2014/4/19

UIデザインとUXデザインの違いについて

そう言えば、こないだ @sprmario 君がUIとUXの違いについてすごい熱く語ってて、「なんかそれ違うんじゃねーの」みたいな話をかなり雑に押し付けて来てしまったので、ちょっと丁寧にさらっておこうかと思います。とは言え、そんな難しい話ではないと思っていて、基本的にはユーザを起点したデザインのアプローチか、サービスを起点としたデザインのアプローチかということだと思います。だからこれが明示的になっている時点で @sprmario が指摘していた「UI / UX デザイン」を併記するというのはおかしい、というのは多分正しい。

なんだけれど、ユーザからサービスへアプローチするという山の登り方と、サービスからユーザへアプローチする山の下り方で、上の図でデザインされるべきポイントになっている「コンタクト・ポイント」って何か別のものですか?って言うと「全く同じもの」で、ただ、アプローチの仕方で、そこに付随してくる方法論というのも違ってくるということだろうと思います。ボタンとかメニューとか作るのがUIデザインじゃない、なんて話は10年前からあった(こういう時には僕、無駄に年取ってるのでずるいけど)。UXデザインが上陸する前から、エクスペリエンス・デザインという考え方は業界にあった(マーケティング用語に近かったですけど、うちがETの前身のExperience Transportersという屋号を名乗る時に参考にした考え方でもあります)。

だからこれ区別した上で、どっちのアプローチがどうだ、ってことをきちんと俯瞰した方が良いと思うんですよね。

例えば。僕の仕事の場合。受託のWeb制作をする場合、ほぼUIデザインのアプローチで物事を考えていると言って良いです。まずクライアントの事業を正確に理解し、その上でどのような施策を行ったら、クライアントにどういう便益があるのか、どういう機能を持たせるべきなのか。まずサービスありきで、モノを考えている。これが基本。UXデザイン的なアプローチをするのは、その検証でです。ただ、これはいわゆるUsabiltity Testであるとか、そういうニュアンスに近い。

あと、ユレッジみたいなサイト。あれとかもUIデザインの視点で設計されたサイトです。防災に感心のある人が何を欲するか、という視点ではなく、地震防災に関して必要なことを啓蒙して理解して行動に繋げてもらうためにどういう情報発信が必要かという視点でスタートしている。あれはUXデザイン的な企画ではないです。むしろアカデミズム、ないし、プロフェッショナリズムの、UIデザインと言ってしまったほうが大変しっくり来る。

で、このUIとUXの話って、別にデザインの畑の話だけじゃないんだと思うんですよね。

マネージメントとチーム・ビルディングとか。
マーケティングとブランディングとか。
研修とコーチングとか。

構造的に川上から川下か、川下から川上か、みたいな話はどの分野にもあって、本質的にやらなきゃいけないことは「変わらない」んだけど、アプローチが違うとそこに付随する方法論が違って来て、結果、精度とか成果物とか、もっと言うと楽しさとか豊かさとかも変わってくるわけですよね。おそらく、Customer Journey Mapみたいなものだって、マーケティングの本ひっくり返せばどっかに載ってるし、糸井重里さんの企画のラフスケッチとか前に見かけたけど、見事にCustomer Journey Mapでしたよ。

だから概念だけをいじってると、概念の焼き直しにしかならなくて、本質的にはそこに実践がないと、スキルセットの伸長とかないんだと思うんですよね。老婆心的には。だからPhotoshopとかIllustrator使え、みたいな話じゃなくて、概念をアクションプランに落としこむ時に、初めてプランニングという作業は発生して、概念論は概念論だけしかないということです。ここに作らないことの弱さがある。それは作ったり作らなかったりするからわかる。

前にもFacebookに書いたけど、「UIデザインとUXデザインは違う」みたいなのは「Webサイトとホームページは違う」みたいな話だと思っていて、ほら、Web屋さんがいくらWebサイトだって言ったって、お客さんにとってホームページだったらホームページなんですよw。ただ、UI / UXに関しては、そこに紐づいてくるフレームワークがそれぞれ違って来て、それらはようは道具だから、道具の使い方の議論に終始せずに、道具使って何したの?ってところが大事だと思うんですよね。

だから僕は、ETをUXデザインします、みたいに言うつもりは全然なくて、そもそもうちにとって問題解決の方法論はデザインだけじゃないですし、勿論、ITだけでもないし、客商売をやっている以上、専門性はどこまで言っても問題解決の「道具」でしかないので、それそのものを売り物にするつもりはないし、もう少しUXデザインの話って、ビジネス論として包括的に論じることができるともっと良くなると思います。

まあ、「UI / UX デザイン」って書くなら、デザイン、とかWebデザインとか、エディトリアル・デザインとか書いてある方が親切だと思いますけどね。

そんな感じ。

加藤 康祐 / 企画・設計

プランナー、デザイナー。加藤康祐企画設計代表。Webデザインを入り口に、2005年よりフリーランスとしてのキャリアスタート。主な仕事としてベンチャー企業でのサービスのUXデザイン、独法との防災メディアの運営、社会的養護の子どもたちの自立を支援するNPOのサポート。ラグビーと料理、最近イラスト。

加藤康祐企画設計

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