2014/5/4

『バーナード・リーチ日本絵日記』 – Bernard Leach – 民藝運動の時代と非個人的藝術を巡る旅

バーナード・リーチって、名前は聞いたことある人も多いんじゃないでしょうか。僕も名前は聞いたことはあるくらいだったのですが、初めて登場人物としてではなく、彼の著作を読みました。本の原題は『Potter in Japan』。

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バーナード・リーチ – Wikipedia

彼は生涯の友となる柳宗悦をはじめ白樺派の青年達と知り合いになり、1917年には彼らの本拠であった我孫子にて版画指導を行った他、イギリスで起こったウィリアム・モリスらのアーツ・アンド・クラフツ運動など西洋芸術についての議論を通して手仕事の復権や日用品と美の問題などを語り合った。またバーナードは富本憲吉と知り合い、彼とともに訪れた上野の博覧会会場で楽焼の絵付けを始めたことをきっかけに茶道や茶道具に惹かれた。1912年に6代尾形乾山に陶芸を学び、中国から戻った1917年、我孫子の柳の家に窯を開いて陶芸家としての一歩を踏み出した。後に7代乾山の名を免許された。

だから言わば「アーツ・アンド・クラフツ運動」と「民藝運動」の蝶番みたいな人ですね。1953年のおよそ1年、再来日を果たしたバーナード・リーチが、柳宗悦や濱田庄司らと行動を共にした期間の日記が出版されたもの。原著の日本語訳は柳宗悦だそうです。

『Potter in Japan』ということなので、陶芸の窯に訪問するような話はとても多いですが、どちらかというと、日本への造詣が大変深い外国人が、日本を旅して回った話として門戸が開かれていて、丁寧な日本人論として、古い日本の紀行文として、民藝運動の記録として、読めます。日本人の書いた日本人論より、例えば岡倉天心の『茶の本』が平易で読みやすい、というような話で、わからない人に伝えようとしているから、今の僕らが読んでもとっつきやすい視座で書かれていると思います。

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例えば、益子だったり、多治見だったり(虎渓山とか出て来てちょっとテンション上がった)、平泉だったり、十和田だったり、自分が出かけた土地をリーチが訪れているのは面白いし、その描写が自分の記憶とどういう風にかぶるのかみたいなこと、また日本を賞賛する一方で、リーチは同時に当時の日本が西欧化して伝統や古き良き慣習から離れていくことを憂いていて、結構、それは今の時代の憂き目になってしまっていると痛感する部分もありました。

あとはやはりこの本を読む意味は「非個人的藝術」ということですね。

バーナードは実用より美学的関心を優先させた純粋芸術としての陶芸に対し、実用的な日用陶器を作ることを擁護した。彼は陶磁器に重要なのは絵画的な絵柄でも彫刻的な装飾でもなく、日用品としての用を満たす器の形状や触覚だと考えた。

これ実は僕らの仕事にも少しかかるところがある気がしていて、よく「アートは問題提起で、デザインは問題解決である」という言葉を耳にして、それは正しいと思っているんだけど、ただ、今、デザインについて色々言われている中で、改めて取り組まないといけないことは、過剰な自己表現でも、無機質な製造生産でもなく、改めて言語化すると「非個人的藝術」ってことじゃないかと思うんですよね。だって、アプリとかWebサービスって、つまるところ日常の道具じゃないですか。「非個人的藝術」って言葉をここに置いたのは柳宗悦だろうと思ってて、原著でなんと英語で表記されているのかそのうち調べたいなと思ってるんだけど、当時、工業デザインとの対比の中で民藝運動が再確認しようとしていた美しさの価値は、まあ割と、今デザインの世界で目指すべきとされる落とし所に近しいんじゃないかなと個人的に思います。

だから、例えば『陰影礼讃』は読んだ方が良いです、みたいなレベルで、この『バーナード・リーチ日本絵日記』は読んだ方が良いだろうなと思いました。古いものにアレルギーなければ。

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割と学びがあると思います。他にも意外と記者会見の後に料亭で芸妓呼ぶようなバブリーな空気だったんだな民藝運動、とか、絵日記の名の通り、リーチのスケッチも結構入っていて、講談社学術文庫なので、ちょっと高いけど、なんか気になる人は冒頭だけでも読んでみると「へー」ってなるポイントはあるんじゃないかなあ。なかなか今日日の本にこういうことわかりやすく書いてないです、逆に。

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加藤 康祐 / 企画・設計

1980年1月12日生まれ。フリーランス歴15年。プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。学生時代にデザイン会社でWebデザインを経験。2005年よりフリーランスとしてキャリアスタート。これまでに個人から上場企業まで、100以上のクライアントとのプロジェクトを経験。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの編集・運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート等。趣味はラグビーと料理。Keep the head up, Bind tight & Stay low.

加藤康祐企画設計

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