2014/12/2

「リスクを取ること」をあまり美化しない方が良いという話 – 「No Risk, No Gain」と「No Pain, No Gain」の違い

「No Risk, No Gain」みたいな話あるじゃないですか。僕あんまり好きじゃなくてですね。常々、僕はあまりリスク取らないよ、という話をしています。今日はその辺の話を書いてみたいと思います。

うちは基本的に客商売の仕事ですが、まずうちはほとんどこの基本的な仕事のあり方についてリスクを背負ってません。勿論、クライアントにそういう権利はあるにせよ、罰則金、違反金、損害金みたいな話になったことはこの10年1度もないです。そういう意味で振り返ってみても、リスクは低い仕事と言えます。仕事の報酬が回収できなかったこと、これはいくつかあります。意外と得意先の倒産というのはうちの場合ほぼないのだけど、これもそのこと自体でうちの業績が右往左往するような話ではなく、かと言ってスルーするわけでもないのですが、2年に1回くらいは何かあるんだろうなという感覚ではあります。でも言ってもそれくらい。納品ベースの仕事が多いので、そういう意味では割とシンプルで、ゆえ、あまりリスク背負ってないと言えます。

逆に言うと客商売をやっていくにあたって、クライアントに極力リスクを背負わせない努力、これは大事な要素かなと思います。リスクとは言っても色々ありますよね。お金、時間、品質、などなど。うちのやってるプロジェクトの規模感ということもあるけれど、大体、僕が依頼された仕事を完遂し得るか自体もリスクなので、それに僕が「加える」リスクは最小限な方が良い。そもそも、「企画」ってある意味、クライアントが何かをするに当たっての(うちの場合は多くの場合、Webにまつわる何か)リスクを減らしていく方法論を考えるってことじゃないですか。

勿論、うちもクライアントのニーズに応じて、クライアントに「加えた」投資をお願いすることもある。それは例えば外部サービスの利用だったりして、今年も一本そういうののコーディネイトお手伝いしたことがあるけれど、それも十分にコミュニケーションを取って、可能な限りリスクを排除して、その上で、やるという判断を僕じゃない、クライアントにしてもらって、初めて始まる話でもあります。

レベニューみたいなものもあるけれど、客商売をやっていて、クライアントの問題解決のために、報酬より多い投資をこちらが持つ、などということはあり得ないので、クライアントが持つんですよね、リスク。だから僕がリスクを取るみたいなことを熱弁したところで全くもって筋違いであって、今抱えているリスクを減らすために、リスクを取る必要があるかも知れないけど、それをしているのはクライアント。僕の労力は予めきちんと見積もられているわけで、自分の労力を以て「リスク」とか言えない。

そうそう、リスクを減らすという話が出ましたが、リスクっていうのは、リスクヘッジの構造とセットだと思うんですよね。組織の人がリスクを言っても、実際にリスク背負ってるのはその人じゃなくて組織だし、株式会社なら株主かも知れないし、株主だって一つで全てを抱えきれないから分散されているわけで、本当にリスク背負うって、個人資産が担保になってるようなことだけですよね。だから個人保証みたいなことが発生することは、可能な限りやりたくもないという話にもなるわけで。

個人投資家とかFXとか僕の知らない世界で、そういうリスクと隣り合わせの人はいるんでしょうが、往々にして、ビジネスの世界でリスクを取るような立場にいる人はそもそもほとんどいない、というのが僕の理解です。むしろ、判断が適切かだけがある。だから、僕は「リスクを取る」という言葉で物事が肯定されることに、疑問符を持つのかなあと思います。

政治家だって、リスク取ってない。政治生命を賭けて、って言うけど、辞任して責任取れるなら、別に失敗の保証義務をなんら果たしたわけでもないわけで、別に個人資産担保に政策提言するわけでもないんだから、あんまり勇ましい言葉は使わないで欲しいなと思います。確かに選挙で国民から付託されてることはあるかも知れないけど、それは他の組織だって、何らかの集団の決定によってその立場は決まっているだけであって。「勇ましい言葉はいつも滑稽だ」とは小林秀雄の弁。まあ、選挙の時だけ、政治の話題を少し書くのもちょっと違うのかなと思いつつ。

でだ。

よくラグビーのTシャツに「No Pain, No Gain」ってのが書いてあったりします。これは逆に万人に共通すると思う。痛い思いしたり、辛い思いしたりしないと、前に進めないよという。実際、そういうスポーツだと思うし、この言葉はすごいわかりやすい。ただ、ラグビーに「No Risk, No Gain」って言葉は当てはまらないかというと、それも違って、例えば戦略的にキックを蹴るみたいな判断はかなりリスクの駆け引きですよね。ただ、それをやる人はある程度、決まっていて。だから、まあやっぱり、PainとRiskの関係性はチームという括りで見ても、それくらい違うのだと思う。

でまあ辛い思いをしないとみたいな話は、体育会系だー、とか、根性論だー、とか、言われそうですが、とは言え、皆多かれ少なかれやっている。だから、気をつけるべきは「リスク」って言葉の取り違え、と、痛みとか辛さみたいなことを丁寧に扱ってあげること、なんじゃないかなあと思います。客商売やっている間は、ここにセンシティブでいたいなあと。

さて宣伝。

こういう話を書くと想い出す先輩がおりまして、本が出るそう。「ビジネスはスポーツだ!会社はジムだ!勤める力を鍛え上げよ!」ということで、「勤トレ」とのこと。タイトルの男臭に反して、カワイイイラストでまとめられてます。これとか多分、「No Pain, No Gain」の話なんじゃないかなあと思ってます。

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ということが言いたかったのです(特に何もご本人から頼まれてませんw)。

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