2014/10/24

『ホームレス農園: 命をつなぐ「農」を作る! 若き女性起業家の挑戦』 小島希世子 – 「私はあなたのお母さんじゃない」

小島さんとの付き合いは大学の語学の授業に遡るので18歳くらい。15年余の付き合いになります。えと菜園のWebサイトのローンチが2009年とあるので、仕事を少し見るようになってからは5年になります。早いもので。本の話、自体は数年前からあったけど、こうして形になって届くのは、なかなか感慨深いものがあります。今日の夕方届いて、先ほど読み終えました。ということで感想を。

ホームレス農園: 命をつなぐ「農」を作る! 若き女性起業家の挑戦
小島 希世子
河出書房新社
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何から書こうと思うのだけれど、小島さんの事業は多岐にわたると言って良いと思います。ネットショップに始まり、対面販売、体験農園、農業研修、就労支援、イベントなどでの講演、あと忘れちゃいけないのが自分の畑の野菜育てること。あ、ヤギの世話もあるか。なんか色々ありますね。大きく拠点も小島さんがいる藤沢と、ネットショップを動かしている熊本と、あと熊本には、ずっとお世話になっている農家さんたちもいる。小さい事業ではあるのですが、色々な人が関わっている事業でもあります。

現在の農業を悲観するでなく、農業をきちんと回せる仕事にする、農業界の雇用不足を補う、土に触れて働く意欲と生きる歓びを取り戻す機会を作る、その現状と活動を広め賛同者を増やす。小島さんが農と職を基軸に課している役割もまたとても幅が広いと言える。ちょっと大丈夫かよ、おい、と言いたくなる。ただ、これまでの縦割りの業界構造と行政の仕組みの中で、結びついていなかった社会問題やリソースの、蝶番になるような事業を展開することで、少しずつその試みを形にしているのが、現在の株式会社えと菜園とNPO農スクールだと思います。

一方で。

しかし、この本にも書いてある通り、大事なことは1人1人の人との付き合いにある。ネットショップのお客さん、農業を教えてくれた先生、畑に来るホームレスの人たち、精神疾患を抱える人。うちはこういう事業なので、あれがこうなってこうなります、って綺麗に話ができれば良いものの、衣食住、人の営みの根幹を担う仕事だからこそ、現場にある問題は実際は多様。お客さんという人がいるわけでも、ホームレスという人がいるわけでも、精神疾患という人がいるわけでもない。それぞれの人が様々なバックグラウンドを抱えていて、様々な接点でコミュニケーションをきちんと取る必要があって、そこには靭やかな頭が求められます。そこを1つ1つ丁寧にできることが小島さんの真骨頂で、そういうエピソードが本でも読むことができて、色々な人に読んで欲しい部分だと思います。

その上で。

この柔道家は踏み込みが深い。この本でもしばしば「私はあなたのお母さんじゃない」って書いてあって、それがすごくわかりやすくて大事なことなんだけど、ただ、普通の人が首突っ込まないような現場にいることも事実。問題を前にして、しばしば踏み込みが深くなる。それが社会の問題を解決すると言いながら、実際は1人1人の抱えている問題を解決していかないと、何にもならないという現場の難しさで、そこを色々な人がサポートできれば良いなと感じます。本書にも「私が一生かけて農園で向き合える人は限られている」とあるけど、ある種の諦観が、きちんと1つ1つの深くて重い問題を解決するための大事な覚悟になっている。だからこそ、色々な人のサポートが必要な仕事だと思います。本当に。

とは言え、なんせ知り合いの本なので、普通に楽しく読みました。さっき本人に話しましたが、「記憶が走馬灯のように」という感じでした。これからのえと菜園、これからの農スクール、ますます楽しみです。

最後に、何かあった時に、僕がよく言うのは「野菜を売らないと」ということです。やらなくてはいけないことはたくさんあるけど、それを支えてくださっているのはえと菜園のスタッフの皆さん、協力してくださる農家さん、そしてお客さん。そこがきちんと丁寧に回ってるからこそ、新しいことや、必要なことを動かせる。熊本訪問の時に八代でビニール袋いっぱい農家さんからいただいたキュウリを、大分に向かう阿蘇を越える鉄道でかじった時は本当に美味しかったし、今、うちは山鹿の農家さんのお米をいただいてるけど、とても美味しい。事業計画書もプレゼンもやらなければいけない大事なことだけど、その先にあるのはそういうことなんだろうと思います。良い商売、良い活動だと思います、本質的に。

なんか色々書きましたが、具体的なエピソードと考えをちりばめながら、日本人の食生活、農業界の現状・問題、そして様々な理由で働く難しさを抱えてる人たちの就労を、えと菜園、農スクール、それから、小島希世子を通じて考える機会になる良い本です。是非、読んでみてください。

いやあ、書いたな、しかし。

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加藤 康祐 / 企画・設計

1980年1月12日生まれ。フリーランス歴15年。プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。学生時代にデザイン会社でWebデザインを経験。2005年よりフリーランスとしてキャリアスタート。これまでに個人から上場企業まで、100以上のクライアントとのプロジェクトを経験。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの編集・運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート等。趣味はラグビーと料理。Keep the head up, Bind tight & Stay low.

加藤康祐企画設計

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