礎の基礎の話をしているので、技術者でなくとも納得できるところが多いように思ったし、自分の畑でそれできてるかな、と考え巡らすことも多かったように思います。引用されてるニュースレターも生活感があるというか、研究所の日々の空気感をまとってる感じがして楽しく読みました。

全然、研究とは遠いところにいた人間が、知らず知らずのうちに研究者の人に話を聞く機会をいただくようになって来ている。うちの仕事の一部は妙にアカデミックで、ついてくの大変なのですが(とは言え、ガッツリ勉強しているというわけでもない)、半分くらいは「研究」ということへの憧れみたいなものもあるのかなあ、と思います。良い読書でした。

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加藤 康祐 / 企画・設計

プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。Webデザインを入り口に、2005年よりフリーランスとしてのキャリアスタート。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート。ラグビーと料理、最近イラスト。

加藤康祐企画設計

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