2014/8/8

『山に生きる人びと』 宮本常一 – これからの日本と民俗学ということについて少し

なぜ俺は若い時に民俗学というものが面白いということに気づかなかったか、と最近思うわけです。これすごい本だった。最近、山伏の本とか狩猟の本とか読みましたが、そういうプレイヤーの自筆という本ではなく、フィールドワークをベースにした、山で暮らす人々についての学術的な文書です。

山に生きる人びと (河出文庫)
宮本 常一
河出書房新社
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これすごい面白くてですね。狩猟の話、職人の話、落人の話、信仰の話、炭焼きの話、本書にも書いてあるけど、あたかもそこに違う世界があったかのようなパラレルな非「常民」の話。里や町、都市から見て、山の暮らしがいかなものであったか、民俗学のアプローチで紐解いています。子供の頃から、歴史は好きで、しばしば歴史小説の暮らしのディテールにも読み惚れた覚えがあるけど、ちょっとこういう暮らしのディテールをメインに、サポーティングパラグラフとして歴史や文献を参照する、という視座のものは、あんまりこれまで読んでなかったかなと。

そもそも僕が民俗学の本を読んでみようと思ったのは、遠野で改めて柳田国男の話とか聞いたからでした。ただ、遠野物語読んでも、それそのものだと、あんまりこう世界に没入していく感じって得られなくてですね。そういう意味で、この本は大変読みやすいし、少なからず情景を思い描いたり、イメージをふくらませたりできるエッセイになってると思いました。つまり読み物としてエンターテインメントになっている。

遠野物語・山の人生 (岩波文庫)
柳田 国男
岩波書店
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もう少し話を引っ張りたいんですが、親しい飲み仲間で(最近ちょっとご無沙汰だけど)、磯貝日月君という清水弘文堂書房を経営している友人がいます。彼の出版社は環境学や民俗学を中心とした学術書などを扱う出版社で、ETが運営しているwakkaにもいくつかの本を出品してもらっているのですが、彼はもともと北極圏のイヌイットを研究していた文化人類学者でもあります。インタビューでも子供の頃にC.W.ニコルさんとカナダの極北の無人島でキャンプ、なんてエピソードがあるので、強烈な動機付けがあったのだろうけど、彼がもし、今、民俗学のフィールドを日本で、となったら、何を研究するだろうか、とか少し考えました。

礒貝 日月 – 「出版ボン・ボヤージュ」 – ET Luv.Lab.

もう一人、瞳硝子さんというアーティストのお知り合いがいます。彼女とは石巻でヘンプのワークショップをやる時に初めてご一緒したのですが、この人本当に面白くて。実は妖怪をモチーフにした作品を数多く手がけておられて、旅先で聞いたのが、いわゆる今あるイメージで妖怪モチーフのアクセサリーを制作するのではなく、日本の各地の語り部さんにヒアリングをして、その見聞をもとに作品を作られていると。元々、妖怪は日本の民俗学者として名高い柳田国男さんのフィールドなわけですが、瞳さんのされていることはアウトプットが作品なだけで、多分に民俗学的なアプローチ、とも言えるのかも知れません。

そこで思うのは日月君のところに少し書いた、「今、民俗学のフィールドを日本で、となったら、何を研究するだろうか」みたいなことだったんですよね。僕、案外、民俗学的アプローチの対象というのは身の回りにいる気がしていて、例えば、先述の畠山千春さんの狩猟に関する情報発信や、糸島シェアハウスでの暮らし。或いは、オフグリッドな暮らしを模索している人や、自然農に取り組む人、そういう今、若い人達を中心に「暮らしかた」という言葉を軸に語られている文脈って、結構、現在進行形の民俗学的なフィールドなんじゃないかなあと思ったんです。

そう考えると、僕が旅に出て目にしたりするもの、というのも民俗学的解釈になり得て、だからもっとちゃんと民俗学の本も読みたいなとか思ったんですけど、この本を読んで、割と自分の周囲にあるものが地続きな感じがして、とても面白いと思いました。

というわけで、もうちょっと関連著作も読んでみたいと思っています。

忘れられた日本人 (岩波文庫)
宮本 常一
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生きていく民俗 ---生業の推移 (河出文庫)
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ひとり仕事: フリーランスという働き方
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