2015/1/5

『災害と妖怪――柳田国男と歩く日本の天変地異』 畑中 章宏 – 科学と非科学の間にある解釈について

やはり僕は去年、遠野に呼ばれていたのかなあと今になっては思うのだけど、あれから少し民俗的なことを「読み物として」興味を持って、宮本常一さんの著作との出会いもあり、「民俗」とか「フォークロア」みたいなこと、気になっていました。そこで見つけたのが『災害と妖怪』という本。僕自身、ユレッジをやっていることもあり、とても気になっていました。

災害と妖怪――柳田国男と歩く日本の天変地異
畑中 章宏
亜紀書房
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冒頭ある、遠野がどういう土地かということについての記述が、僕が現地でうかがった話とたいへん符合したのだけれども、僕がうかがったのは釜石の施設で遠野にあるNPOが運営されているところでした。釜石から遠野への道すがら色々お話を現地の方にうかがったのだけれども、昔から釜石からは海産物が、遠野からは米が、物々交換で取引されていて、その方自身も釜石の被災は他人事ではなく、夜なべしてオニギリを握って、被災地へ運んだというお話をされていました。距離的には離れているけど、交通の要衝であった遠野は、震災後、沿岸部への支援の後方基地であった、と本書にも書かれています。『遠野物語』の舞台であった遠野は、東日本大震災でもそういう場所であったと。

決して災害と妖怪、特に妖怪だからと言って、おどろおどろしい話が並んでいるわけではなく、その辺は怖がらずに読んでいただいて大丈夫だと思うのですが、例えば、河童が人馬を沼に引きずり込むのは飢饉で亡くなった小さな子供への思い、海坊主が溺れているかのような立泳ぎをするのは海で亡くなった人への思い、というような解釈を読むと、その経験は僕の中にはあらずとも、少なからずそこにリアリティを感じ得ないと思いました。

この解釈ということが大事なんじゃないかなあと思っていて、昨年は筑波の防災科研にも行ったけれども、科学技術研究所の名の通り、科学と技術による防災の研究所、です。J-SHIS Mapを含めた、様々な災害リスクの可視化の方法も、科学的な解釈である。そういう意味では、妖怪の話ってリアリティあるかも知れないけど、災害の解釈の方法としては、科学がある今の時代にあっては随分非科学的かも知れません。

ただ、この本を読んでまざまざと思ったのが、人の恐れとか憂いとか悔みとか苦しみとか、って科学的に定量的に解釈し得ないのですよね(一般論として)。でも実際に現地での見聞やルポがメディアを通じて、僕らにも届けられ、その辛さの一部を震災後知ることとなった。 @taromatsumura が神社に残された石碑の話にユレッジで言及してくれるけど、おそらく目印だけでは足らなかったのだろうと思う。つまり伝承というのは記録を記憶に留めるための解釈で、それを語り継いでいくための型であり、そこには、そのまま引き継ぐにはあまりにも膨大な具体的な「人の恐れとか憂いとか悔みとか苦しみ」みたいなものがあって、それはやもするとそのものを記録として残すには生々し過ぎて、だから伝承というのはある意味での抽象化なんだろうと思います。

その上でだから、僕らはもう少し、災害にかかる「民俗的なもの」をどう次の世代に引き継いでいくのか考えると同時に、僕らは受け継ぐのを途絶えさせていた過去の文脈について、「これから」を考える上ではおざなりにできないのではないかと改めて思いました。勿論、妖怪の話を未来へ残しましょう、ということではなくて、災害を受けた人の個々の暮らしや環境の変化、共同体での現実、不足のこと、支援のこと、今、改めて「語り部」みたいな形で東北で行われていること、というのは、風化を防ぐというより、風化しても残せるもの、というようなことなのかも知れないなとか。勿論、一方でそこに科学とか技術ができることもあるし、場合によっては組み合わさることもあると思う。震災後は終わっていない、のはそうである一方で、いずれ終わらせることが復興であるとするならば、それでも残るもの、みたいなことなのだろうと感じました。

例えば、ダイダラボッチの項では、「あ、これ、もののけ姫のやつだ」と思って読んでいると、ジブリの話もその後触れられていたり、天狗の項では、高尾山が出て来て、そう言えば子供の頃火の上を渡るやつやったよなと思い起こせたり(天狗って火守りみたいなことらしい)、『遠野物語』って買って来てもなかなか難解で読めないけど、これは読みやすい本だと思います。災害を切り口にしてることが読みやすいという言い方をすると少し不謹慎に聞こえるかも知れないけれど、現代社会との接点を今の人でも見出だしやすい切り口だし、少なからず、読んでいるともう一度震災について考えることにもなると思います。

実はユレッジ一緒にやってる仲間がルーツ遠野だったりして、だからやっぱり呼ばれてたのかなあと思うのだけど、とても良い本だと思いました。著者の畑中さんは『先祖と日本人: 戦後と災後のフォークロア』という本を出されていて、こちらも買ってあるので、きちんと読みたいと思います。

最後に、今日、世の中的には仕事初めが多いかと思うのだけど、そんな中、いただいたメールの中にこんな一節がありました。

東京オリンピックまであと5年、震災5年目、戦後70年

そういう年なんですね、今年。

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加藤 康祐 / 企画・設計

1980年1月12日生まれ。フリーランス歴15年。プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。学生時代にデザイン会社でWebデザインを経験。2005年よりフリーランスとしてキャリアスタート。これまでに個人から上場企業まで、100以上のクライアントとのプロジェクトを経験。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの編集・運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート等。趣味はラグビーと料理。Keep the head up, Bind tight & Stay low.

加藤康祐企画設計

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