2014/4/4

『天災と国防』 寺田寅彦 – 防災、大和魂、レジリエンス

今日、ちょうど、ユレッジの2013年度実施レポートを公開したばかりですが。この本読まないで「ユレッジ」って言ってたんですか、って言われそうなくらい、これは大事な本でした。寺田寅彦の『天災と国防』。

天災と国防 (講談社学術文庫)
寺田 寅彦
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実はユレッジは昨年4月からのPhase 1は「幅広い専門的な知見から広い防災への理解を作る」、10月からのPhase 2は「防災の現場での、よりアクティビティにひもづいた知見を探る」ということを大きなアプローチの方針として考えてやってきたのですが、これからのPhase 3はアプローチではなく「レジリエンス」というキーワードを軸に考えていこうと思っています。

レジリエンス とは – コトバンク

「レジリエンス」(resilience)は、一般的に「復元力、回復力、弾力」などと訳される言葉で、近年は特に「困難な状況にもかかわらず、しなやかに適応して生き延びる力」という心理学的な意味で使われるケースが増えています。さらにレジリエンスの概念は、個人から企業や行政などの組織・システムにいたるまで、社会のあらゆるレベルにおいて備えておくべきリスク対応能力・危機管理能力としても注目を集めています。

取材に入ったRace for Resilience然り、今、研究されてる上でも言及されてるSystems Resilience然り、Resilienceってこれからのバズ・ワードになる可能性はあって、これからは「サステイナブルからレジリエンス」みたいな話もあるみたい。ただこの話、基本的な考え方は、寺田寅彦が数十年前に書いている。

人間の団体、なかんずくいわゆる国家あるいは国民と称するものの有機的結合が進化し、その内部機構の文化が著しく進展して来たために、その有機系のある一部の損害が系全体に対してははなはだしく有害な影響を及ぼす可能性が多くなり、時には一小部分の傷害が前系統に致命的となりうる恐れがあるようになったということである。

次の例えがとてもわかりやすいです。

単細胞動物のようなものでは個体を切断しても、各片が平気で生命を持続することができるし、もう少し高等なものでも、肢節を切断すれば、そういう融通が効かなくなって、針一本でも打ち所次第では生命を失うようになる。

あとこれはかなり耳が痛い話。

天災の起こった時に始めて大急ぎでそうした愛国心を発揮するのも結構であるが、昆虫や鳥獣でない二十世紀の科学的文明国民の愛国心の発露にはもう少しちがった、もう少し合理的な様式があってしかるべきではないかと思う次第である。

二十一世紀の科学的文明国民の愛国心の発露ってどうだったのだろうか。それからこれも。

もしもこのように災難の普遍性恒久性が事実であり天然の法則であるとすると、われわれは「災難の進化論的意義」といったような問題に行き当たらないわけには行かなくなる。平たく言えば、我々人間はこうした災難に養い育まれて育って来たものであって、ちょうど野菜や鳥獣魚肉を食って育って来たと同じように災難を食って生き残ってきた種族であって、野菜や肉類が無くなれば死滅しなければならないように、災難がなくなったらたちまち「災難飢餓」のために死滅すべき運命に置かれているのではないかという変わった心配も起こし得れるのではないか。

これを読んで、児玉龍彦さんとお話した中で出て来た、「イノベーションはクライシス・レスポンス」ということを反芻しました。

こないだ仲間と話していたのだけど、防災って、大災害が起こると注目が集まるのですが、有事以外は基本「凪」なんです。だからどうしても有事対応になる。だけれども、本来的には中長期的にそのことがシステム、寺田寅彦いうところの「人間の団体、なかんずくいわゆる国家あるいは国民と称するものの有機的結合とその文化の有機系」にレジリエンスの視点が組み込まれていかなければならないのだろうと思います。逆に言うと、そういう視点でこれから行われていくことを整理していくこともできる。それをユレッジでできないかなあと考えています。

しかし、僕がここ1年くらいでもやもや考えていた防災のそもそも論は、そもそも数十年前に物理学者がほぼほぼ言及していたことで、彼が書き綴った文脈に、今、防災の世界で行われているもろもろのことは、その延長線上に位置づけることができる、という意味ですごい本でした。あと、当たり前のことだけれど、津波の被害が石碑として記録に残っている、に留まらず、震災があって起こった様々な副次的な要素や、社会活動、その後の風化や流言蜚語、だから2011年を境にこの国で生まれたことと、似たようなことというのは数十年前にもあった、ということにイマジネーションを働かせるに十分な内容でした。

その上で、今は具体的な処方箋がかなり増えている。ハザード系の情報も充実してるし、IT技術や機械技術、通信、交通、ロジスティックス、医療、だから当然具体的な処方箋は変わってくる。ただその上で、色々な分野のプロフェッショナルが、この寺田寅彦の視点に触れて、その延長線上に、自分の持つ知見や技術を乗せることができれば、もっと有効な手立てが、これからの世のために生まれてくるのではないか、そんな示唆がありました。

是非、読んで欲しいなと思う本です。特に僕の周りの色々な人達が、この本読んだら何を思うか、というのも興味があるところ。正解は与えられないが、起点は提示される、そんな本です。これからユレッジやってる限り、何度も参照しそうですが、このタイミングで読めて本当によかった。

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下記の本、これから読むつもりです。

レジリエンス 復活力--あらゆるシステムの破綻と回復を分けるものは何か
アンドリュー・ゾッリ アン・マリー・ヒーリー
ダイヤモンド社
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Building Resilience: Social Capital in Post-Disaster Recovery
Daniel P. Aldrich
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ひとり仕事: フリーランスという働き方
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