2015/1/22

「個人のエンパワメント」について雑感

うちは商売柄、色々な業界の方とプロジェクトをさせていただく機会があるのだけど、この数年、一番増えたなあと思うのは、人を育てることに関わるクライアントだと思います。正確には人の能力とか可能性を育てることに関わる、ということかも知れない。それはしばしば人事ということかも知れないし、ともすれば自己啓発ということかも知れないし、場合によっては、トレーニングとかコーチングとかいうことかも知れない。思い返してみれば、昔やった仕事でも、例えばアロマセラピーとか、東洋医療とか、サロンや大学の仕事とかはそうだったろうし、今もいくつかそういうことに準ずる仕事をやっています。僕はWeb作るのが仕事ですが。独立したプロジェクトで参加しているものとしては、カナエールや、イトナブとのUXの授業も、個人のエンパワメントのためのプログラムであったと言えると思います。

例えば、フリーランスという仕事を考えた時に、ランサーズやクラウドワークスなどのクラウドソーシングの話があって、僕はそういうのに全く乗り気じゃないのだけど、そういうのもビジネスが個人のエンパワメントに寄与している一例かも知れません。逆に有用性高いなと思うのは、例えば会計ソフトのfreeeのようなツールは、ある意味でのフリーランスへのエンパワメントのツールだと思う。そう考えると、Evernoteやら、Dropboxやら、Googleやら、あと、僕にとってはAmazonや楽天も東戸塚で仕事を回していくには重要な個人のエンパワメントのツールで、主だったネットサービスというのの多くは、「個人のエンパワメントのツール」という役割を担っているのではないかなあと思います。

翻って、僕が仕事でご一緒させていただいてきたのは、むしろもう少し内在的な個人の能力や資質や使命にかかるところが大きい。それで最近思うのは、こういうことは世の中の情勢と深く結びついてるということです。個人の成長を促す、というのは、キャリアという言葉に置き換えられると思うのですが、キャリアプラン、という時に、どういう転職をしていくか、どういう出世をしていくか、という話も勿論あると思うのだけれど、どちらかと言うと、働き方や暮らし方、生き方、そして、希望の作り方や、夢の叶え方、という文脈で、「個人のエンパワメント」は語られていることが多いような気がします。

特に低成長時代というか、このことについては賛否両論あると思うのだけれども、右肩上がりの経済成長ありきでものを考える時代じゃなくなって来た、という世界観を持つ時に、自分のキャリアの捉え方や、個人の能力や資質や使命にまつわる考えかたも変わってくるのだろうと思います。こないだ、「カナエールのSELP(セルフリーダーシップ研修プログラム)のこと – 社会とビジネスとボランティアの間で自分の力の使い方を身につける」という記事の中で、あえて「力」という、ともすれば似つかわしくない、少しいかつくて、筋肉質な言葉を使ったけれども、低成長だから、色々なことを緩やかに、ではなく、低成長だからこそ厳しくなるのは明らかで、そうであるがゆえに個人がエンパワメントされることは必要、ただし、その方法論やアプローチが前の時代と少しずつ変化して来ている気がします。

極端なことを言うと、MBAを取ることも個人のエンパワメントと捉えられる一方で、畑を耕すことも個人のエンパワメントと捉えられるし、資格を取得することも個人のエンパワメントと捉えられる一方で、瞑想の方法を覚えることも個人のエンパワメントと捉えられる時代になって来ているように思います。今の時代の「個人のエンパワメント」に関する先進的な取り組みは、ビジネスとプライベートの垣根を少し曖昧にしつつ、前者と後者のミックスのプログラムを作りながら、より普遍的なものを見出そうとしているように思います。

僕の個人的な感覚としても、ビジネスをするための読書はビジネス書に限らないといつからか思うようになったし、旅に出ることの意味も昔と大分様変わりしたと思うし、ワークスタイルやライフスタイルをコンフォタブルにしていくことについても価値観が10年前のそれとはかなり違うと思うし、僕が誰かにインタビューする時も仕事の話をしているようで実のことあまりビジネスというものを前提としていない。以前その、アロマセラピーとか、東洋医療のことをやっていた時に「ホリスティック」という言葉を覚えたけれども(その分野でよく使われる言葉)、そういう「全体性」に対するアプローチが重要になって来たことかも知れないし、最近の言葉で言えば、この文脈は「リジリエンス」という言葉に繋がっていくのかも知れません。「セルフ・ブランディング」という言葉もあったけれど、今、改めて考えられているのは、「力」そのものを伸ばす、その活かし方を覚える、みたいなことなのかなあと思います。

人を育てることに関しては、そもそも人を育てるような体力がうちにないのと、僕が主業務としたいことがそういうことではないので、そういうことについては直接的にやらないでここまで来ているけど、「高度な分業」の蚊帳の外で仕事をする時に、多様性を吸収しながら自分の仕事を形作っていくことは大事だと思うし、実際に仲間内も、ITとコーヒーとか、UXとペットとか、酒とデザインとか、仏教と心理とか、その裾野を広げて来てる感じもしています(勿論、超プロフェッショナルを突っ走る仕事仲間もいる)。少なくとも列挙したようなジャンル、というのは世の中的にあまりないし、そこには仕事と趣味、みたいな切り分けから一歩踏み込んだ、学びとアウトプットの仕組みが生まれてきているんじゃないかと思います。

勿論、奇をてらったことをすることが大事と思っているわけじゃなくて、ただ最近の「個人のエンパワメントにかかること」を見ていると、職能に紐付けるこれからの導線というのは、本当に多種多様になってくる気がしているのと、そういう少し違ったキャリア観を、これまでをベースに乗せようとするタイミングの年齢になって来た、ということかも知れないですね。

世の中の多様性というのは、少なからずこの「個のエンパワメント」という分野に今、ブレイクダウンされつつあって、とは言え、歴史を参照すれば、Steve Jobsをエンパワメントしたヒッピーカルチャーやホール・アース・カタログ然り、昔からそういう多様性はあった、とも言えるのだけど、使い古された言葉で言うと、「趣味が実益を兼ねる」みたいなことが、世の中的にもっとプレゼンスを増して来て、かつ、そういうものは小さなユニットで生まれやすい価値、なのかも知れないなあ、などと考えておりました。という雑感。

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加藤 康祐 / 企画・設計

1980年1月12日生まれ。フリーランス歴15年。プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。学生時代にデザイン会社でWebデザインを経験。2005年よりフリーランスとしてキャリアスタート。これまでに個人から上場企業まで、100以上のクライアントとのプロジェクトを経験。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの編集・運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート等。趣味はラグビーと料理。Keep the head up, Bind tight & Stay low.

加藤康祐企画設計

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