2014/9/30

リテラシーはプロセスをなぞることで生まれる – 放射能にまつわる話から

最近、久し振りに、福島関連の著作、2冊を取り寄せました。1冊は『希望の牧場』という絵本。もう1冊は『知ろうとすること。』という糸井重里さんと早野龍五さんの対談。あとユレッジでインタビューさせていただいたのは1年前の話ですが、児玉龍彦さんの『放射能は取り除ける』の3冊並べて考えてみたいと思いました。

この3冊に共通することは、一般の人々に読まれるために書かれた本であるということ。原発の事故そのもののドキュメントというよりは、それぞれの畑でそれぞれの人が何をどうしたのか、という話だと思っています。震災以降、放射能にまつわることで、一般にほとんどなかったのは放射能のリテラシーでした。だから皆調べた。僕もそういう一人で、ただ、震災当初はあまりにもノイズが多すぎて、糸井さんや早野さんのダイアローグで出てくるTwitterでほとんど情報収集しようとしませんでした。むしろフォロワーの数を極端に減らしてノイズを減らすことから始めた。僕がきちんと一定の知識が必要、ということになったのと、中長期的に無関係であることは不可避であると思ったのは、食べ物関係のクライアントの仕事で、放射能に関することがコミュニケーションの仕事に少なからず必要になってから、ということになるでしょうか。

こういう本が出されるってどういうことかというと、新しいリテラシーを身につける、ってことが目的なんだろうと思います。その上で、安心を作る、ということが必要になって来る。そしてそれはそれぞれの立場、ないしコミットしている分野と、そこで実施されているないし計画されている施策をベースに語られることで、児玉さんと早野さんの話でも、それぞれが全く同じことを言ってるかと言えば違うだろうし、それは読み手が普段考えていることによっても更に違ってくるだろうと思います。その上で、安心を作るためにそのプロセスが論述されている。今までないクライシスに対して、そこで確保しようとしている言わば未知の安全を実証するために、科学がアプローチしている、そのプロセスということになるんだろうと思います。

『希望の牧場』という絵本はそれともまた違う。震災後、「原発20キロ圏内に生きる男 – Alone in the Zone – YouTube」を観た時は、こんなの個人の感想とか何も出しようがないよな、というのが正直な感想でした。それくらい強烈だった。その割に何も出なかった。ただ振り返って思えば、今、抱えているものを離れざるを得なかった人への想像力は、今、抱えているものを離さなかった人の話を見るまで、正しく機能していなかったかも知れないとは思います。この絵本が何かの原動力になる必要はなく、ただそのプロセスは、頭だけでも一度なぞる必要がある、そんな感じがしてます。

そういう同じこと、つまり安心を作ることを目的としながら、環境汚染のことと、人体への影響のこと、相関してるとも言えるけど、別の話とも言える。単一の問題がある、のではなくて、派生した様々な問題がそれぞれの知見で解決に向けて施策として進められている、ということでしかない。それぞれの問題に色々なプレイヤーがコミットしていて、その総体として放射能のことがある。その上で、それを論理だって整然とバランス感覚を持って俯瞰しながら経験則を話せる人、というのはやはり科学の人、だと僕は思っています。特に現場にコミットしている科学の人。それが昨年のインタビューの印象なんだろうと思います。

「インタビュー:放射能は取り除ける」 – 児玉 龍彦 / 東京大学アイソトープ総合センターセンター長 / 東京大学先端科学技術研究センター教授 – ユレッジ : 日本の「揺れやすさ」と地震防災を考えるサイト

どういうアクティビティが、どういう目的を持って、どういう段階を踏んで進められているか、その経緯でどういう注意が払われ、どういう障害があり、中長期的に実効力をなし得ることなのか、ということが本当は重要で、情報のひと粒ひと粒を白黒つけてくような批評には全く意味がない。そんなこと誰も彼もがやってても何も進まなくて、自らのアクティビティベースの議論ができる人の話だけが本当に有用なことだと思う。だからアクティビティのプロセスをなぞれる本が、読む価値があると思うのです。

多分、この話って一般の個人として結論出せるの、10年とか20年とか先の話な気がしています。多分、単一のリテラシーじゃなくて、スキルセットのような、リテラシーセットみたいなことになる。少しそういうものが揃って来ている一方で、まだまだ揃い切ってない、それはこれまでに行われて来て現在も行われていることの結果や成果がまだ未知だから。

だからこの記事に何が是で何が否か、何も個人の見解がないじゃないかと言えば、それはそうで、現場にコミットしてない人間が、個人の意見など捻り出したところで意味がない、というのが僕の了見です。ただそれは無関心ということとは違うということ。

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加藤 康祐 / 企画・設計

1980年1月12日生まれ。フリーランス歴15年。プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。学生時代にデザイン会社でWebデザインを経験。2005年よりフリーランスとしてキャリアスタート。これまでに個人から上場企業まで、100以上のクライアントとのプロジェクトを経験。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの編集・運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート等。趣味はラグビーと料理。Keep the head up, Bind tight & Stay low.

加藤康祐企画設計

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